警察による相次ぐ黒人射殺 全米で怒りが沸騰

週刊『前進』02頁(2766号02面03)(2016/07/21)


警察による相次ぐ黒人射殺
 全米で怒りが沸騰

(写真 警察による相次ぐ黒人の射殺に、ニューヨークのマンハッタンで抗議デモ【7月7日 アメリカ】)

 警官による相次ぐ黒人射殺に、全米で怒りと闘いが爆発している。
 7月5日、南部ルイジアナ州バトンルージュで、路上でCDを販売していた37歳の男性が警官に射殺された。銃を所持しているとの通報で駆け付けた2人の警官にタックルされ、地面に倒されたまま胸を5発撃たれて殺された。ルイジアナ州は銃を隠さずに携帯すること(オープンキャリー)が認められているが、このとき男性は手に銃を持っていなかった。それでも押し倒されて射殺された。
 翌6日、中西部ミネソタ州ミネアポリス郊外のファルコンハイツで、32歳の学校職員の男性が警官に射殺された。走行中の車の後部ランプが壊れていると停車を命じられ、運転席で免許証をポケットから出そうとした瞬間に4発の銃弾を撃ち込まれた。
 二つの事件とも現場の映像がインターネットで流され、警察に対する積もりに積もった怒りが全米で爆発した。ニューヨーク、シカゴ、ワシントンを始め各地で黒人を先頭に労働者人民の抗議デモが闘われた。
 こうした中で7日、テキサス州ダラスで、25歳の男性がデモ警備中の警察官を狙撃し5人を射殺した。男性は投降交渉中に「警官による発砲事件に怒っている」と語った。その後、警察はこの男性をロボットで運んだ爆弾を爆発させて殺害した。逮捕―裁判という手続きすら取らず、爆弾で報復的に殺害した。これは自国民に対する戦争的行為である。

激化する警察の暴力・迫害

 オバマ政権のもとで警察による黒人への暴力・迫害・虐殺は日常的に繰り返されている。今年も1月から7月6日までに、分かっているだけで558人が警察に殺された。毎年1000人、毎日3人が警察に殺されている。人口比では黒人が白人より数倍も犠牲になっている。殺されなくても暴行・迫害されたり、逮捕・投獄される黒人の数は多数に上る。アメリカ帝国主義はこのような日常的な暴力によってようやく維持されているのである。
 14年8月には中西部ミズーリ州ファーガソンで、18歳の黒人青年が無抵抗で白人警官にいきなり射殺された。この事件をきっかけに、住民の怒りが暴動となって爆発した。これに対して警察は機関銃や装甲車など軍隊並みの装備で鎮圧にあたり、州兵も動員された。青年を射殺した白人警官は、大陪審(犯罪を起訴するか否かを決定する機関)の審理で不起訴処分とされ、まったく罪を問われなかった。怒った黒人は再び暴動に立ち上がった。この対立が今日に至っている。
 アメリカで幾世紀にもわたって、黒人による差別撤廃・解放闘争が不屈に闘われてきた。だが、米帝の没落と大恐慌のもとで、黒人差別や移民差別・排斥は今日激化し日常化している。黒人労働者は新たな闘いに立ち上がっている。
 黒人を含む低賃金労働者の居住地域では、教育予算もまったく不十分であり、多くの低賃金労働者、黒人労働者の子どもたちが教育からも排除されてきた。
 現在、アメリカ全体の富の40%が上位1%の富裕層に集中する一方で、貧困と低賃金、失業の拡大、医療・社会保障の破壊が進んでいる。それに対する怒りと闘いを分断するために人種差別・民族差別があおられているのだ。その根底では階級矛盾・階級対立がとめどなく進行している。大統領選挙で共和党・民主党の2大政党の双方ともが矛盾と内部対立を深めているのも、米帝の伝統的支配が深部から崩壊しつつあることを示している。

米社会全体が内戦状態に

 オバマは白人警官による許しがたい黒人差別・迫害や射殺事件に、なんの対策も取ってこなかった。今回の事件が起きてもそうである。戦争で維持してきた国家は、国内でも戦争的・軍事的手段で人民を支配するしかない。警察は軍隊から払い下げられた機関銃や戦車・装甲車で武装し、暴力で人民を制圧している。支配階級は延命のために警察・軍隊へますます依存を強めている。戦争国家、警察国家としてどん詰まりの危機を深めている。階級支配が崩壊し、アメリカ社会全体が内戦状態に入っていると言って過言でない。
 人種差別、民族差別は帝国主義による労働者支配の手段である。その根底には、労働者階級と被抑圧人民の階級的団結に対する恐怖と憎悪がある。アメリカも完全に1930年代的な「戦争か革命か」の激動の時代に入った。労働者階級は不屈だ。アメリカ支配階級はプロレタリア革命の現実性におびえている。
 アメリカ労働者階級の闘いと固く連帯し、帝国主義による人種差別・民族差別を断じて許さず、連帯して闘おう。労働者階級の国際的団結、階級的労働運動の前進とプロレタリア革命こそ、勝利の道である。
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