大恐慌と世界戦争の危機をゼネスト―革命へ転化しよう 英EU離脱と戦後体制崩壊

週刊『前進』04頁(2769号04面01)(2016/08/01)


大恐慌と世界戦争の危機をゼネスト―革命へ転化しよう
 英EU離脱と戦後体制崩壊


 現下の世界大恐慌の歴史的発端となった2007年8月9日のパリバ・ショックから丸9年、08年9月15日のリーマン・ショックから7年11カ月が経過しようとしている。だが今次大恐慌とその継続としての大不況は、いささかも収束・解消しないばかりか、いよいよ「底なし」と言っていいほどに全面的に激化・深化している。しかも6月23日の国民投票でイギリスがEU(欧州連合)離脱を決定したことが、「戦後最大級の政治危機」として巨大な激震となり、大恐慌をいまひとつ歴史的全面的に激化させつつある。またそれが戦後体制を最後的に崩壊させ、世界戦争危機を激しく切迫させている。

1929年超える大恐慌の全面激化

 日米欧の帝国主義はこの間、①天文学的な規模の財政投入、②実質ゼロ金利や量的緩和を軸とする超金融緩和政策などの大恐慌対策を行い、③さらに日欧の中央銀行は前代未聞のマイナス金利政策にまで訴えているが、大恐慌の根底にあり新自由主義がそれをさらに促進・加速した過剰資本・過剰生産力の問題を、どうしても解決できない。
 それどころか今や日帝・安倍政権は、破滅的で荒唐無稽な財政投入策である「ヘリコプターマネー」なるとんでもない奇策も「選択肢」であると真顔で言い始めた。
 その上で、そもそも今次大恐慌が1929年大恐慌―30年代大不況とも歴史的に異なる点は、残存スターリン主義・中国の存在とその経済の「巨大さ」ということだ。
 中国は特に90年代以降、「世界の工場」「世界の市場」として過剰資本・過剰生産力の重圧にあえぐ日米欧帝国主義や韓国、台湾など新興国の延命を支え、それと一体的に発展しながら巨大化してきた。だがその過程で積み上げた製造業などの巨大な過剰設備・過剰生産能力の矛盾が、この数年来ついに爆発して経済の大失速・大減速へ突入した。
 29年大恐慌は、同年10月24日の「暗黒の木曜日」、10月29日の「悲劇の火曜日」を発火点とするニューヨーク証券取引所の大暴落から始まった。そして32〜33年を最大の底として「37年恐慌」(恐慌の中の恐慌)をはさんで10年間続き、結局は戦争経済化し第2次世界大戦へと突入することで、過剰資本・過剰生産力の岩盤を暴力的に破壊した。

アベノミクスの無残な破綻

 1930年代の米経済の成長率は平均1・3%だった(『大収縮』日本経済新聞社)。それと比較しても今次大恐慌は、基軸帝国主義の米経済がドルの基軸性を武器にかろうじて2%前後のGDP(国内総生産)成長率を維持しているものの(その米経済も14年1〜3月期にはマイナス成長に転落した)、日欧帝国主義は基本的に1%台か小数点以下、またはマイナス成長に沈んでいる。「アベノミクス」の3年間でマイナス成長が5四半期、平均成長率はわずか0・7%でしかない。
 いくら財政投入し、量的金融緩和やゼロ金利、マイナス金利政策に訴えても、資本主義・帝国主義の市場はすでに過飽和状態で、供給に対し需要が増えないばかりか逆に減少し、黒田日銀の「2年で2%」なるインフレ目標もいつまでたっても達成できない。それほど過剰資本・過剰生産力の問題は深刻なのである。
 この大恐慌という現実を基底に、戦後世界体制は基本的に解体し、ソ連崩壊を引き継ぐプーチンのロシアや中国スターリン主義の対抗的積極的な動きを含め、今や帝国主義間・大国間の生き残りをかけた争闘戦、すなわち超金融緩和による為替戦争(通貨安競争)や、市場・資源・領土・勢力圏をめぐる争奪戦がいよいよ激化している。
 こうして今や大恐慌は、とりわけ東アジア・朝鮮半島、中東・シリア、ウクライナという世界3正面において、侵略戦争・世界戦争爆発の危機へと転化し始めている。南中国海をめぐる米日帝国主義と中国スターリン主義の戦争的対峙・対決も重大情勢だ。
 しかし他方では、大恐慌下の戦争、失業、非正規化、貧困など労働者階級の「生きていけない」現実に対する怒りが、韓国、フランス、ブラジルなどを先頭に、バリケードストやゼネスト、大規模デモとして全世界で爆発している。それは1930年代や戦後革命期に続く完全なゼネスト情勢・革命情勢だ。資本主義はもう終わった。大恐慌と世界戦争危機をゼネスト・世界革命勝利へと転化するために闘おう。

