「生前退位」は改憲攻撃だ 天皇制の危機と延命のあがき

週刊『前進』02頁(2766号01面03)(2016/07/21)


「生前退位」は改憲攻撃だ
 天皇制の危機と延命のあがき


 参議院選挙直後の7月13日、天皇アキヒトの「生前退位」の意向がNHKの「スクープ」として出され、マスコミが一斉に報道を始めた。皇室典範の改定とそのための「国民的議論」の必要が大宣伝されている。安倍政権が狙う秋の国会での憲法審査会の改憲論議の開始と一体の大攻撃だ。

安倍が準備し突然に大宣伝

 安倍政権は5月ころから官房副長官を中心に極秘チームを設置し検討を進めてきた。現行の皇室典範には定めがないとして、有識者会議を発足させて12月23日の天皇誕生日をめどに骨子案をまとめ、早ければ来年通常国会で皇室典範改定を含めた法整備を行うという。
 皇室典範の改定は改憲と一体だ。安倍は連合国軍総司令部(GHQ)占領下の1947年に皇籍離脱させられた旧皇族の子孫の皇籍復帰を主張し『文芸春秋』2012年2月号で「占領体制からの復帰という観点から特別立法の制定で皇族たるにふさわしい方々に復帰していただく」と強調した。まさに「戦後レジームからの脱却」だ。

天皇のもとにひれ伏す野党

 天皇の足元に日本共産党を始め全政党がひれ伏している。民進党の岡田克也代表は「政府が有識者による議論の場をつくり、答えが出た上で国会でも議論したい」と求めた。今年1月、天皇臨席の国会開会式に1947年以来69年ぶりに出席し、天皇の開会の言葉に起立し頭を下げて聞き入った共産党の志位和夫委員長は「ご意向は報道されているが……コメントは控えたい」と語り、反対すら表明しない。
 アキヒトは「高齢で公務を担いきれないから退位したい」と言う。現に内閣総理大臣や最高裁長官の任命、法律や条約の公布、国会召集などの国事行為とともに、膨大な公務をこなしてきた。宮内庁は5月9日、年間約100回に及ぶ拝謁(はいえつ)を見直し、全国の警察本部長や検事正、地方裁判所長、統合幕僚長、市町村議会議長との面会を取りやめ、小中学校長や、国連平和維持活動(PKO)派兵部隊との接見・拝謁を皇太子に引き継ぐと発表した。憲法第1条に天皇を置く日帝の統治機構の中心にまさに天皇があるのだ。
 アキヒトは沖縄、福島と被災地への訪問を続けアジア・太平洋の激戦地への「慰霊の旅」までした。「平和主義者」だからではない。血塗られた日帝の侵略と戦争への怒り、階級矛盾が火を噴きかねないところに出向いて火消しに回って歩いた。そうした公務が果たせなくなったから次に引き継がせたいと言っているのだ。だが、アキヒトがこうした政治的な発言や提言を行うこと自体が現行憲法に抵触する改憲攻撃そのものだ。
 安倍はこの天皇を持ち出して労働者の怒りと革命の危機を圧殺し、帝国主義としての国家統合を取り繕って、戦争と改憲に突進しようとしている。天皇制の本質である極めて暴力的な攻撃だ。

「1%」の支配倒す革命を!

 天皇こそ「1%」の支配階級の中心に存在している。その天皇制自体が皇位継承者問題を始め存続の危機を迎えている。アキヒトの「生前退位」はそのことへのすさまじい危機感でもある。だが大恐慌下で戦争と貧困の問題が社会全体を覆っている。労働者階級にとって、特権階級たる皇族と資本家階級が富をむさぼり肥え太ることなど許されない。改憲と天皇制の問題は日帝の統治の根幹にかかわる問題であり、支配体制のすべてをプロレタリア革命で打ち倒す時だ。
 87年国鉄分割・民営化に続く、89年昭和天皇ヒロヒトの「大喪の礼」と90年アキヒトの「即位の礼」を使った階級闘争圧殺の大攻撃は、革共同と労働者人民の90年天皇決戦で打ち破られた。国鉄闘争を基軸とする階級的労働運動と国際連帯の前進は世界革命の展望をこじ開けている。参院選決戦の地平の上に改憲阻止決戦の爆発をかちとろう。労組拠点建設を進め、ゼネストで改憲と労働法制大改悪を打ち破る1千万人の決起をつくり出そう。
(大迫達志)
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