日弁連会長選挙を闘って 高山俊吉弁護士(憲法と人権の日弁連をめざす会代表)が語る 司法改悪や戦争・改憲と闘う「高山日弁連」を5千人が支持

週刊『前進』04頁(2735号04面01)(2016/03/28)


日弁連会長選挙を闘って
 高山俊吉弁護士(憲法と人権の日弁連をめざす会代表)が語る
 司法改悪や戦争・改憲と闘う「高山日弁連」を5千人が支持


 2月5日の日弁連会長選挙で「憲法と人権の日弁連をめざす会」代表の高山俊吉弁護士が、全国の弁護士4923人の熱い支持を得て大奮闘した。自民党や共産党が一体となって推す相手候補との激しい選挙戦だった。高山さんに選挙戦を振り返ってもらった。(編集局)

自民・共産一体の候補と対決

 私が会長選に立候補を決意したのは、今の激動情勢に弁護士と弁護士会がとるべき姿勢についての問題意識です。戦争・改憲の流れに弁護士会はどう対決するのか。労働者、労働組合とともに、弁護士、弁護士会が決起する時が来た。その姿勢を示すのは今だ、という問題意識でした。
 司法の世界では、政府・最高裁が一体となった新自由主義「司法改革」路線に正面から対決する政治勢力がない。国会は自民党から民主党、共産党、社民党に至るまで、この国策を推進する政党ばかりです。
 会長選の相手候補は、企業法務をもっぱらやっている弁護士で、自民党政調会長の稲田朋美議員に政治献金をしている人です。自民党同調者で右寄りと言っていい。共産党系の勢力は自前の候補者を引きずり降ろされた上で、この候補の側につきました。
 自民党・共産党が一体となった「司法改革」推進派の候補が相手方で、それと対決したのが私です。現場の共産党系の弁護士は悩んだと思います。匿名で私にカンパを寄せてくれた方も少なくありませんでした。
 全国10カ所で公聴会という立会演説会をやるのですが、仙台の公聴会では、岩手県で登録したばかりの新人弁護士から「私は550万円の借金を抱えて弁護士になった。母親が返済してくれたが、母親が生きているうちに返せるかどうか」「どうして日弁連中枢の人たちは、私たちの窮状を正面から考えてくれないのか」と訴えられました。
 若い弁護士たちが借金苦の中から出発している。弁護士激増政策、法科大学院制度、司法修習費用を給付制から貸与制に変えたことなどの国策が、弁護士の窮状をつくり出している。私は「弁護士激増政策にも法科大学院にも反対だ」と真正面から答えましたが、相手候補は何ひとつまともに答えない。
 答えないのも道理、若い弁護士の借金漬けは国策だからです。戦前も弁護士激増政策がありました。窮乏した弁護士自身が「仕事を与えてくれ」「満州国(中国東北部)の司法官を弁護士にやらせてくれ」と日本の侵略政策のお先棒を担ごうとさえしました。

関東6県の得票は高山勝利

 弁護士激増政策は戦争・改憲の政策と完全に一体です。そのことを私は若い弁護士たちに訴えました。それで私を支持する弁護士がずっと増えたと思います。選挙の結果は、弁護士集中地域の東京で、2年前の会長選挙と比べ相手陣営は53票しか増えませんでしたが、私の陣営は486票増やしました。また関東圏では、埼玉、千葉、栃木で私は勝利しました。神奈川でも高山330票に対して相手候補362票の僅差(きんさ)です。神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬の関東6県の得票を合計すると私が831票、相手候補が758票で私が勝利しています。
 これが紛れもない現情勢です。共産党などの旧左翼と自民党や保守、中間派などが全部集まった相手側が1万2千票。対して高山に投票してくれた5千人は、腹の据わった人たちです。流れになびかず、「17分の5」の方についた。闘う「高山日弁連」とも言われました。それが5千人の大きさです。選挙後に開かれた3月11日の日弁連臨時総会でも、多くの弁護士が、「すべては現在の政治情勢と結びつけて考えなければならない」という私の発言に拍手を送ってくれました。

あいまいさない主張が力に

 私は、裁判員制度や新捜査手法なども含む「司法改革」、改憲・戦争の問題について、中途半端な態度をとらず、物事をあいまいに言わないことに努めました。それが強い支持を獲得する一番の力だと思ったのです。
 戦争法をなくすために「小異を捨てて大同につこう」、みんな手をつなごうと言うだけの議論では、アベ政治の本当の問題性がよく分からなくなる。その最たるものが共産党の「国民連合政府」の提唱です。大同団結のために、海外に出かけて行く戦争には反対するが自衛のための戦争は認めるし日米安保も活用するという議論では、とうてい安倍政権を倒せないし戦争も止められません。今回の会長選挙で共産党が、民主党との共闘どころか自民党と一緒になって相手候補を支持したのは、この「国民連合政府」構想のさらに先を行くものでした。
 一人ひとりの立場や条件に違いはあれ、基本的な矛盾は同じだとすれば事実を明確に言い切るところで連帯をつくる以外にない。たとえその人が今どういう考えを持っていようとも、ひとつに合流する客観的な条件はあるということです。あいまいな言い方をしないことが、多くの人びとが手をつなぐための最短で最強の道だと思います。
 私は「深い楽観論」の持ち主です。大恐慌情勢に激増政策が追い打ちをかけ、弁護士の窮状は日増しに厳しくなっています。「あなたをめぐるあらゆる環境と実在は、私とまったく同じだ、だから必ずつながる」という確信です。「その矛盾に気づいたから私はそのことを問題にする、あなたも一緒に歩こう」という呼びかけです。私たちはすでに実質多数だが、形の上でも多数派になれるという確信です。
 今回の選挙戦で5千という結果は、まだまだ悔しい数字ではあります。矛盾の根源に迫る闘いをもっとやれていたら勝利できたなと思う。それはこれからの課題です。

鈴木弁護士と7月参院選へ

 労働者・学生の皆さんとともに確認したいことは、自分たちの〈正しさ〉に対する確信とともに、〈強さ〉に対する不抜の確信を持とうということです。「学問をしたい」と大学に入ったけれど、実際の大学は軍事研究や企業との共同研究で金もうけに走っている。そうした大学の現実に、「大学ってこんなところか?」「学問ってそんなものか?」と疑問を持っている学生たちがたくさんいるはずです。日々の過酷な状況にやけになっている労働者も、本当は仕事に喜びを見いだし、誇りを持って働きたいと思っている。労働者を人間扱いしない職場状況はなんだという思いでいるはずです。そこで必ずつながる。その確信を持とうということです。
 しかし、堅苦しい理屈で人と人がつながることはまずない。事実の捉え方や感性も含めて、かみ合った話をするためには、私たち自身がもっと変わらなければいけない。自分を変えると一言で言いますが、一筋縄ではいきません。七転八倒の苦闘の中から、少しずつ変わっていくのでしょう。その積み重ねが大事なのだと思います。
 根底からの社会変革と激動の時代に、私たち弁護士の存在と闘いは非常に重要になっています。社会を変えていく主人公である労働者階級と思想的・実践的にしっかりと結びつくことによって、弁護士の役割は一層明確になってくるでしょう。私たちは今、その気持ちをかつてなく強くしています。力を合わせましょう。そして、7月参院選に「めざす会」の鈴木たつお弁護士を押し立てて勝利しましょう。
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