11・6最高裁デモへ つぶせ!命脈尽きた裁判員制度 裁判員制度はいらない!大運動呼びかけ人 高山俊吉弁護士が語る

週刊『前進』08頁(2702号06面01)(2015/10/19)


11・6最高裁デモへ
 つぶせ!命脈尽きた裁判員制度
 裁判員制度はいらない!大運動呼びかけ人 高山俊吉弁護士が語る

(写真 高山俊吉弁護士)


 安倍政権が、戦争で決着をつけるしかないという方向性を決断した。その帰結が、戦争法案の9月国会通過だ。しかし、それは同時に、反撃をする労働者人民の側との文字通りしのぎを削る闘い、最前線の対決を現出させた。国内外の政治・経済情勢が戦争の危機をはらんで進んでいる。もっと具体的に言うと朝鮮半島における戦争の危機だ。
 安保法制時代、すなわち戦争法時代は、司法制度で言うと裁判員制度として、あるいは新捜査手法として現出する。実は裁判員制度という司法制度は、情勢が戦争に向かっていくだろうということを読んだ、先行的な戦争法制だった。
 裁判員裁判は治安を維持する責任を国民自身に負わせる。治安維持は私たちの責任だと国民自身が考える、そういう国にする。誰かが治安を守るとか誰かによって守られるんじゃなくて、自分自身がその先頭に立つんだと国民に自覚させる、そういう制度である。その危険性と時代性を、昨年来の情勢で多くの人たちが理解するようになった。

不出頭75%で処罰できず

 裁判員裁判は二つの面から破綻している。
 一つは、参加する人たちが激減してしまったということです。
 特に「ストレス国賠」と言って、裁判員を経験した人が心の痛みを負わされたということで、2013年5月に国の責任を追及する国家賠償請求訴訟を起こした。昨年9月に福島地裁で判決があり、今年10月29日には仙台高裁で判決が出る。福島地裁判決は、真面目に裁判員を務めたことによって精神的な衝撃を受けて「ストレス障害」になったことを認めた上で、その責任を国は取らなくてよいと言った。その理由として、やりたくなければ辞退できる制度なのに、辞退をしなかったからだと言った。これは「やりたくない人は辞退しなさい」と言ったのと同義だ。
 正当な理由のない不出頭は「10万円以下の過料」とされているのに、誰一人処罰されない制度になった。実際にこれまで誰一人、処罰されていない。
 今年7月の最高裁の統計でも、裁判員候補者として選定された人の25・2%しか出頭していません。つまり4人のうち3人は裁判員候補者に選定されても出ていかない。20%を割ったら本当に破綻だ。
 なぜ裁判員を義務付けるのかという議論になった時に、政府は国会答弁で、義務付けないと国民の意識が平均的に反映されないからだと言っていた。ところが今、裁判員をやりたくない人はやらなくてよくて、やってもよい人、やりたい人だけでやる制度になってしまった。「どうしようかな。できればやりたくないなあ」と思っているくらいの人に、「これは義務だ、処罰するぞ」と脅して裁判員をやらせ、「やっぱり国を守ることは大事なことだ」と自覚させることに、裁判員制度の目標があったはずです。これでは絶対に失敗です。

多くが堂々と拒否を表明

 裁判員制度の破綻のもう一つは、裁判制度としての破綻です。
 裁判員制度を導入することによって、起訴されてから判決までの期間を短くしようというのが、鳴り物入りの目標だった。にもかかわらず、実際に裁判員制度が導入される前と最近のデータを比較すると、起訴から判決までの期間が、裁判官裁判よりも長くなっている。
 そして、判決の内容を比べると確実に重罰化している。有罪率が高くなり、有罪になった時の刑罰が重くなるという二重構造になっている。
 革新政党やメディアが冤罪防止のためには市民参加の裁判員裁判がよいと言ったが、そうはならなかった。あらゆる意味で裁判内容がおかしくなっている。
 多くの国民は賢明だと私は思っています。制度の怪しさを感じる賢明さを持っている。いやだと堂々と言うようになった。
 私のごく親しい人に裁判員制度の通知が来たんです。「高山先生どうしましょうか」と相談をするでもなかった。「破って捨てましたよ」とあっさり言ったんですね。私は彼のそのあっさりした言い方に感動しました。(笑)

戦争法制もつぶす闘いを

 裁判員候補者として裁判所に呼び出されて出て行く人の減り方が、年々2〜3%と、ほとんど規則性をもっているかのように下がっている。
 どんと下がったのが東日本大震災、原発事故が起きた2011年です。あの年は一気に5%も下がった。3・11の直後、みんなが避難して仮設にいる時にも裁判所に来いと呼び出した。「いったい人の命をなんと考えているか」という声が上がった。事の本質が見えてしまって、反発も極限状態になった。
 私は、裁判員は兵役と同じだと思っています。その兵役を拒否しても処罰できないという情勢をつくったということは、話を戻せば、戦争法制は国会で成立したが、私たちがそれをぶち破ることは可能だということでもある。戦争法制をつぶす闘いを、裁判員法の廃止をきっかけにして進めていこう、と言いたい。
 裁判員制度で国民の治安動員のレールを敷こうしたが、そのレールも敷けないままで戦争法制にいった。
 安倍首相が最前線に立って鉄砲を持つわけじゃない。戦争に行くのは労働者人民だ。軍事物資を運ぶのも運輸労働者であり、結局、世の中を決めるのは、一人ひとりの労働者であり、国民であり、自営業者、農民、学生だ。だから、その担い手のところで拒絶することが、戦争を許さず、世の中を変えていく決定打になる。
 闘う労働組合がトップを切るという闘いになってますね。

11・1集会から11・6へ!

 戦争法制時代の司法制度に対決する国民の行動として、われわれが外に見える行動をするのが11月6日です。メディアにもアピールして、これまでとは違う規模でやりたい。参加人数も5割アップ、できれば2倍にしたい。
 裁判員候補者名簿に登載されたという通知が発送される前に、これを「絶対に送るな!」というメッセージを発したい。
 「行くな」と周りに声を掛け合おう。そこに「廃止の声を上げよう」を付け加えたい。「行かない、行くな」だけでなく、廃止の声を上げる。
 私たちは当初から裁判員制度は廃止しかないと主張してきた。修正とか見直しとか、中途半端なことは一切言わなかった。戦争法とか裁判員制度は、どこかで線引きをするという議論を立ててはいけない。打ち倒すか、打ち倒されるかしかない。
 1千万人の怒りと結びつくような闘いをつくりたい。潜在的には多くの人たちが味方なのだが、それが水面上に顔を出すためには、もう一つ力がいる。私たちの11・6行動もその力を引き出す行動です。
 これほど力強く進み、敵を断崖絶壁まで追い詰めている闘いはそうはない。彼らが息も絶え絶えになっている。裁判員裁判の命脈は尽きたことを、みんなで確認する「見える行動」が、11・6行動です。
 11・1労働者集会をともに闘い、11・6行動に向かいましょう。『前進』読者のみなさん、東京と近郊のみなさんにはぜひ参加していただきたいと思います。

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つぶせ!「現代の赤紙」裁判員制度
11・6最高裁デモ
 11月6日(金)正午 デモ出発
 日比谷公園霞門集合
 デモコース 日比谷公園霞門(弁護士会館前)〜東京地裁〜経産省・文科省〜首相官邸下〜最高裁(三宅坂)
 主催 裁判員制度はいらない!大運動

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