フランスゼネスト 労働法制改悪阻止へ 全国大学・高校でバリケード 青年・学生先頭に120万人が決起

週刊『前進』02頁(2740号02面01)(2016/04/14)


フランスゼネスト 労働法制改悪阻止へ
 全国大学・高校でバリケード
 青年・学生先頭に120万人が決起

(写真 バリストに立ち上がったパリの高校生【3月17日】)

(写真 パリ郊外のソルボンヌ大学ナンテール校【68年パリ「5月革命」の拠点】の学生のデモ行進)

「非常事態宣言」打ち破り

 3月31日、フランス全土で労働法制改悪に反対する労働者と学生のスト、デモ、集会、大学・高校の校舎の封鎖(バリケード・ストライキ)が120万人の決起で力強く闘われた。これは、3月9日の第1回総決起での50万人の2倍を超える結集であり、3月17日、24日の闘争を引き継いだものだ。さらに4月5日、全国で2万4千人の決起と大学・高校のバリケード封鎖が行われ、4月9日には再度の統一行動が予定されている。
 パリをはじめフランス全土は、昨年11月のIS襲撃以来、オランド大統領による非常事態宣言下にあり、3月中旬現在で、3397件の令状なしの家宅捜索、「テロ容疑者」274人の自宅監禁、大学の門前の公安当局による監視態勢などの強権的弾圧体制下におかれていた。この非常事態を突き破り、今回の決起がかちとられたのだ。
 3月31日のストライキに入ったのは、パリ交通(地下鉄・バス)、国鉄、フランス・ガス、フランス電力、エールフランス、その他の公共部門、商店、新聞社、港湾、カジノなど広範な部門の労働者。これに連帯して、全国200の高校がバリケードで封鎖された。大学生も「68年5月革命」の拠点=パリ・ソルボンヌ大学などで大学当局の弾圧を粉砕して大学封鎖を闘っている。
 全国各地―パリ、リヨンなど主要都市、200カ所以上でデモ・集会が行われ、非常事態下で凶暴化した警官隊との激突が各地で起こり、多数の負傷者、数百人の逮捕者が出た。

労組解体狙う「改革法案」

 オランド社会党政権が昨年来策動している労働法制の抜本的改革法案のポイントは、以下のようにまとめられる。
 ①「経済的理由」による整理解雇の要件の緩和
 ②「不当な解雇」の際の補償金額の上限の設定
 ③現行の週35時間労働制の解体、44〜46時間への延長
 ④1日の労働時間の制限を10〜12時間に延長
 ⑤未成年の見習い工の労働時間の延長
 ⑥残業手当の削減
 ⑦こうした一切の改変を会社レベルでの交渉でできるようにすること
 その狙いは、「競争力の強化、雇用の創出」の名による労働時間・労働条件・賃金・職場での権利などへの全面的攻撃、とりわけ非正規職の拡大にある。そして一連の改変を、労組との全国的・産業別の労働協約ではなく、企業・会社・経営レベルでの協定、就業規則の改定でやれるように労働法制を改悪し、就業規則を労働協約に優先させることにある。これは、労働組合の無力化=実質的解体攻撃だ。
 労働法改定に関する政府報告書(2015年9月)は、次のように述べている。「〔この改定によって〕企業の現場にこれまで以上に重点をおき、現実により接近できるようになり、業種ごとの協約が容易になる」「労働組合は、どうやって労働者を守り、また同時に企業に信頼を与え、安心して投資できるような環境をつくり、それによって多くの職場をつくることができるかを考えるべきである」
 大恐慌のただ中で、欧州連合(EU)内外における経済・政治・軍事の全面にわたる争闘戦に生き残るために、むきだしの階級戦争に突入せざるをえなくなったフランス帝国主義の絶望的な姿がここにある。

貧困・低賃金に青年の怒り

 オランド社会党政権は、12年にサルコジ保守党政権に代わって登場して以来、フランス経団連(MEDEF)の要求のもと「雇用・競争力協定」「責任協定」「日曜労働の許可」などを、社会党支配下にあるCFDT(民主労働総連合)をはじめCGT(フランス労働総同盟=共産党系)などと次々に締結し、同時に付加価値税増税、家族手当の減額、年金保険料の引き上げ、5億ユーロの社会保障費削減、5千万ユーロの企業減税などを行ってきた。
 こうした新自由主義攻撃に対し、今回の労働法制改悪が体制内労組の存在すらも形骸化する攻撃であることから、労組間の共闘団体がつくられ、学生団体も加わって反対運動を開始した(CFDTは、法案の全面撤回ではなく部分的修正の立場で、参加していない。しかし、いくつかの加盟下部組織は統一行動に合流している)。
 今回の労働法制改悪は、大学生と高校生を直撃している。フランスはEU内でドイツに次ぐ「大国」だが、大恐慌で経済成長率が落ち込み(成長率は15年10--12月前期比で0・3%増)、失業率が10%を超え、とりわけ青年層(18〜24歳)では24%に及んでいる。非正規職の拡大とともに貧困が広がり、大学生の大半が低賃金・無権利の職場で働いている。
 青年たちは口々に「こんな法案では、私たちの未来はさらに大変なことになる」「職場に入れても、会社の言いなりにさせられてしまう」「長時間働かされ、しかもいつ首になるかも知れない」と語り、プラカードや横断幕には「若者は怒っている」「高校生・大学生は、労働者と団結して闘おう」「未来を決めるのは私たちだ」などと書かれている。

国際連帯闘争前進させよう

 オランド政権は昨年11月のIS襲撃に対して、報復と称してシリアへの空爆を開始し、国内に向けては非常事態を宣言し、国会承認のもと5月中旬までそれを継続させていた。非常事態下では、①令状なしの家宅捜査(夜間も含む)、②「不審人物」の自宅軟禁、③デモの禁止、④警察官の発砲の権限の拡大、⑤「テロリスト」の嫌疑による国籍剥奪(フランスには二重国籍者が400万人居住している)などが可能になる。こうした強権発動に労働者・学生が怒りを高まらせてきた。
 非常事態と対決し、労働法制改悪に反対して、労働者はストライキ(ゼネスト)を、学生(大学生・高校生)はバリストをもって闘う──まさに韓国・民主労総ゼネスト、動労千葉のCTS就業規則改悪粉砕闘争、京大バリストなどと共通の課題に直面しての、共通の立場での闘いである。階級的労働運動と国際連帯のさらなる前進へ!
(川武信夫)

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