JR九州長崎線 特急あわや正面衝突 安全破壊する株上場許すな

週刊『前進』06頁(2683号02面02)(2015/06/01)


JR九州長崎線
 特急あわや正面衝突
 安全破壊する株上場許すな



(写真 かもめ19号【下】はかもめ20号【上】が停車している線路に入り正面衝突する寸前で止まった)


 JR九州の長崎線で特急列車同士があわや正面衝突という大事故が起きた。JR九州は来年度中に株を上場するとして、全面的な合理化・外注化を強行している。それが事故の根本にあるものだ。全国に動労総連合を建設し、職場から反合・運転保安闘争に立つことが今こそ真に必要だ。国鉄闘争全国運動6・7集会に大結集し、JR体制打倒の火の手を上げよう。

93㍍手前でかろうじて停止

 5月22日午後0時20分ころ、佐賀県白石町のJR長崎線・肥前竜王駅で、博多発長崎行きの下り特急「かもめ19号」が長崎発博多行きの上り特急「かもめ20号」の停車している線路に進入し、正面衝突となる寸前に運転士が非常ブレーキをかけて緊急停止した。二つの列車の距離は93㍍しか離れていなかった。特急には計230人の乗客が乗っており、まかり間違えば大惨事になるところだった。
 この事故で列車の乗客は5時間近くも車内に閉じ込められた。長崎線の肥前山口―肥前鹿島間は6時間以上、運行を停止し、ダイヤは大幅に乱れて約6千人に影響した。
 現場は単線区間で、上り列車と下り列車のすれ違いは駅か信号所でなければできない。上りの「かもめ20号」は肥前竜王駅の待避線に停車しており、後から来た下りの「かもめ19号」も同じ待避線に進行して、「かもめ20号」の93㍍手前でかろうじて止まる事態になったのだ。
 その直前の0時11分ころ、「19号」の運転士は肥前竜王駅の手前で異音を感じ、同駅の下り場内信号機付近で列車を非常停止させた。本来のダイヤでは、「19号」と「20号」は肥前竜王駅より一つ長崎方向の肥前鹿島駅ですれ違うことになっていた。だが「19号」の異音トラブルによる車両点検で遅れが生じ、JR九州は「20号」を肥前竜王駅まで進行させて同駅の待避線に入れた後に、「19号」を同駅の本線に進行させて、すれ違わせることにした。「20号」を待避線に入れる時点で、「19号」に対する信号は赤になっていた。しかし、異音トラブルで停止した「19号」の運転席部分は信号を少し過ぎており、運転士には信号は見えない状態だった。
 博多総合指令の指示で運転を再開した「19号」は、赤信号を無視する形で待避線に進入した。異音トラブルで停止した「19号」の停止位置は、ATS(列車自動停止装置)が作動する位置を過ぎていたため、ATSも動かなかった。運転を再開する際、運転士はポイントがすでに本線側に切り替わっていると思っていた。他方、運転再開を指示した指令は、「19号」は信号の手前に停車していると誤認しており、赤信号で列車はいったん停止するはずだから、その後にポイントを切り替えて本線を走らせようとした。(図参照) 
 運転士はトラブルの時、指令に停止位置を伝えることになっていて、「19号」の運転士は運転席に表示された起点駅からの距離を報告した。だが、車輪の回転数から距離を計算するため厳密ではなく、報告された数字は実際の停止位置より約160㍍手前だった。また、列車が信号を超えているかどうかを検知する装置に車輪が到達していなかったため、指令のモニターにも「19号」は信号手前で停車していると表示されていた。
 JR九州は「指令も運転士も社内の規定には従っていた」と言う。しかし、起きたことは正面衝突寸前という、絶対にあってはならない事故だ。
 通常なら上りと下りの双方の列車が同じ線路に進入可能となるようなポイント操作は、物理的にできない仕組みになっている。だが、肥前竜王駅はそうした構造にはなっていなかった。異音トラブルで「19号」が遅れていても、「20号」を肥前鹿島駅で待たせ、本来のダイヤどおり同駅ですれ違っていれば、事故は起きなかったはずだ。
 また、本線側にポイントを切り替えないうちに指令が「19号」に進行を指示したことも大問題だ。「信号手前ですぐに列車は止まるはず」という予測をあてにした進行の指示など、本来ありえない。これは、遅れを取り戻すため、少しでも列車を前に進めておきたいという意識によるものとしか考えられない。

事故続発させる駅の無人化

 JR九州は2016年度株上場に向けて躍起になっている。JR九州の14年度の鉄道事業は140億円もの赤字だ。そのJR九州が株を上場しようとすれば、全面外注化を軸とした大合理化と、ローカル線の徹底した切り捨てを強行する以外にない。他方で、特急列車などについては「定時運行」を最優先し、収入の確保に走らざるを得ない。今回の事故は、株上場に突っ走るJR九州の無謀な経営方針が引き起こしたのだ。超豪華列車「ななつ星」の運行や大規模不動産開発に熱中するJR九州の安全は、根本から崩壊している。
 3月ダイヤ改定でJR九州は在来線32駅の無人化を強行した。いずれは全566駅のうち381駅を無人化する方針だ。駅は安全の要をなす。その無人化は安全を徹底的に破壊する。事故の起きた肥前竜王駅も無人駅だ。当然、駅での信号操作はできず、それは遠く離れた福岡市の博多総合指令で行われていた。現場の状況がつぶさに分からない中で、モニターなどの機器に依存して運行を管理することの危険性を今回の事故は突き出したのだ。
 安倍政権は2月、JR九州の株上場に向けたJR会社法改定案を閣議決定し、同法案は衆院を通過し参院での審議に入っている。安保関連法案ともども同法案を粉砕し、安全破壊のJR九州の株上場を阻止しよう。
 他方、JR東日本は5月26日、山手線支柱倒壊事故に関し12人の処分を発表した。現場の社員5人を減給・戒告とする一方、冨田哲郎社長、柳下尚道副社長ら役員6人は報酬の10~30%を1〜3カ月間返上、嘱託社員だった東京電気システム開発工事事務所長は解雇するという内容だ。
 膨大な報酬を手にする経営陣には、報酬カットなど痛くもかゆくもない。誰が見ても危険な支柱を放置した前代未聞の事故の責任を現場労働者に押し付け、経営陣は居直りを決め込んだのだ。
 こんな無責任なJR体制のもとで、犠牲にされるのは労働者と乗客の命だ。東京を始め全国に動労総連合を建設することは待ったなしだ。国鉄闘争全国運動の6・7集会に総結集し、ゼネストに向かう韓国・民主労総、とりわけ鉄道労組との民営化粉砕の国際連帯を打ち固めよう。日本のゼネストを実現し、JR体制を打倒しよう。

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