山手線新型車両が運用中止 運転士の外注化を狙ったICT依存が事故の原因 外注化による重大事故連続

週刊『前進』08頁(2710号02面03)(2015/12/14)


山手線新型車両が運用中止
 運転士の外注化を狙ったICT依存が事故の原因
 外注化による重大事故連続


 JRの重大事故が相次いでいる。11月30日、JR東日本が山手線に投入した新型車両は、故障が相次ぎ営業運転初日で運用中止となった。12月3日未明、JR東日本の横浜線・鴨居―中山駅間で、架線の張り替え工事中に線路内の電柱が根元から折れ、同線は始発から運行を停止した。12月4日未明、大阪市内にあるJR西日本・山陽新幹線の橋梁(きょうりょう)で、塗装工事中に足場が崩れ、労働者9人が河川敷に落ち、1人が脳挫傷の重傷を負い、7人がけがをした。12月5日夜には、JR東日本の横須賀線・東京―新橋駅間で地下水の排水設備が故障、線路が冠水し、同線の東京―品川駅間は6日始発から夕方まで運行を停止した。さらに12月10日未明、静岡市内のJR東海・東海道新幹線で保守用車同士が衝突・脱線し、東海道新幹線は始発からストップした。
 いずれも外注化された業務や工事に絡んで起きた事故だ。原因が外注化にあることは明らかだ。
 山手線新型車両の営業運転初日に起きた事態は、まさに惨憺(さんたん)たるものだった。
 新型車両は出発式を受けて午後3時18分に大崎駅を出発した。その5分後、目黒駅で停止位置を55㌢超えて止まるトラブルが起きた。午後6時47分に大崎駅で停車した際には、ホームドアが開かなくなった。停車位置を修正してドアを開けたが、今度は出発しようとしてもドアが閉じたことを示すランプがつかなくなった。午後10時52分に大塚駅手前で運転士がブレーキの効きが甘いと判断し、手動でブレーキをかけたところ、運転台のモニターには多数の故障表示が点灯して、運転は同駅で打ち切られた。

ブレーキ操作も機械任せに

 この事故の根本原因は過度のICT(情報通信技術)依存にある。
 JR東日本は山手線を中心にホームドアの設置を進め、ホームの安全を守ってきた駅員を大幅に削減した。これ自体が大合理化だ。ホームドアが設置されれば、電車は車両のドアをホームドアにぴたりと合わせて止まらなければならない。そのためJRは、ブレーキ操作も機械に任せるデジタルATC(自動列車制御装置)と呼ばれるシステムを導入した。だが、ブレーキの効き具合は、乗客の多さや天候などによる線路の状態に応じて変化する。ブレーキ操作まで機械化することには根本的な無理がある。
 今回の事故は、デジタルATCの列車制御情報を含む大量の情報を伝達する「INTEROS」と名づけられたシステムの不具合が原因だとされている。重大なのは、運転士が自分の判断でブレーキをかけた途端にシステムがダウンしたことだ。これは「運転士はシステムに従っていればいい」というJRの施策の危険を示して余りある。
 JRが極端なICT化を推し進めたのは、運転士の業務も外注化するという思惑があるからだ。外注化を粉砕しなければ労働者と乗客の安全は守れない。東京に動労総連合を建設し、外注化・非正規職化を軸とする第2の分割・民営化攻撃と徹底的に対決しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加