「連合王国」分裂とEU解体の始まり

 6・23の国民投票によるイギリス帝国主義のEU離脱決定は、資本主義の終焉(しゅうえん)であり、新自由主義的帝国主義の総破綻の帰結である。同時にソ連スターリン主義の崩壊以降も延命してきた戦後帝国主義体制の最後的解体を示す歴史的事態だ。

イギリス社会の分裂は深刻

 国民投票の結果は、イギリス社会における地域間、階級・階層間、世代間の分断・分裂の深刻さを突き出した。具体的には、①離脱支持が多数のイングランド、ウェールズと残留派が大きく上回ったスコットランド、北アイルランド、②6割近くが離脱を支持した労働者(いわゆるブルーカラー)と、逆に約6割が残留を望んだ専門職・事務職(ホワイトカラー)や富裕層、③さらに6割近くが離脱に投票した65歳以上の高齢層と、7割以上の多数が残留を支持した18〜24歳の若年層という、分裂・分断状況だ。
 だが以上の点をより階級的に見ると、特に労働者が住民の多数を占めるイングランド北部や東部(ここはイギリス有数の農業地帯でもあり、以前はグリムズビーなど世界最大級の漁港もあった)が、EU離脱票の中心を形成した。すなわちドイツ主導のEUと、サッチャー以来の英政府の新自由主義政策への労働者や農民・漁民などの怒りが、「政府はロンドンの金持ちばかり見て、俺たち労働者をないがしろにしている」「EUが街の漁業をだめにした」などの怒りとなり、「反EU・反移民」として噴き出したのである。
 もちろんそこには、米ウォール街と並ぶ国際金融センター=ロンドンの「シティー」が、実は離脱派の最大のスポンサーであるという「ねじれ」や矛盾もはらまれている。だが、労働者人民のEUと新自由主義への怒りが離脱の根底にあることは明白である。

離脱の衝撃が大恐慌に波及

 英のEU離脱交渉は、今後2年におよぶ相互に厳しいバトルとなる。しかしすでにリーマン・ショックを超える離脱の政治的大衝撃は、大恐慌をより激化・深化させている。ショックの第1波はポンドとユーロの急落や日米を始めとする株価暴落として襲い、第2波は英不動産ファンドの解約増とそれに対する5割以上の市場凍結、イタリアの銀行の約3600億ユーロ(約40兆円) もの不良債権とその焦げ付き問題として爆発した。
 さらに今後も経済・金融の激震は続く。英経済のさらなる産業空洞化と衰退、金融街シティーの地盤沈下、外国企業の引き揚げ、3〜5%と言われる英GDP成長率の悪化も不可避であり、ポンドの急落(対ドル、対円で1〜2割)を突いて英企業や不動産を外国マネーが買収する動きも始まった。そもそもEUから離脱して、イギリスが今後もEUとの間で自由貿易などのメリットを確保したいというのは虫のよすぎる話でしかない。
 またEUにとってもドイツに次ぐ第2の大国が抜けるのは大打撃で、それでなくても危機が深い欧州経済は、すでに一段のデフレ・大不況へ追いやられ始めている。

「これは第3次世界大戦だ」!

 さらに重大な問題は、経済にとどまらず政治的・体制的な大激変だ。
 第一は、「連合王国」としてのイギリス帝国主義の分裂と解体、スコットランドや北アイルランドがイギリスから「独立」する可能性である。英帝国主義が「リトル・イングランド」化しかねないと、キャメロン前首相などはすでに危機感を吐露している。
 第二は、イギリスの離脱はEU解体への序章だということだ。今回の「最大の敗者はメルケルのドイツだ」と言われる。イギリスはユーロにも、EU内では国境審査なしで自由に出入国できる「シェンゲン協定」にも参加していないが、「特別の地位」を与えられてきた。それは、北米やアジア市場に匹敵する巨大な経済ブロックとしてイギリスの存在は大きな重しでもあったからだ。そのEU離脱はフランスなど加盟各国で「反EU」の遠心力を加速する。ドイツ主導への反発も存在し、6・23はEU解体の序曲となる。
 第三は、米英同盟という戦後帝国主義体制を牽引(けんいん)してきた「特別の関係」がさらに綻びを拡大するということだ。イギリスがシリア軍事介入を見送ったり、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加したりと、米英関係はきしんでいる。それがEU離脱でいよいよ激しく進行し、戦後体制を決定的に解体させる。
 テレビニュースで離脱派のあるリーダーが、「これは銃は撃っていないが第3次世界大戦だ。ドイツがヨーロッパを支配しようとしている」と叫んでいる。まさに英EU離脱は、戦後体制の崩壊であり、それが世界戦争に転化していく歴史的事態だということだ。

