焦点 資本主義の終わりの象徴 マイナス金利に階級的怒りを

週刊『前進』02頁(2726号02面03)(2016/02/25)


焦点
 資本主義の終わりの象徴
 マイナス金利に階級的怒りを


 2月16日、日銀のマイナス金利政策が実際に始まった。
 日本で初めて実施されたこのマイナス金利政策とは、銀行などの金融機関が日銀に預ける当座預金の一部(10〜30兆円規模)に、0・1%のマイナス金利をかけるというものだ。もともと金融機関は、預金を確実に預金者に払い戻すことができるために、一定の金額を日銀に当座預金として預けておくことが義務付けられている。だが現在の大規模な金融緩和政策のもとで、金融機関は大量の余剰資金を日銀に預けている。だから、そうした金に対し「ペナルティー」として手数料を取り、投資や貸し出しに回すように促すというわけだ。
 そしてそのことによって、金利全般を低下させ、金を市中に出回らせ、経済を活性化させ、デフレ・不況から脱却し、さらに米ドルとの金利差を開くことで円売り・ドル買いを促進し円高を是正するなどという虫のいい皮算用を行っている。
●「円高・株安」へ逆回転加速
 マイナス金利はすでに昨年から欧州でも実施されている。だが言うまでもなく、金利とは「プラスもマイナスもある」というものではない。預けた金が減らされる制度・政策など、資本主義やそれに先立つ貨幣経済の歴史でもあった試しがない。マイナス金利とは資本主義の自己否定であり、自己破産の露呈である。帝国主義の大恐慌対策の歴史的破産の上に、最後にたどり着いた破滅的政策である。
 根本的には、何にどう投資してももうけがでないほど資本が過剰に蓄積された状態=「過剰資本」の反映が、マイナス金利である。投資が利潤をもたらさず、資金を運用しても利子がつかない! それほどまでにこの社会は資本主義として末期の状態を迎えており、マイナス金利はその断末魔の姿である。
 実施に先立つ9日には国債市場で、満期10年の国債の利回りが一時マイナス0・035%まで低下した。その後国債の金利はゼロをめぐる不安定な乱高下を繰り返している。
 実施翌日の17日には、コール市場(金融機関同士が短期で資金を融通し合う)で約10年ぶりにマイナス金利での取引が成立した。その後取引自体が4分の1に激減するなど、これも不安定な動きに揺れている。
 大手銀行の普通預金の金利は軒並み0・001%に引き下げられた。10万円を1年預けても、利子がたった1円ということだ。みずほ銀行では満期2年以上の定期預金の金利を、0・025%に引き下げ、他行も同様に引き下げている。住宅ローンについては、これまでわずかに1%を上回っていた10年固定のものが、相次いで1%を切るまでに下げられている。
 大企業向けの融資の基準となる金利「長期プライムレート」は、軒並み1%を切る寸前まで下がっている。
 こうした金利全般の低下が、日銀の思惑どおり景気の活性化につながるのか。ありえない。
 確かに「マイナス金利」はその常識破りな手法ゆえに、各方面にショックを与えた。しかし、すでに長く続いてきたゼロ金利政策によって、それぞれの金利はギリギリまで下げられている。その水準がさらに削られることで、金が活発に動くなどということは到底ない。それどころかその「ショック」ゆえに、不透明感、不安、戸惑いが拡大し、一時1万5千円台を割った株価は回復のめどもたたず、アベノミクスの「円安・株高」は「円高・株安」に逆回転している。
●人民の預金も「マイナス」に
 労働者人民の個人預金に直接マイナス金利が適用されることは今のところ考えられないが、振込手数料の引き上げや「口座管理料」などの新設が実行され、事実上のマイナス金利になる可能性も大いにある。
 日銀総裁の黒田東彦は一昨年11月、「デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲み切る必要がある」と講演で述べ「異次元緩和」を進めた。その〝決意〟の行きついた先が「マイナス金利」という劇薬だ。
●アベノミクス大破産の帰結
 安倍と黒田は二人三脚で、金融政策によって大量の金を出回らせ、マネーゲームをあおって株価の見せかけの高騰を演じ、大企業を優遇する一方で労働者を非正規職に追いやって格差を拡大してきた。このアベノミクスのいかさまと矛盾を塗り隠すために、安倍と黒田はありとあらゆるウソ、詭弁(きべん)、ごまかし、論理のすりかえなどを駆使してきたが、その全体が雪崩を打って崩壊しつつある。マイナス金利はその崩壊の象徴である。安倍と黒田を今こそ打倒する時だ。

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