焦点 高市総務大臣の「停波」発言弾劾 放送・新聞・出版労働者は反撃を

週刊『前進』02頁(2728号02面05)(2016/03/03)


焦点
 高市総務大臣の「停波」発言弾劾
 放送・新聞・出版労働者は反撃を


●言論統制と戦争動員は一対
 高市早苗総務相は、2月8日の衆議院予算委員会で、放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波法に基づく「電波停止」を命じることがありうると言及した。その後、菅義偉官房長官や安倍晋三首相が「当たり前のこと」などと高市の発言を擁護している。
 これは安倍政権の戦争・改憲攻撃そのものだ。とりわけ放送・新聞・出版労働者に対し、政権批判をするな、戦争・改憲のお先棒を担げと戦争協力を迫る攻撃だ。高市発言を弾劾し、反戦・改憲阻止の闘いを爆発させよう。問われているのは労働組合だ。放送・新聞・出版労働者が先頭に立って闘おう。
 高市は、放送事業者の番組編集における基本方針を定めた放送法4条は、違反したとしても行政処分の対象とはならないという従来の通説を真っ向から覆した。これは、憲法21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」の全否定に等しい。
 政府による言論・表現の自由の侵害、すなわち弾圧は、国家が労働者人民を再び戦争に動員しようとしていることの表れだ。それは放送法の成立過程を振り返っても明らかだ。
 1945年の日本の敗戦に至るまで、日本の放送(ラジオ)は国営放送しかなかった。国営ラジオ放送は戦前・戦中において「政治的公平」どころか政権の意を体して戦意発揚のために「大本営発表」の虚偽を放送し、国民を戦争に総動員し、何千万人もの命を奪うという大罪を犯した。敗戦から5年後の1950年に制定された放送法には、この歴史を二度と繰り返さないという労働者人民の痛切な反省がこめられている。
 それゆえに、立法目的として「表現の自由を確保」(第1条)が掲げられ、「(放送番組は)何人からも干渉され、または規律されることがない」(第3条)と規定された。第4条の「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」なども、権力の介入・支配から放送の自由を守るためであることは明白だ。
 高市や安倍らは、放送法の趣旨を百八十度ねじ曲げ、逆に言論弾圧の武器にしたい意図をあらわにしている。
●労働者の闘いが放送法に反映
 重要なことは、この放送法には戦後革命期の労働運動の高揚による階級的力関係が反映されていることだ。連合国軍総司令部(GHQ)によって放送の自由が確立したのではない。GHQは、45年9月に「日本新聞遵則(じゅんそく)」(プレスコード)や「日本放送遵則」(ラジオコード)を発し、言論を統制し労働者の闘いを弾圧した。広島・長崎の原爆被害の報道を禁じ、新聞、刊行物、個人の手紙も検閲した。
 その中で放送・新聞・出版労働者は戦後革命期の労働運動を先頭で担った。45年秋の読売新聞争議は生産管理闘争の発端を開いた。また46年10月には放送労働者がゼネストを敢行、NHKラジオ第1・第2放送とも全国一斉に沈黙した。労働運動の空前の高揚がGHQと当時の支配階級を追い詰める中で、当初、放送法案に盛り込まれたニュース放送に関する制限とその処罰規定が削除され、現行放送法の成立に至った。
 今、再び日帝が朝鮮戦争参戦と改憲に向かう中で放送への圧力が強まっている。
 高市「停波」発言は、放送・新聞・出版労働者が団結して戦争協力拒否の闘いに立ち上がることへの恐怖を示している。
 放送局は、国民保護法や武力攻撃事態法などで指定公共機関とされ、戦争に必要な業務を義務付けられる。そこで働く労働者が強制的に動員される。逆に言えば、労働組合の職場での闘いとゼネストが労働者の戦争動員を打ち破る鍵を握っている。
 1987年の国鉄分割・民営化を突破口とした労働組合解体、新自由主義攻撃のもと、放送・新聞・出版の労働現場でも非正規職化、賃下げと労働強化が進行した。一切が労働者の分断だ。団結を取り戻し、闘う労働組合をよみがえらせることが階級的力関係を転換させる。元日放労長崎分会長の鈴木達夫さんはそう訴えている。
 労働組合は新自由主義攻撃と絶対反対で対決し、打ち破ることができる。これを示してきたのが30年間の国鉄闘争だ。JRに「解雇撤回・原職復帰」を迫る新署名を全産別・職場に広げ、階級的労働運動をよみがえらせよう。高市ともども、戦争・改憲の安倍を打倒しよう。

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