米経済と中国経済の深刻極まる危機

 米経済は「7年もの景気拡大局面が続く」などと称されている。だが個人消費も設備投資も低迷し、実体経済は完全に「減速」「低成長」状態だ。16年のGDP成長率は1・9%止まりで、1990〜07年の平均3%を大きく下回る。年初からのドル高が米の逆風ともなり、伊勢志摩サミット(G7)の底流では日米間の為替戦争が激化していた。
 現在、ニューヨーク市場のダウ平均株価が時ならぬ最高値へと上昇しているのは、EU離脱のイギリスや欧州から逃げ出している投機マネーが原因である。鉄鋼大手USスチールはオハイオ州で労働者300人を解雇した。米製造業の衰退は止まらない。労働市場が最も「流動化」され、景気次第でいつでも解雇されるアメリカで、毎月発表される雇用統計にFRB(米連邦準備制度理事会)は一喜一憂し、昨年12月に実質ゼロ金利からわずか0・25%引き上げた金利も後が続かず、年内はもう無理という危機的事態となっている。

アメリカ社会の危機的現実

 「地球上で最も裕福な62人が、世界の人口の半分の下層の人たち約36億人の合計と同じくらいの富を所有している」「この15年間に米国では、6万カ所近くの工場が閉鎖され、製造業で480万人以上の高給の職が消えた」「実に4700万人近い米国人が、貧困に陥っている。医療保険に入っていない人は推定で2800万人……何百万もの人びとが、法外な額の学費ローンに苦しんでいる」「米国ではいまや上位0・1%の人びとが、下位90%の人びとの合計にほぼ相当する富を所有している」。民主党の大統領候補をクリントンと争ったサンダースは、「グローバル経済」の実態を6月29日のNYタイムズで以上のように弾劾している。これが今のアメリカ社会の現実だ。
7月7日にテキサス州ダラスで起きた黒人青年による警官銃撃事件(5人死亡、7人負傷)は、警察による人種差別の激しさと黒人殺害事件続発に対する根底的怒りの爆発である。それは米社会の階級矛盾・階級対立の非和解性をも示し、それがすでに内戦的事態に突入していることを突き出した。また不動産王・トランプが米共和党の大統領候補となり、「アメリカ第一」などと叫んでいるのは、米帝の体制危機の深刻さの象徴だ。

中国の巨大な過剰生産能力

 残存スターリン主義・中国の経済の最大問題は、鉄鋼、石炭、造船、自動車を始め、ほとんどすべての産業・企業と不動産などの巨大な過剰設備・過剰生産能力の問題である。それを基底に、2014年の夏以降、不動産(住宅)バブルが全面崩壊し、さらに15年6月中旬以降には上海株式バブルが崩壊して、世界第2位の巨大な中国経済は大減速・大失速の過程が本格化した。全製造業が平均3割もの過剰生産能力にあえいでおり、鉄鋼などは日本の年間粗鋼生産量の実に4倍にあたる4億㌧以上が過剰となっている。
 李克強首相は「ゾンビ企業の淘汰(とうた)」を叫び、企業再編も始まっている。だが工場の生産停止や閉鎖で、膨大な労働者の解雇や自宅待機、賃金未払いが各地で起こっており、過剰設備の抜本的な整理は簡単には進んでいない。さらに株価は4割下落のまま低迷し、政府が買い支えている。通貨・人民元も下落が続き、中国人民銀行が元買い介入をしている。
 さらに固定資産投資は国有企業が公共工事を受注して支え、自動車販売などの個人消費は小型車やエコカー向けの減税、補助金でかさ上げが図られている。それが前年同期比6・7%増で横ばいという、16年4〜6月期のGDP成長率をかろうじて支えている。
 また企業の過剰債務が深刻で、総額は中国のGDPの1・6倍にも達する。さらに銀行の不良債権が膨らみ、その残高は1兆3900億元(約22兆円)と公表されている。しかし実態はもっと悪くて、IMF(国際通貨基金)の報告書ではその約9倍に上る。
 鉄鉱石は世界の総輸入量の3分の2が中国向けだ。その中国の大減速は資源価格を下落させ、オーストラリア、ブラジル、ロシアなどの資源国を直撃している。中国の最大の貿易相手はEUだが、6月のイギリス向け輸出はEU離脱の影響を受け、前年同月比8・8%の減となった。輸出全体も1〜3月が9・6%減、4〜6月が7・7%減である。
 中国の労働者階級人民は、スターリン主義体制と帝国主義資本の抑圧・弾圧に抗し、年間10万件ものスト、デモ、暴動に決起している。それを一つの要因として、労働者の賃金・人件費はこの10年で2〜3倍から10倍に上昇した。そのため日本などの外国資本は「チャイナプラスワン」と称して、より低賃金の東南アジアやインドに生産拠点を移し、搾取・収奪を極限的に強めてきた。
 7月1日のバングラデシュ・ダッカ事件は、日本をはじめとした帝国主義・新自由主義の侵略・搾取への怒りの爆発だったのだ。

