保育士の総非正規化許すな 「非正規職の待遇改善」でなく「非正規職撤廃」で闘いぬこう

週刊『前進』06頁(2707号03面01)(2015/11/23)


保育士の総非正規化許すな
 「非正規職の待遇改善」でなく「非正規職撤廃」で闘いぬこう

(写真 7月24~26日の自治労全国保育集会【山口市】で非正規職撤廃の訴えが大反響を呼んだ)

 保育職場で非正規職化が拡大し、さまざまな雇用形態の非正規職労働者で保育所が回されている。「正規と同じ」として採用されながら期限が来たら首となる任期付職員の導入が「労使一体」で進められ、1年未満の契約で5~20年も更新されるフルタイムの臨時職員が正規職と同じ重責を負わされている。基準通り正規職を配置しない違法・脱法行為が横行し、安全崩壊が深刻化している。闘う労働組合を取り戻し、非正規職の待遇改善ではなく非正規職撤廃で闘おう。

私立以上に公立保育所の非正規職化が急拡大

 2011年度の全国保育協議会の調査によると保育職場の非正規雇用は、公立は53・5%、私立38・9%。公立の非正規職化が著しい。今年1月の明星大教授らの調査によると、東京都内の公立保育園でも非正規職員の割合が4割を超え、年収は200万円未満が8割に達し、うち100万円未満が4割超となっている。
 保育士は、かつては正規とごく少ない休暇代替臨時職員、朝夕の子どもの少ない時間帯のパートで成り立っていた。今は、さまざまな雇用の非正規職労働者で保育所が回されている。
 正規職もフルタイム勤務や育児短時間勤務(4〜6時間くらい)などに分断され、定年後の「再任用」になると、賃金は3割以上減るのに責任は「正規」扱いだ。

3年任期職員を労使一体で導入

 最近、労使一体となって、3年の任期付き職員がどしどし導入されている。正規とまったく同じ賃金・労働条件と言いながら3年で首になる。しかも「子育て支援」(育休代替)の名目で導入されているのに、本人が妊娠しても育児休業は取れない。試験を受けて合格したら「登録」という待機状態になり、正規の育休取得者が出て初めて採用され、もし正規が短期間で戻ってくるとお払い箱になる。しかも3年間は昇給してもまた振り出しに戻る。これのどこが「正規と同じ」なのか?
 13年度から豊中市で労使一体で導入された一般職非常勤職員も6時間パートで1年契約だ。「正規のように65歳まで更新」という触れ込みであったが、8時間必要なところに6時間配置になり、現場はすさまじい過重労働になっている。

基準通りに正規を配置せず違法・脱法が横行

 8時間フルタイムの臨時職員は、名目上は一時的なので、1年未満の契約で首だ。K市では、1年臨時をやったら解雇され、6カ月間パートになり、その後また臨時になるというパターンを繰り返す「ベテラン」がたくさんいる。親から見ると「ずっと働いている先生」に見える。
 臨時は、かつては正規の補助的な仕事で、賃金・労働条件は悪いが気楽な部分もあった。今はクラス担任を単独で持たされたり、カリキュラム作成・個人情報管理・保護者対応など100%正規と同じ責任を背負わされている。日給8千円くらいでほとんどの市で昇給はない。通勤費の出ない自治体もある。生涯賃金で臨時保育士は正規の3分の1である。明らかに「一時的」業務ではなく5〜20年も続いている。基準通りに正規を配置しない違法・脱法行為がまかり通っているのだ。

「市民ニーズ」を口実に非正規化で安全が崩壊

 非正規職員が増えたのは、行財政改革を振りかざした非正規職化・民営化の結果だ。加えて「市民ニーズ」という名の一時保育や休日保育、延長保育などの新事業拡大だ。「いつ子どもが減るかわからない」として臨時しか配置しない。0歳児定員6人に対し保育士は2人必要だが、枠拡大で子どもが増えると3人目の保育士は臨時や4時間のパートでごまかす。
 今やパートも朝夕の2〜3時間だけではない。障害児加配、家庭支援員など、経験や職員間の連携が不可欠な業務に携わっているにもかかわらずパートは会議にも参加できない。情緒障害などを持つ子どもは特に固定した大人との信頼関係が必要だが、時間単位で人が入れ替わる配置になってしまっている。パートの時給は公立で950円〜1500円くらいと自治体ごとでまちまちだが、民間では有資格者でも800〜850円などと最低賃金すれすれだ。
 さらに「有資格者が来ない」ことを口実にまったくの無資格者がフルタイムで入っている。「保育スタッフ」と呼ばれることも多い。安倍の進める限定保育士制度が本格化すれば、さらに無資格化が進む。小規模保育所や保育ママでも、無資格者がOKになって、時給はさらに低くなる。
 有償ボランティアのファミリーサポートは時給800円で、施設・玩具・教材などすべて持ち出し、何かあれば一切の責任を負わなければならない。こんな非正規労働は「善意」に乗っかった行政の責任放棄であり、安全崩壊は不可避だ。

体制内労組幹部を倒し絶対反対で闘う組合に

 全国の保育所で多発する保育事故や安全崩壊の現実は、新自由主義による民営化・外注化・非正規職化の結果であると同時に、それを労使一体となって推進してきた体制内労働運動の犯罪的な路線の問題だ。
 自治労本部や自治労連本部、体制内労組幹部たちは、安倍政権や自治体当局が「財政危機」を逆手にとってかけてくる攻撃に対し闘うのではなく、「財政再建のために」「住民のニーズに応えるために」と称し「子ども・子育て支援新制度をよくしよう」などとして協力してきた。現場の労働者が怒りを込めて団結し絶対反対のストライキで闘おうとすることに対しても、「闘っても無駄だ」「保護者や子どもに迷惑がかかる」などと叫んで、敵対し押しつぶそうとしてきたのだ。
 住民・保護者も労働者だ。安倍政権の進める総非正規職化と貧困の攻撃に対して動労総連合を先頭に絶対反対のストライキで闘う階級的労働運動だけが未来を開く。労働組合を取り戻し、体制内幹部が掲げる非正規職の拡大を前提にした「非正規職の待遇改善」ではなく、非正規職撤廃の路線で闘おう。
(保田結菜)
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