「中国包囲網」とインフラ輸出拡大狙い戦争外交に走る安倍

週刊『前進』06頁(2708号05面03)(2015/11/30)


「中国包囲網」とインフラ輸出拡大狙い戦争外交に走る安倍

国会召集せず12カ国に外遊

 IS(イスラム国)による11・13パリ無差別襲撃事件の後、米仏ロなどによるシリア・イラクへの侵略戦争は一層激化し、新たな国家間戦争へと発展しつつある。フランスは23日、地中海に派遣した原子力空母シャルル・ドゴールから大規模空爆を開始。同じ日に英首相キャメロンがパリで仏大統領オランドと会談し、シリア空爆への参加を表明した。さらに24日、トルコ軍がロシア軍機を撃墜し、ロシア大統領プーチンがトルコを激しく非難する一方、米帝およびNATO(北大西洋条約機構)が「トルコ支持」を表明したことで、軍事的緊張が一気に高まっている。
 こうした中で日帝・安倍は、シリア・イラク侵略戦争の蚊帳(かや)の外に置かれながらも、遠からず中東や東アジアでの戦争に自衛隊を「参戦」させようと機会をうかがっている。そのことは、この間の安倍の外交戦略にも表れている。
 安保国会決戦の高揚に追いつめられ、臨時国会も召集できなかった安倍は、9月末の米ニューヨークでの国連総会出席を皮切りに外遊を開始し、この秋だけで計12カ国を訪問している。さらに年内にフランスとインドを訪問する予定だ(表)。

民間企業など50団体が同行

 今回の外遊の狙いは、一方では、中国に対抗する経済的・軍事的包囲網を構築することであり、他方では、今や八方ふさがりの危機にあえぐ日本企業のインフラ輸出戦略の突破口を開くことにある。破滅的な財政危機も顧みず巨額の支援や円借款を提供する「バラマキ外交」を展開し、勢力圏を確保しようと必死になっているのだ。
 ❶安倍は9月30日から中米のジャマイカを訪問し、シンプソン=ミラー首相との首脳会談で「基本的価値観の共有」や「カリブ共同体との協力」を約束した。中南米に影響力を強める中国に対抗する狙いだ。近年、中国はインフラ投資を通じて中南米諸国に急接近し、米英も対抗してジャマイカと首脳会談を行っている。米オバマ政権のキューバとの国交回復も、中南米をめぐる中国との争闘戦が背景にある。安倍もこれに後れを取るまいと必死だ。
 奇しくも安倍のジャマイカ訪問の前日、インドネシア政府は、日本と中国が受注を争っていた高速鉄道計画について、中国案を採用する方針を発表した。日帝のインフラ輸出戦略にとって致命的ともいえる敗北だ。安倍は以後、行く先々で中国への対抗意識をあらわにしている。
 ❷続いて安倍は10月22〜28日、インフラ輸出を担う約50の企業・団体を引き連れ、モンゴルと中央アジア5カ国(トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン)を訪問した。民間企業が同行する外遊は、今年1月のISによる日本人人質殺害事件の引き金を引いた中東歴訪以来だ。
 中央アジアは、中国・習近平政権の掲げる「一帯一路(シルクロード経済圏)」構想の陸上ルートに位置する。安倍は訪問先の各国で「領土問題をめぐる中国の違法行為」に言及して中国を牽制(けんせい)し、「インフラ整備支援で3兆円のビジネスチャンスを生み出す」と強調した。
 とりわけ天然ガス埋蔵量が世界第4位で、大統領独裁国家として知られるトルクメニスタンとの間で、安倍は総事業費2兆2千億円もの天然資源開発の協力で合意した。この他、大型プロジェクトが大統領のトップダウンで決まる同国において、安倍は日本企業の商機を見いだそうと関係強化を図っているが、中国に大幅に後れをとっているのが現状だ。
 こうした資源やインフラ市場をめぐる争闘戦で生き残るためにも、安倍は各国との安保・軍事戦略上の連携強化を図っている。

「南中国海への派兵を検討」!

 ❸特に重大なことは、11月19日にフィリピン・マニラで日米首脳会談が行われた際、安倍が米軍の「航行の自由作戦」への支持を表明したことに加え、南中国海への自衛隊派兵について「日本に与える影響を注視しつつ検討する」として、初めて南中国海への「参戦」の意思を示したことだ。
 他方で、日帝・安倍はこの間、朝鮮半島有事において自衛隊が北朝鮮領内に侵入する場合、韓国政府の事前同意を得る必要はないとの考えを示し、韓国政府との間で見解の不一致を露呈させていた。11月1、2日には韓国で日中、日韓、日中韓首脳会談を立て続けに行ったが、韓国大統領パククネとの会談は30分のみで昼食会も共同会見も行われず、オバマが望む「日韓関係改善」とはほど遠い結果となった。このため19日の日米会談で、オバマは再度「北朝鮮の核・ミサイル開発に対する日米、日米韓の連携強化」を確認した。
 ❹13〜17日、安倍はG20(主要20カ国・地域)首脳会合の開催地トルコを訪問し、シリア爆撃(クルド人への爆撃)の最先頭に立つトルコ・エルドアン大統領と13日に会談、三菱重工業などが優先交渉権を獲得したシノップ原発の建設推進、「テロ対策」での関係強化を確認した。
 ❺18〜19日、フィリピンでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席、中国と対立するアキノ大統領と首脳会談を行い、自衛隊の中古装備品などの提供を可能にする防衛装備品移転協定締結に合意した。
 ❻20〜23日、マレーシアでASEANプラス3(東南アジア諸国連合10カ国と日中韓)首脳会議や東アジアサミットに出席し、米オバマとともに南中国海問題で中国を非難した。また、この地域でインフラ輸出を拡大する中国に対抗して、日本の国際協力機構(JICA)やアジア開発銀行(ADB)を通じた投融資の拡大や円借款の条件緩和を打ち出した。
 ❼これと並行して、22日に日豪外務・防衛閣僚級会合(2プラス2)がシドニーで開かれ、自衛隊・豪軍の「地位協定」を早期に締結し、部隊運用や装備面で「準同盟」関係を形成することで合意した。すでに日帝は、豪軍の次期潜水艦を豪と共同開発することにも名乗りを上げている。
 対中国争闘戦を主眼とする米日帝国主義の外交・軍事戦略は、戦後世界体制の崩壊と分裂を一層促進し、東アジアに新たな戦争の危機を生み出している。労働者の国際連帯とゼネストで戦争を阻止し、帝国主義とスターリン主義を打倒するプロレタリア世界革命の時代を切り開こう。

安倍の外遊日程

9月30日〜10月1日 ジャマイカ
10月22〜28日 モンゴル、中央アジア5カ国
11月1〜2日 韓国
11月13〜17日 トルコ(G20)
11月18〜19日 フィリピン(APEC首脳会議)
11月20〜23日 マレーシア(ASEAN首脳会議など)
年内にフランス、インド訪問予定

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