日帝デフレ大不況は世界最悪レベル

 安倍は参院選後の会見で、「経済最優先」「デフレからの脱却速度を上げる」「アベノミクス再起動」なるものを強調した。安倍の最大のテーマは改憲だ。しかし安倍は今、改憲を真正面に掲げて突っ走れない。日本の階級情勢と経済危機がそれを許さないからだ。今や新自由主義も「アベノミクス」も総崩壊し、日帝経済は世界最悪状態にある。
 IMFは7月19日、世界経済見通しで日本経済の成長率を16年は0・3%、17年は0・1%と発表した。ユーロ圏がそれぞれ1・6%、1・4%、アメリカが2・2%、2・5%であるのと比べ、日帝の成長鈍化は際立っている。安倍とブルジョアジーが特に「デフレ脱却」を叫ぶのは、経済が長期大不況にあえいでいるからだ。
 実際、大恐慌下での日本経済の成長力の低下はすさまじい。日銀の推計でも潜在成長率はわずか0・2%でしかない。アベノミクスの象徴である黒田日銀の「2年で2%」なるインフレ目標は、すでに3年以上たつが達成にはほど遠い。生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)前月比は、15〜16年とゼロ近辺かマイナスに沈んでいる。生鮮食品や保険料や公共料金は上がっても、企業物価を始め基礎的な物価動向は冷えきったままだ。
 「異次元」の金融緩和で黒田日銀は、毎年80兆円もの国債を民間金融機関から買い戻して、市場への資金供給量(マネタリーベース)を増やしてきた。その額は6月末で当初の2・7倍=403兆円に大膨張したが(GDPの8割! 米やユーロ圏は2割程度)、物価はまったく上昇しない。前代未聞のマイナス金利に訴えても同じことだ。この根底には過剰資本・過剰生産力があり、需要が供給に対応できない大ギャップが存在する。

労働力人口と賃金の減少!

 さらにデフレと成長率鈍化・長期大不況を規定する特筆すべき重大要因がある。
 第一は、15歳〜64歳の生産年齢人口(労働力人口)の激しい減少だ。生産年齢人口=労働力人口は実際に社会の労働・生産を担うと同時に、最も消費が旺盛な現役世代である。その肝心な世代の人口が、1995年の8716万人をピークに減少に転じ、16年4月段階では約7600万人と、1100万人以上も減っているのだ。これは単なる自然現象でも「少子高齢化」でもない。1980年代以降、すでに30年以上も新自由主義とその政策がはびこってきた結果である。新自由主義は労働者が結婚し、子どもを生み、育てる道を奪い、労働力の生産・再生産を不可能化し、資本主義の足元を掘り崩しているのだ。
 安倍が「有効求人倍率は高水準」「雇用は改善している」と宣伝している背後には、一方で非正規職化の拡大があると同時に、他方での労働力人口の減少、その結果としての労働力不足という現実があるのだ。そもそもこうした資本主義崩壊という事態は、新自由主義のもとで、すでにドイツ、中国、韓国など全世界で起きている現象なのである。
 第二は、日本の労働者階級の賃金が1997〜98年をピークに傾向的に減少し続けてきたことである。厚生労働省のデータでは、97年(非正規化率23%)を100として、2015年(非正規化率38%)の全産業の平均賃金は実に87だ。また国税庁の調査では、日本の労働者の平均年収は97年の467万円をピークに下落を続け、09年に406万円、10年に412万円、11年は409万円と、激しく減少している。さらに最近の厚労省のデータでは、15年の実質賃金は前年比0・9%減、5年連続のマイナスだ。
 連合指導部が闘わず、安倍の「官製春闘」で若干賃上げしたと言っても、この賃金の傾向的減少という大勢にはほとんど影響していない。労働者にとって賃金は消費の原資だ。それが賃下げと非正規化でこれだけ減少すれば、「デフレ脱却」などあり得ない。
 安倍・黒田の超金融緩和による「円安・株高」で、トヨタなどの大企業は過去最高の収益を上げた。しかしそのもうけは、設備投資にも賃上げにも向かわず、大企業は収益を内部留保=利益剰余金(366兆円)や現預金(250兆円)としてため込み、主要に株主還元、自社株買い、M&A(企業合併・買収)へと振り向けてきただけで、GDPの成長にはならなかったのである。

