改憲と総非正規職化を叫ぶ安倍施政方針演説に反撃を

週刊『前進』04頁(2719号02面01)(2016/02/01)


改憲と総非正規職化を叫ぶ安倍施政方針演説に反撃を

緊急事態条項新設へ「現実的な段階」と公言

 1月22日、安倍は国会で施政方針演説を行った。「挑戦」という単語を21回も連呼し、「1億総活躍」と称した労働法制の大改悪と総非正規職化、そして改憲へ踏み込む意図をあらわにした。
 年頭からの「株安・円高」の進行、さらに週刊誌の報道で発覚した経済再生相・甘利明の金銭授受疑惑=贈収賄事件が政府・与党を直撃する中で、安倍はこの危機からの脱出をかけて、改憲と新自由主義攻撃への突進を宣言したのだ。
 その内容は、第一に、緊急事態条項新設を最大の焦点とする改憲への反動的「挑戦」を公言したことである。安倍は野党に向かって「ただ『反対』と唱える。政策の違いを棚上げする。それでは国民への責任は果たせません」とけん制しつつ、「憲法改正。国民から負託を受けた国会議員は正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく」と踏み込んだ。安倍はこれに先立つ19日の参院予算委で、緊急事態条項の新設を「きわめて重く大切な課題だ」と強調、21日の参院決算委では「いよいよどの条項を改正すべきか(議論する)現実的な段階に移ってきた」と答弁し、野党の一部をも巻き込んだ改憲策動を国会で始めていくことを宣言した。
 また22日の演説では、米軍普天間基地の辺野古移設についても「もはや先送りは許されない」とし、暴力的に移設工事を進める意図を示した。

「同一労働同一賃金」は非正規化と賃下げだ

 第二に、「1億総活躍への挑戦」と称して、昨年の派遣法改悪に続く労働法制の大改悪を打ち出したことだ。
 安倍は「多様な働き方が可能な社会への変革」「労働時間に画一的な枠をはめる従来の労働制度、社会の発想をあらためる」と主張し、「時間ではなく成果で評価できる新しい労働制度」の導入にも言及した。労働基準法解体・8時間労働制解体の「残業代ゼロ法」や解雇自由化(金銭解雇)などの労働法制大改悪を進める宣言だ。
 さらに重要なことは、新たに取りまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」なる政策の目玉として、「同一労働同一賃金の実現」を掲げたことである。これは正規・非正規の待遇や賃金格差を是正するもののように宣伝されているが、実際には総非正規職化の攻撃と一体で、現在の正規職の賃金水準を非正規の水準まで大幅に引き下げる攻撃にほかならない。
 もともと「同一労働同一賃金」とは、労働者階級が差別的な賃金体系に反対し、団結して低賃金を打破するための闘争スローガンとして、資本主義の勃興期の頃から掲げられてきたものである。日本でも、戦後革命期には「8時間労働制」や「食える賃金をよこせ」のスローガンと一体で掲げられ、労働者はストライキ闘争を通じてこれを実現していった。だが、その後「同一労働同一賃金」のスローガンは、職場内で「同一」ないし「類似」の労働に従事する労働者のみに同一賃金の支給を求める格差容認の「同一価値労働同一賃金」要求へと変質させられていった。資本家階級はこれを逆手に取って、同じ職場で同じ時間働いても、仕事の内容や成果で賃金に落差をつける成果給・能力給の導入を進めてきた。
 第1次安倍政権時の06年、経済財政諮問会議は「労働市場改革」の一環として「同一価値労働同一賃金」を提唱し、民間議員の八代尚宏は「正社員と非正規社員の格差是正のためには、正社員の待遇を非正社員の水準に合わせる方向での検討が必要」と主張した。
 安倍があらためて「同一労働同一賃金」を掲げたことは、基本的にこうした考えを引き継ぐものである。「旧来の正社員にこだわらないような働き方改革が進めば、同一労働同一賃金に向けた議論も進む可能性はある」(1月23日付日経新聞)といわれるように、正社員の解雇自由化を含む総非正規職化と一体で全体の賃下げを強行していく攻撃にほかならない。
 外注化阻止・非正規職撤廃、労働者派遣法粉砕と一体で、一律大幅賃上げを掲げて今春闘をストライキで闘うことが決定的に重要だ。

2・14国鉄集会から16春闘と安倍打倒へ!

 第三に、「よりよい世界への挑戦」と称して、日帝資本の延命のための対外戦略を安保・軍事戦略と一体で展開していくことを打ち出した。
 安保法制の施行に向けて「万全の準備を進める」、さらに「国際社会とともにテロとの闘いを進める」と打ち出し、とりわけ5月伊勢志摩サミットを前に「国内のテロ対策の強化、危機管理を進める」と主張した。
 さらに安倍は、TPP(環太平洋経済連携協定)が「GDP(国内総生産)を14兆円押し上げ、80万人の雇用を生み出す」などという噴飯ものの政府試算をふりかざして、「TPPはまさに国家百年の計」「大いなる挑戦の第一歩」としきりに強調した。
 だが、まさにTPP担当相で2月4日にTPP署名式への出席を控えていた甘利が、不正・違法な金銭授受を暴露され、安倍政権は危機に陥っている。甘利は安倍内閣の最重要人物の一人であり、06年の自民党総裁選時に安倍の選対事務局長を担って以来、安倍にとって第一の盟友であり、安倍の「精神安定剤」的な存在だといわれる。
 何より甘利は、国鉄解雇撤回闘争の解体を策した2000年の「4党合意」を自民党副幹事長(当時)として推進した張本人であり、02年の国労5・27臨時大会後の記者会見で「国労本部は闘争団を除名しろ」と公然と要求した人物だ。こういうやからが、安倍や葛西敬之(JR東海名誉会長)とともに安倍政権の中心を担ってきたのだ。
 だが、動労千葉・動労総連合とともに国労共闘が徹底的に闘って4党合意を粉砕し、10年4・9政治和解をものりこえて、ついに国鉄解雇撤回闘争は昨年6・30最高裁決定で「JR採用差別は不当労働行為」と認めさせた。そしていよいよJR本体に解雇撤回・原職復帰の要求を突きつける新段階に突入する。2・14国鉄集会はその新たな出発点だ。
 戦争・改憲と総非正規職化の安倍を倒す最大の力は国鉄闘争の中にこそある。2・14国鉄集会から16春闘の爆発を切り開き、動労総連合の旗を全国にうち立て、7月選挙決戦を頂点とする16年前半決戦で安倍を倒そう。
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