「戦争教科書」採択阻止を 育鵬社版「公民」は政府広報

週刊『前進』06頁(2687号03面02)(2015/06/29)


「戦争教科書」採択阻止を
 育鵬社版「公民」は政府広報


 歴史の大転換点が到来している。安倍政権は激しい危機を深めながら、戦争法案の強行成立に向けてかじを切った。しかしそれは安倍政権の終わりの始まりだ。「戦争法案絶対反対!」はすべての教育労働者の声だ。今こそ階級的労働運動の拠点を建設し、韓国・民主労総をはじめ全世界の労働者と連帯したゼネストで安倍政権を打倒し、戦争を止めよう。
 2016年度から使用される中学校教科書採択の攻防は、この7〜8月が最大の山場となる。それは完全に安保法制をめぐる決戦と一体だ。教育労働者としての矜持(きょうじ)をかけて、戦争翼賛教科書の採択を阻止し、戦争法案もろとも安倍政権を葬り去ろう。

安保法制への怒りで粉砕を

 4年ごとに行われる中学教科書採択で、安倍政権は、改憲・戦争翼賛の育鵬社版教科書の採択に全力を挙げている。だがそれは、安保法制同様、まったくデタラメで危機的なものだ。
 安倍が推進する育鵬社版公民教科書は、「これまで政府は、集団的自衛権の行使はできないと解釈していました。しかし......日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合に、日本が必要最小限の範囲で実力を行使することは、憲法上許されるのではないかという指摘があります」とまで記述している。
 しかし、そんな指摘をしているのは極右学者3人に過ぎないことが、この間の菅官房長官の国会答弁で明らかになっている。言うに事欠き、自民党副総裁・高村は「自衛の措置を考えるのは、憲法学者ではなく政治家だ」と開き直った。集団的自衛権の行使を扇動する育鵬社版教科書とは教科書でも何でもなく、昨年の7・1閣議決定―安保法制と一体となった安倍らの政治宣伝文書であるということだ。こんなものは、国会を取り巻く労働者階級の怒りと結び粉砕し尽くさなければならない。
 さらに、育鵬社版の公民教科書では「領土を取り戻す」と記述し排外主義をあおり、歴史教科書でも歴史的事実をゆがめ、改竄(かいざん)し、侵略戦争と植民地支配を賛美・正当化している。「従軍慰安婦」の記述も削除し、沖縄戦についても日本軍による住民虐殺の記述はなく、ヒロシマ・ナガサキもたった1行の記述である。労働者人民の戦争への抵抗などは完全に抹殺だ。

教科書制度に国家全面介入

 安倍の「戦後70年談話」攻撃そのものであり、それを教科書で貫徹しようというのだ。だがそれは、安保法制への地からわき出るような怒りと一つになりながら、安倍の破綻をさらに爆発させていくのだ。
 安保法制と一体で、戦後教科書制度も根本的に改悪され、政府・国家権力による介入が飛躍的に強化されている。
 一つに、教科書の編集段階から出版社に「愛国心」などの記述を強制する制度に改悪したことだ。教科書出版社が申請する教科書とセットで提出する「編集趣意書」に、「道徳心」「愛国心」を定めた改悪教育基本法の「教育の目標」をいかに教科書に反映させたか、「検定不合格」の規定の恫喝のもとで、全教科にわたり明記させることにした。
 二つに、検定基準を抜本的に改悪したことだ。政府見解や閣議決定の記述を強制する。
 三つに、「教科書採択の改善」と称した育鵬社版などの採択推進だ。安倍ら極右勢力は「教育再生首長会議」を発足(14年6月)させ、改悪教育委員会制度で新設された総合教育会議で「教科書採択方針」を決定し、採択拡大を狙っている。特に政令指定都市は採択区を一区に統合した。前回、全国での採択率が4%だった育鵬社版は、横浜市や藤沢市の採択で神奈川県全体では約43%。育鵬社版は採択審議委員会で最低評価であったにもかかわらず、政治介入によって採択が強行されたのだ。
 安倍の教科書攻撃との闘いは、日教組解体・連合再編=産業報国会化との対決だ。
 教育労働者は朝鮮戦争(50〜53年)のさなか、「教え子を再び戦場に送らない」と誓い、戦争絶対反対で教科書攻撃などを現場の団結と闘いで打ち破ってきた。国鉄分割・民営化絶対反対で動労千葉がストライキに立ち、連合の完成を阻んできたことにより、どんなに体制内指導部が屈服を重ねようが、現場の教育労働者の闘いの魂は脈々と受け継がれてきた。

産業報国会化狙う安倍倒せ

 労働組合を根絶できず新自由主義攻撃の大破綻に追い詰められた安倍は、中央教育審議会(文部科学大臣の諮問機関)のメンバーでもある桜井よしこを使い、日教組に憎悪を募らせ「連合を解体せよ」と連合再編・産業報国会化を叫んでいる。教育労働者の現場の団結を解体して戦争教育の担い手として戦争動員していくこと以外に戦争は成り立たないのだ。一切が労働組合をめぐる攻防だ。
 体制内指導部は、安倍の教科書攻撃に「透明・公正な教科書制度の確立を」と要求するのみで、労働組合として戦争絶対反対の立場で教科書攻撃と対決することから完全に逃亡している。「透明・公正」な制度なら集団的自衛権行使を教科書で扇動してもいいのか!
 さらに、全政党が18歳選挙権導入に賛成し、6月17日国会成立した。これは昨年成立した国民投票法改定と一体で憲法改悪のプロセスに踏み出す攻撃であり、徴兵制への道を開くものだ。国会は総翼賛だ。最大の狙いは日教組破壊である。安倍政権は育鵬社版教科書採択を推進する一方で、「主権者教育の充実」を掲げ、「『教室の中に政治活動を持ち込んではいけない』と明確にうたい、違反者に罰則を科せられるように教育公務員特例法を改正すべき」(産経新聞3・2付)などと検討しているのだ。
 安倍の産業報国会化攻撃を粉砕しよう。動労総連合建設と一体でストライキで闘う教組拠点をつくり、戦争に突き進む安倍をゼネストで倒そう。大阪の自治体労働者と教育労働者は、戦争と民営化・非正規職化に絶対反対で闘う労働組合の力で、橋下を打倒した。戦争と民営化に絶対反対で闘うことこそ職場に団結をつくり階級的労組をつくり出す。
 戦争教科書採択阻止を、安保国会粉砕・安倍打倒の戦後史に決着をつける闘いとして、教育労働者は闘い抜こう!
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戦争・改憲あおる育鵬社教科書




 育鵬社「公民」教科書は「領土を取り戻す、守る」「憲法改正のしくみ」などの項目を設けて戦争・改憲を扇動している。安倍と下村博文文科相の意向に沿ったものだ。安倍・下村はまた教科書に政府見解に基づく記述を強制するなど国定教科書化、戦争教育、労組破壊攻撃を強めている。戦争・改憲に突き進む安倍を労働者人民の怒り、労組のゼネストで打倒しよう。

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