焦点 米仏ロに続き英独がシリア参戦 世界戦争勃発の危機と対決を

週刊『前進』08頁(2710号05面03)(2015/12/14)


焦点
 米仏ロに続き英独がシリア参戦
 世界戦争勃発の危機と対決を


 米欧帝国主義やロシアなどによる「対IS(イスラム国)」を口実としたシリアへの攻撃が激化している。
 フランスは11月13日のISによる反革命的な無差別襲撃事件の後、ただちに原子力空母シャルル・ドゴールを投入し、23日からシリアへの大規模空爆を開始した。有志連合を主導する米帝も12月1日、カーター国防長官の答弁で、新たに200人規模の急襲部隊の投入を開始したと発表した。
 3日にはイギリス軍が、これまでイラクで行っていた空爆をシリアへ拡大した。さらに4日にはドイツ連邦議会が、仏軍などの作戦を支援するため、戦闘機や艦船に加え最大1200人規模の兵員を派遣することを可決した。ドイツはイラクのクルド人組織への武器供与や訓練要員の派遣などを行ってきたが、より直接的な軍事介入へ転換する。投入される兵力は第2次大戦後の国外派兵で最大規模となる。
 他方、9月末から独自に参戦したロシア軍もシリア空爆を強化、その頻度は1日140回以上に達し、カスピ海から巡航ミサイルによる攻撃も開始した。この中で11月24日に発生したトルコによるロシア軍機撃墜事件が、新たな世界戦争の危機を生み出している。
●元凶は帝国主義・大国の中東侵略
 昨年8月以来の有志連合によるイラク・シリア空爆は、12月1日現在で計8500回を超え、うち米軍による空爆は6692回に達する。その実態は民間人の居住地や市場、学校、医療施設などをも攻撃対象とした無差別爆撃だ。在英のNGO「シリア人権監視団」によると、有志連合は7日、シリア北東部の村を爆撃し、少なくとも26人(うち7人が子ども、4人が女性)を殺害した。ISメンバーは一人も含まれず、全員が一般市民だ。イラク北部ラッカでは、11・13事件からの2週間に行われた空爆で一般市民75人が虐殺されている。
 シリアでは、2011年3月以来、戦闘による死者数が25万人に達し、うち35〜45%が一般市民だという。1日平均で150人が殺されている。パリの11・13襲撃事件を上回る数の虐殺が、4年半以上にわたり毎日続いているのだ。国内外で避難生活を強いられる人は1200万人に達する。
 もともとシリアの反政府闘争は、11年のチュニジア・エジプトに始まる一連の中東革命(アラブの春)を受け、シリア人民自身の決起として始まった。それが政府軍と複数の武装勢力による血みどろの内戦へと変質したのは、中東支配の崩壊を恐れた米、英、仏などがカイライ政権樹立をもくろんで介入し、武器や資金の供与、軍事教練などを通じて反政府勢力を育成したためである(他方、ロシアはアサド政権擁護の立場から一貫してシリアに関与してきた)。米帝のイラク侵略戦争が生み出したISは、これらの武器や資金をも得て勢力を拡大した。帝国主義・大国による中東侵略こそ、今日のシリアの状況を招いた最大の元凶だ。
 そして現在、「ISを壊滅する」「テロと戦う」という口実で実際に行われているのは、中東支配をめぐる帝国主義間・大国間の激烈な争闘戦をはらんだ侵略戦争であり、ISとは何の関係もない人民の無差別大量虐殺である。絶対に許すことはできない。
●国際連帯とゼネストで戦争とめる
 「対テロ戦争」の銃口は、フランスなどの労働者人民に対しても向けられている。12月8日付ニューズウィーク誌によると、フランス政府の非常事態宣言のもと、警察はこれまで1233件の家宅捜索を行い、165人を逮捕、266人を自宅軟禁としている。
 武装警官による襲撃が仏全土で横行する中、パリでは機動隊と激しく衝突しながらデモが闘われ、労働組合はストに決起している。イギリスやドイツでも、シリアへの本格参戦に抗議するデモが数千人規模で闘われている。
 こうした中、日帝・安倍は有志連合の一角に名を連ねながらも、軍事的にはいまだ蚊帳(かや)の外に置かれていることに焦りを募らせ、トルコやイスラエルとの協力関係を通じて中東情勢に介入する機会をうかがっている。他方、フランスの非常事態宣言と同様の「緊急事態条項」新設を突破口に、改憲へ踏み出そうと狙っている。
 戦争をとめる力は、労働者階級の国際連帯とゼネストにこそある。16年国鉄・参院選決戦で改憲攻撃を粉砕し、安倍を打倒しよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加