米日帝の朝鮮侵略戦争阻止を 安保法成立で加速する戦争情勢

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週刊『前進』06頁(2704号05面03)(2015/11/02)


米日帝の朝鮮侵略戦争阻止を
 安保法成立で加速する戦争情勢

(写真 米原子力空母ロナルド・レーガンに乗艦し説明を受ける安倍と中谷【10月18日 相模湾】)

南中国海で米中激突の危機

 米海軍は10月26日夜、南中国海の南沙(スプラトリー)諸島で、中国が領有権を主張する人工島から12㌋(約22㌔メートル)以内にイージス駆逐艦「ラッセン」を入れる軍事作戦を強行した。これに対して中国海軍のミサイル駆逐艦と巡視艦が追跡した。カーター米国防長官は今後も数週間から数カ月にわたって海軍の作戦を継続すると語っている。
 これは南中国海における中国スターリン主義のきわめて大国主義的・反人民的な行動と、それに対する米帝の軍事的・戦争的踏み切りであり、本格的な軍事衝突―戦争にも発展しかねない重大事態である。これに日本政府は直ちに米軍支持を表明し、「米国とは緊密に情報交換しながら対応していきたい」(菅官房長官)と表明した。米中が軍事衝突したら安保法を先取りして日帝・自衛隊も参戦するという表明である。実際、日米は11月初旬、南中国海のボルネオ島北方で共同訓練を行う。南中国海での日米の共同作戦を念頭に置いた戦争訓練である
 米帝がこの時期に中国への重大な軍事作戦に踏み切ったのは、むしろ米帝の決定的な危機に基づくものである。大恐慌の本格的な激化のもとで米帝は衰退し、市場・資源をめぐる世界的な争闘戦で他帝国主義や中国スターリン主義の激しい追い上げにもさらされている。また、シリア・中東やアフガニスタン、ウクライナ情勢をめぐっても軍事的・戦略的な危機と破綻を深めている。ここから米帝は絶望的に凶暴化しているのだ。
 また米帝の軍事行動は朝鮮危機や米韓合同「作戦計画5015」、安倍政権の戦争法強行と一体である。南中国海における米中の対立激化は、朝鮮半島の戦争の危機と連動し、それを一層加速するものである。
 10月16日、オバマとパククネの米韓首脳会談で、北朝鮮の核・ミサイル開発の放棄に向け、「日米韓の協力を基礎に外交努力を強化する」ことで一致した。会談後の共同声明で、北朝鮮が新たに弾道ミサイルを発射すれば、「追加制裁を含む深刻な結果を招く」と警告した。
 このことが意味するものは「北のミサイル発射の兆候があった段階で北を先制攻撃する」という「作戦計画5015」の発動に向けて、北朝鮮への重圧を決定的に強めるということである。戦争によって北朝鮮スターリン主義体制を打倒・転覆し、同時に民主労総を先頭とする韓国労働者階級のゼネスト―革命に向かう決起を暴力的に粉砕することを狙っている。

