緊急事態条項導入・9条改憲狙う安倍の戦争政治に断を 国鉄闘争を軸に7月選挙決戦へ

週刊『前進』02頁(2740号01面02)(2016/04/14)


緊急事態条項導入・9条改憲狙う安倍の戦争政治に断を
 国鉄闘争を軸に7月選挙決戦へ

核兵器の保有・使用を「合憲」と閣議決定

 3月2日の参院予算委員会の答弁で、「在任中に(改憲を)成し遂げたい」と初めて明言した安倍は、7月選挙をにらんで改憲に向けた動きを急速に強めている。30日には公明党代表の山口と会談し、「7月衆参同日選」について基本的な同意をとりつけた。
 この間、安倍は極右団体・日本会議の会合でも改憲への決意を繰り返し表明している。安倍の盟友・桜井よしこも同じく日本会議の集会で「こんな憲法は破り捨てようではありませんか」と気勢を上げている。今や安倍・桜井らは現行憲法への憎悪をむき出しにし、「改憲への最後のチャンス」とばかりに猛然と動き始めた。安倍・自民党は「緊急事態条項」の新設を改憲の最優先課題とするとともに、何よりも「戦争放棄」と「戦力不保持・交戦権否認」を明記した第9条を破壊し、「自衛権の発動」「国防軍保持」を盛り込んだ戦争条項へと書き換えることを狙っているのだ。
 この動きと一体で、安倍政権は4月1日、「核兵器の保有・使用は合憲」とする答弁書を閣議決定した。また同日、安倍はワシントンで米韓首脳と会談し、3カ国の安保協力強化を確認した。朝鮮半島で戦争危機が高まる中、安倍は核兵器をもって参戦することをも視野に入れ、その準備を急いでいるのだ。
 だがこうした中で、安倍政権の国内支配は急速に崩壊しつつある。アベノミクスの大破産(2面「焦点」参照)が明白となり、戦争と貧困に対する怒りの声が全社会で巻き起こる中、この怒りが韓国やフランスに続くゼネスト・実力闘争となって爆発してくることを、安倍は何よりも恐れている。こうした闘いを国家暴力で鎮圧するために、安倍は「緊急事態条項」を必要としているのだ。

憲法を停止し首相独裁狙う緊急事態条項

 戦争や内乱などの際に憲法を停止し、政府または軍部に強権や独裁的権限を与える「国家緊急権」の規定が、現行憲法には一切存在しない。このことは、「戦争放棄」をうたった9条の存在と並んで戦後憲法の2大特徴をなしている。自民党はこれを突破することを狙い、2012年4月発表の「憲法改正草案」で初めて「緊急事態条項」を明記した(別掲)
 自民党改憲草案第98条はいわゆる「緊急事態」の事例として、「①わが国に対する外部からの武力攻撃、②内乱等による社会秩序の混乱、③地震等による大規模な自然災害」----の3類型を示している。①は戦争状態。②はデモ、ストライキ、街頭や施設の占拠など「社会秩序の混乱」とみなされるすべての行為が対象となる。③の大規模災害には震災や洪水などの自然災害だけでなく、原発事故や軍用施設での爆発事故なども当然含まれる。これらの災害時に国家が情報を隠ぺいし、人民の行動を警察・自衛隊のもとに統制することを狙うものだ。この3類型に加えて「その他の法律で定める緊急事態」とすることで、緊急事態の定義はさらに法律で拡大できる。
 こうした緊急事態が宣言された場合には、
 ⅰ 内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。
 ⅱ 首相は財政上必要な支出その他の処分を行うことができる。
 ⅲ 首相は地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 ⅳ 何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならない。
 ⅴ 宣言が有効な間は衆議院は解散されず、両院議員の任期には特例を設ける。
 すなわち、内閣の閣議決定だけで法律と同等の「政令」を制定でき、何人も「国その他公の機関の指示」に服従することが義務づけられる。また議員任期の延長も可能となり、任期満了に伴う選挙も政府の都合次第で延長できる。
 こうした政府・首相への全権限の集中により、憲法上の基本的人権はことごとく停止される。第99条の後段では、「この場合も......基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」などとわざわざただし書きがつけられているが、本来「侵してはならない」はずの基本的人権が「最大限に尊重」などという言葉で片付けられていることからして、実際にはあらゆる人権が踏みにじられることは明白である。まさに語るに落ちるというものだ。
 自民党発行のパンフレット「改憲草案Q&A」では、一層露骨に「『緊急事態であっても、基本的人権は制限すべきではない』との意見もありますが、国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます」と書かれている。すなわち憲法第14条、18条、19条、21条にそれぞれ定める「法の下の平等」「身体の拘束及び苦役からの自由」「思想及び良心の自由」「表現の自由」といった「小さな人権(‼)」は、すべて政府の裁量で停止できるというのである。

戦争動員攻撃をゼネストで粉砕しよう!

 また緊急事態条項は、戦争法や国民保護法と一体の戦争動員条項である。先の「Q&A」は、「現行の国民保護法において......憲法上の根拠がないために、国民への要請はすべて協力を求めるという形でしか規定できなかったことを踏まえ、法律の定める場合には、国民に指示できることとするとともに、それに対する国民の遵守(じゅんしゅ)義務を定めたものです」とあけすけにその意図を語っている。
 同じく戦争法の最大の柱をなす武力攻撃事態法でも、「国民の協力」は法律上の罰則や強制力を伴わないものにとどまっている。だが実際の戦争では、労働者人民を軍隊と警察の指揮下で強制的に戦争動員することが絶対不可欠なのだ。この点を突破するためにも、安倍は9条改憲と一体で緊急事態条項の導入を狙っているのである。
 このように緊急事態条項は、野党やマスコミが言う「お試し改憲」などでは断じてなく、議会制民主主義からむき出しの強権的暴力支配へと統治形態を全面的に転換することを狙うものだ。
 だが、安倍がこうした攻撃に手をつけること自体が、今までの支配・統治を続けられなくなった支配階級の歴史的危機を示している。だからそれは「暗黒の時代」ではなく、労働者民衆の団結した荒々しいゼネストと実力闘争で社会を根本から変革する壮大な革命情勢の始まりを告げ知らせている。
 国鉄闘争を軸に4〜7月決戦を闘い、戦争・改憲阻止のゼネスト情勢を切り開こう。7月選挙決戦に絶対勝利しよう。
(水樹豊)

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自民党改憲草案(第9章 緊急事態)

第98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等によ る社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める
 緊急事態において......緊急事態の宣言を発することができる。(以下略)
第99条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、 内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣 総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対し て必要な指示をすることができる。(中略)
 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより......国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第14条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日に特例を設けることができる。

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