楢葉町への帰還許すな 「避難指示」9月解除狙う 動労水戸と結んで打ち破れ

週刊『前進』06頁(2690号04面01)(2015/07/20)


楢葉町への帰還許すな
 「避難指示」9月解除狙う
 動労水戸と結んで打ち破れ


 安保関連法強行と川内原発再稼働に突き進む安倍政権は、同時に福島原発事故の被害すべてを消し去ろうとする大攻撃を推し進めている。その一つが住民の思いを真っ向から踏みにじる帰還強制だ。政府は楢葉町の避難指示を9月に解除する方針を決め、町民から大反発を買っている。福島の労働者人民の怒りと結びつき、避難指示解除・帰還強制を打ち砕こう。

全域避難町村で初の解除

 安倍政権は7月6日、福島県楢葉町の避難指示を9月5日に解除することを決定し楢葉町に伝えた。楢葉町はほぼ全域が福島第一原発から20㌔圏内で、人口は約7400人。3・11福島第一原発事故により全域避難となった県内7町村で初めての避難指示解除である。
 楢葉町では動労水戸のJR常磐線広野駅〜竜田駅運行再開阻止闘争に激励されて、昨年来、避難者の怒りの闘いが巻き起こっている。
 今年4月から「準備宿泊」が実施されたが、店や病院は閉まったままという中で、ほとんどの住民が宿泊していない。
 6月17日の楢葉町議会では、出席した国の原子力災害対策本部・現地対策本部長の高木陽介(経済産業副大臣)が「今年8月のお盆前に避難指示解除の手続きを進めたい」と宣言したが、弾劾の声で議会が一時中断する事態となった。
 6月19日以降7回にわたって、避難指示解除方針を説明するための住民懇談会が開かれたが、住民からは政府の強硬な帰還強制に不安や反発の声が噴出した。「町内に病院がなく、車も運転できない。安心して帰れるまで、解除を待ってほしい」「原発で再び事故が起きた場合の住民の避難計画もない」「解除時期を示すのは唐突すぎる」「準備宿泊は(避難指示の)解除が前提ではなかったはず。約束違反だ。飲み水の汚染が心配で、買い物や通院にも困る。これでは誰も帰らない」
 こうした町民の大きな反発によって政府は8月の解除を断念したものの、7月6日に高木が再度楢葉町を訪問し、「解除日は9月5日とする」と町に通告したのだ。
 この日の記者会見で高木は、水道水源の放射能汚染に対する町民の不安に対して「放射線の考え方は人それぞれ異なる。安心は心の問題だと思う」との暴言を吐いた。この暴言に対しても「やっぱり政府は信用できない」「ふるさとに戻りたいという気持ちを理解できるのなら、あんな発言は出てこない」と、怒りの声が噴き出している。

JR東が帰還強制の先兵に

 JR東日本は、3・11で不通となったJR常磐線の運行を再開することで帰還強制の先兵になっている。これまでの久ノ浜駅〜広野駅の運行再開(11年10月)、広野駅〜竜田駅の運行再開(14年6月)もそうだ。竜田駅のある楢葉町の避難指示解除は、JRが運行を再開することで帰還運動を先取りし、避難指示を解除させて帰還を強制するという典型である。
 こうしたJRの帰還強制運動と真っ向から対決する動労水戸の被曝労働拒否・常磐線延伸反対の闘いは、帰還強制に怒る福島の労働者人民を激励し、声を上げ行動する大きな援助となっている。

17年3月で一斉に帰還へ

 安倍内閣は6月12日、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(「指針」)の改訂を閣議決定した。
 何よりも許せないのは、「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の避難指示を17年3月に解除すると定めたことである。両区域からの避難者は、今年2月時点で計5万4800人。これまで建前としてであっても避難指示解除の前提としていた「年間20㍉シーベルト基準」すら投げ捨て、〝年間20㍉シーベルト以下でなくても避難指示は解除する〟と宣言したのだ。
 しかも一人あたり月10万円の「精神的損害賠償」も1年後の18年3月に打ち切る。賠償打ち切りで避難生活を続けられなくさせ、無理やり帰還させようというのだ。
 強制避難させられた人びとは、原発事故により家と土地、仕事を奪われ、生活基盤を破壊されて、家族もばらばらに分断され、4年以上も避難生活を強いられてきた。商業施設も医療施設も破壊されたまま、高い放射能に汚染された土地に帰還することなどできるわけがない。「被災者は死ね」という暴挙だ。

自主避難者の住宅も終了

 福島県は自主避難者の「みなし仮設住宅」の無償提供も17年3月で打ち切ることを決めた。
 福島県の避難者は今年2月時点で約12万人に上る。そのうち推定約2万5千人が自主避難者だ。自主避難者は、強制避難者と違って精神的賠償の対象ともならない。母子避難も多く、二重生活ゆえの出費増も含め、財政的にも最も苦労しながら避難生活を続けてきた。
 その生活を支えた唯一の措置だった住宅の無償提供すら打ち切ろうというのだ。県幹部が「自主避難者は(自ら避難することによって福島は危ないとの)風評を広げている」と語るように、政府・県は自主避難者という存在を抹殺しようとしている。県内外に避難する自主避難者からは、怒りの声が続々と上がっている。
 政府がどれほど3・11福島原発事故の被害を消し去ろうとしようと、いまだに12万人に及ぶ避難者が存在し、県内の「震災関連死」は認定されただけでも1884人、また127人の子どもが甲状腺がんを発症するなど、その被害はますます深刻さを増している。この現実そのものが二度と原発事故を引き起こしてはならないこと、再稼働など絶対許してはならないことを示している。
 福島の労働者人民の怒りと結び、帰還強制を絶対許さず、川内原発を始めとする全原発の再稼働を阻もう。
(里中亜樹)
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