朝鮮半島派兵を狙う自衛隊

 9月19日の戦争法の参院強行採決以降、朝鮮半島の戦争危機と安倍政権の戦争に向かう攻撃は決定的に激化している。主な動きだけでも以下のとおりである。
 ❶10月14~19日、日本、インド、アメリカがインド洋のベンガル湾で海上共同訓練「マラバール」を行った。米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」が参加。日本は護衛艦「ふゆづき」が参加した。対中国を念頭に置いた戦争訓練である。
 ❷10月18日、神奈川県の相模湾で海上自衛隊観艦式が行われた。安倍が訓示で「日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している。脅威は容易に国境を越えてくる。国民の命と平和な暮らしは断固守り抜く」と述べた。その後、米原子力空母「ロナルド・レーガン」に乗艦し、ブリッジや格納庫を視察し、戦闘機の操縦席に座ったり、説明を受けたりした。現職首相が米空母に乗艦するのは初めてだ。
 ❸20〜22日に中谷防衛相が訪韓し、韓国国防相と会談した。ハンミング国防相が「北朝鮮は憲法上、韓国の領土であるため自衛隊が北朝鮮領域に入る場合は韓国政府の同意が必要」と主張したのに対し、中谷は「韓国の有効な支配が及んでいる範囲は南北軍事境界線より南側だ」と反論し、北朝鮮に自衛隊を派兵する場合に韓国の同意は必要ないとの認識を示した。
 自衛隊の朝鮮半島派兵が議題となること自体が超重大であるが、さらに中谷は、この場合に韓国政府への事前通告や同意は必要ないという、露骨に帝国主義的な対応を行った。まるで朝鮮半島が日帝の植民地であるかのような傲慢(ごうまん)な、戦前的な対応だ。これには韓国の労働者人民から激しい怒りが巻き起こっている。
 ❹10月23日から22日間の日程で、自衛隊2万5千人が参加して、九州で大規模な訓練が行われている。演習の一環として、北海道から民間の高速フェリーを使って戦車や大砲を運ぶ訓練が行われた。戦時に民間の船舶やトラック、労働者を動員する訓練がこうして行われている。
 ❺さらに、沖縄・辺野古の米軍基地建設をめぐって29日、安倍政権は、座り込んで闘う労働者人民、おじい、おばあを警察の暴力で排除して、埋め立て工事に着手した。絶対に許せない。11月2日には、ソウルでパククネと安倍の日韓戦争会談が行われる予定だ。

「日米共同対処」叫ぶ共産党

 東アジアと並んでシリア―中東、アフガニスタンでも戦争は激化している。9月末からロシア軍がシリア反政府勢力への空爆を開始した。これにより、反政府勢力を支援する米軍とロシア軍が直接激突しかねない緊迫した情勢になっている。
 米帝―有志連合やロシア軍による空爆は、シリアとイラクで膨大な数の犠牲者と避難民を生んでいる。シリアの全人口2240万人の半分以上が家を失い、国内・国外で流浪している。アフガニスタンでも戦争が激化し、米帝が絶望的に凶暴化している。
 このように大恐慌、新自由主義のもとで全世界で戦争が激化している。階級的労働運動と労働者の国際連帯で、戦争を絶対に阻止しよう。
 日本共産党スターリン主義の「戦争法をなくすために国民連合政府をつくって、安保と自衛隊を容認し積極的に活用する」という大裏切りを絶対に粉砕しよう。こんな理屈の通らない話が一体どこにあるものか! 日本共産党は「綱領」に記した「日米安保条約廃棄」の立場すらかなぐり捨て、「安保条約第5条で日米が共同対処する」と叫ぶ。そして日帝の先兵となって警察と一緒に階級的労働運動、革命的労働者・学生に襲いかかってくる。1930年代の人民戦線を見よ!
 11・1労働者集会の大高揚を引き継ぎ、国鉄決戦を基軸に階級的労働運動を前進させ、日米帝の朝鮮侵略戦争を阻止し、安倍政権を打倒しよう。
(畑田治)

この間の軍事・戦争動向
9月30日 ロシア軍がシリア空爆開始
10月3日 アフガニスタンで米軍が「国境 なき医師団」の病院空爆、30人以上殺害
10月14日〜19日 インド洋ベンガル湾で日米  印による海上共同訓練「マラバール」
10月16日 米韓首脳会談
10月18日 安倍が海自観艦式に出席。その 後、米空母ロナルド・レーガンに乗艦
10月20日 中谷が訪韓し日韓防衛相会談
10月23日〜 自衛隊2万5千人が参加し九 州で大規模な戦争訓練、民間動員も
10月26日 米海軍が南中国海で軍事行動
10月29日 政府が埋め立て工事着手
11月2日 安倍とパククネの日韓首脳会談
11月上旬 日米が南中国海で共同演習

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