改憲と労働法制の大改悪を狙う安倍

 全面的に激化する大恐慌と世界戦争危機、ゼネスト・革命情勢、そして新自由主義とアベノミクスの総破綻の中で、これから安倍政権がやろうとしていることは何か。
 第一は改憲と戦争である。安倍は改憲で米英仏並みに戦争のできる国家を造ろうとしている。第二は「デフレ脱却」を叫び、大々的な財政投入に踏み切ることだ。その象徴が「ヘリコプターマネー」である。第三は「1億総活躍」や「働き方改革」を唱え、戦後労働法制を全面的に改悪・解体することだ。安倍との大決戦がこの夏・秋から始まる。
 あたかもケインズ主義に先祖返りしたかのごとき「第二」の財政投入は、10兆円どころか20〜30兆円にも膨らむ勢いで、安倍は「財政を最大限にふかす」とうそぶき、建設国債のみならず「財政投融資」などまで総動員して、どん底の景気を刺激しようとしている。盟友=葛西敬之(JR東海名誉会長)のリニア中央新幹線の完成前倒しには3兆円もの財投資金を充てると言う。
 しかし世界最悪の財政赤字で財源などどこにもない。そこで検討しようとしているのが「ヘリコプターマネー」だ。具体的には「元利払い不要の無利子永久債」を発行し、それを日銀に引き受けさせる。だがこんなことは財政法や日銀法も改悪しなければ不可能であり、財政規律は破壊され国債も暴落していく。

反労働者的な「働き方改革」

 「働き方改革」をキャッチフレーズにした「第三」の労働法制大改悪は、改憲と並ぶ安倍政権とブルジョアジーの大攻撃だ。それは労働基準法などの戦後労働法制の抜本的解体であり、「労働市場の流動性を高める」などと称して、労働者を非正規や「限定正社員」で資本の必要に応じて雇用し、搾取し、いつでも解雇できるようにする攻撃である。
 その第一の焦点となっているのが、「高度プロフェッショナル制度」「労働時間ではなく成果で賃金を払う脱時間給」なるもので、その実態は労基法改悪による「残業代ゼロ法」「過労死促進法」である。第二が「金銭解雇」制度の導入で、これは「解雇自由」の攻撃そのものだ。
 第三は「同一労働同一賃金」をめぐる攻防である。これは「正規と非正規の賃金格差をなくす」というようなものでは断じてない。安倍やブルジョアジーの言う「同一労働同一賃金」とは、戦後の一時期、日経連が「生活給」に対抗して導入しようと図り、結局はできなかった「職務給」がベースである。それは終身雇用や年功賃金制を最後的に解体・一掃し、正規職ゼロ=総非正規化により正規職の賃金を非正規並みに引き下げて「格差をなくす」というとんでもない攻撃だ。
 そしてまさに現在進行中の第四の焦点こそ、改悪派遣法や労働契約法第18条(有期労働契約の無期契約への転換)を悪用した、「3年」あるいは「5年」ごとに労働者を全員解雇し、試験で再雇用か否かを決めるという、国鉄分割・民営化級の大攻撃である。
以上はすべて、労働者の団結破壊、労働組合破壊の新自由主義攻撃だ。

終わりに

 最末期帝国主義の絶望的延命形態である新自由主義は総破産し、帝国主義の戦後体制も崩壊した。資本主義は終焉した。大恐慌は世界戦争へ転化しつつあり、同時にトルコの軍隊反乱なども含めて世界は革命情勢だ。参院選決戦の勝利の地平を引き継ぎ、16年11月集会に向けて改憲絶対阻止、労働法制大改悪粉砕を闘おう。階級的労働運動と国際連帯を壮大に発展させ、ゼネストとプロレタリア革命で労働者の歴史的勝利を切り開こう。
(城戸通隆)
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