鬼怒川の決壊=大水害は新自由主義がもたらした 自治体労働者が先頭で闘おう

週刊『前進』06頁(2700号03面01)(2015/10/05)


鬼怒川の決壊=大水害は新自由主義がもたらした
 自治体労働者が先頭で闘おう


 9月9日から11日にかけて、関東・東北豪雨で茨城、栃木、宮城などの19河川の堤防が決壊、61河川があふれ、8人の死者と膨大な浸水被害を出した。茨城では国が管理する一級河川の鬼怒川が常総市で決壊した。市の東側全体、約40平方㌔メートルが水没した。被災者の生活の見通しはまったく立っていない。今回の水害を「自然の猛威」のせいにすることはできない。11年3・11東日本大震災・福島第一原発事故と同じく、新自由主義による巨大な人災である。

堤防を強化せずに30年間も放置し続けてきた

 「命よりカネ」の新自由主義が地方を切り捨て、安全を崩壊させている。「災害」が襲いかかって、人びとの命と生活を奪っていく。ただちに労働者階級が権力を握って社会全体を運営すること以外に、もはや生きる道はない。
 鬼怒川は名前のとおりの暴れ川だ。何度も洪水が起こっている。茨城県西部は86年、鬼怒川の東隣に位置する小貝川が決壊し、他の河川もあふれて大水害をもたらした。それに対し建設省(現国土交通省)は堤防強化などを打ち出した。30年も前のことだ。
 小貝川は99年、02年、04年にも洪水があった。鬼怒川について国交省は「堤防が弱いことは分かっていた」「これから整備する矢先だった」と釈明した。常総市が09年に公表した洪水ハザードマップでも、鬼怒川と小貝川の間はほぼ全域が浸水するとされていた。
 河川法に基づく「100年、200年に1度」の豪雨を想定した河川整備基本方針はあるが、具体的な計画は全国でもほとんど未完成のままだ。さらに政府は、「地方分権」と称して一級河川の管理を国から都道府県へ移し、経費削減と民間委託を全面化させようとしている。
 水源の森林管理も崩壊している。木材価格が80年を頂点に暴落して、8割もの森林が放置されるようになった。間伐されないために下草が生えず土壌がむき出しになって、保水力を低下させてしまった。土砂が流出し山そのものを崩壊させた。土石流が発生し、流木による被害と土砂災害が多発している。
 にもかかわらず林野庁は、森林管理を担う林業公社の廃止と民営化・切り捨てを進めている。職員の全員解雇と労組破壊をめぐる争議が各地で起こり、この攻撃と闘おうとしない自治労本部への怒りが8月金沢大会で噴出した。
 新自由主義が行き着いた大恐慌と「地方消滅」の危機のもとで安倍政権は「地方創生」と「国土強靭(きょうじん)化」を掲げた。しかしその内実は巨大資本をもうけさせ、危険箇所は放置して「金もうけ」にならない事業は切り捨てるということだ。今回の大水害は新自由主義がもたらしたものにほかならない。

常総市は人員削減と非正規化で対応不能に

 常総市は避難指示が遅れたことについて、「避難所の手配」や「限られた人数で土のうを積む手配などに追われ、手いっぱいだった」と話している。本来必要な人員が市にいなかったということだ。避難計画は災害前から破綻していた。
 国と自治体は経費削減のために市町村合併を進め、行財政改革でどんどん職員を減らしてきた。コストだけを基準に非正規職化と民間委託を推進してきた。現実には、少なすぎる職員に過重な労働を強いて通常業務すら困難な状況に陥らせてきたのだ。
 茨城県内44市町村は軒並み非正規職を増やし、その割合は52%の取手市を筆頭に21市町村が40%を超えている。今回のような事態になれば、どの自治体でも対応不能となったはずだ。住民の命を守ることができないことは百も承知で人員削減をしてきたのだ。

生きる糧奪った新自由主義を団結し打ち破れ

 常総市内に流れ込んだ濁流は、付近の住宅や車を押し流し、街や水田をのみ込み、さらに遠く離れた市庁舎を含む水海道(みつかいどう)の中心部まで浸水させた。9月25日現在、常総市では951人が避難所暮らしを続けている。
 住民は水没した家財道具、家の中に入りこんだ泥やごみを取り除く作業を始めている。流されたのは住宅だけではない。商店も浸水し、商品はすべて処分しなければならない。工場も同じだ。
 農家の被害がひどい。常総市付近では2千㌶もの農地が沈み、トラクターなどの農機具やカントリーエレベーター(穀物の共同貯蔵施設)も沈んだ。この地域は稲刈りが3割程度しか済んでいなかった。収穫を終えていない稲穂はなぎ倒されて水の中となった。
 水が引いた後で刈り取りをした農家もある。でも実りを迎えたこの時期の冠水はつらい。稲穂は水を吸って品質が落ちてしまう。濁水ならなおさらだ。収穫した米も小屋ごと沈み、食用として売れない。機械も使えるかわからない。ある地域では牛舎が水没し牛が100頭も死んでしまった。手元に残ったのは借金だけ。これを機に農業をやめる農民も出てくる。規模拡大を進めていた農家もすべてを失った。
 一度の災害で回復不能のダメージを負って生きることもできない。それが新自由主義だ。今回、被災地に飛んできた安倍首相。だが、原発を再稼働させ戦争に突き進むお前に、労働者・農民の苦しみはわかるまい。
 絶対反対の闘いと階級的団結の中にこそ希望はある。
 原発事故で生活を奪われ「健康被害はない」と言い続ける政府に対して子どもたちを被曝から守ろうと必死に闘う福島のお母さんたち。国鉄分割・民営化にストライキで立ち向かい、30年にわたる闘いで最高裁に不当労働行為を認めさせ、解雇撤回と外注化阻止・非正規職撤廃を闘いぬく動労千葉。JR資本が安倍の先兵となって労働者を被曝させ住民の帰還を強制することに対し、被曝労働拒否で闘う動労水戸など多くの仲間がいる。
 自治体労働者が先頭に立ち、丸ごと民営化・総非正規職化、地方切り捨てと安全崩壊を許さずストで闘う労組拠点をつくりだそう。国会闘争の歴史的高揚を引き継ぎ、戦争と民営化・総非正規職化の安倍打倒へ、各地区国鉄集会の成功から11・1集会1万人大結集をかちとろう。
(茨城県労組交流センター自治体労働者部会・川上慎吾)
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