米日韓の朝鮮戦争切迫 サードを配備 釣魚島と南沙諸島 米日と中国の軍事対立激化

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週刊『前進』04頁(2773号01面02)(2016/08/22)


米日韓の朝鮮戦争切迫 サードを配備
 釣魚島と南沙諸島 米日と中国の軍事対立激化

(写真 「韓半島のどこにもサードはいらない」と叫びデモする民主労総【8月15日 ソウル】)

破壊措置命令恒常化を決定

 7月に在韓米軍への高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD=サード)配備が決定されて以降、朝鮮半島をはじめ東アジア全域で軍事的緊張が高まっている。8月3日に発足した第3次安倍再改造内閣で、安倍が極右・核武装論者の稲田朋美を防衛相に起用するという挑発的人事を強行したことが、この緊張を極度に激化させている。
 北朝鮮・キムジョンウン政権は3日朝、中距離弾道ミサイル「ノドン」を2発発射し、うち1発が日本の排他的経済水域内に落下した。米韓によるTHAAD配備の決定、さらには今月下旬から予定されている米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」に反発したものだ。昨年来、米韓連合軍が北朝鮮への先制攻撃と体制転覆を狙う全面戦争計画=「作戦計画5015」を策定し、その実行を想定した戦力配備や史上最大規模の軍事演習などを繰り返してきたことが、北朝鮮を絶望的で反人民的な対抗措置へと追い詰めているのだ。
 さらに米軍は、今月6日に超音速爆撃機B1Bを、9日にステルス戦略爆撃機B2をグアムのアンダーセン空軍基地に新たに前進配備した。防空レーダー網を無効化できるB2は「北朝鮮が最も恐れる戦力」と言われ、両機がグアムから同時に出撃すれば2〜3時間以内に40発もの核爆弾を朝鮮半島に投下できると言われる。これ自体が恐るべき戦争挑発だ。
 他方で日帝・安倍政権は5日、今回の「ノドン」発射を受け、今後は防衛相による「破壊措置命令」を常時発令した状態にすることを決めた。これによりイージス艦や地上配備型迎撃ミサイルPAC3が常時展開されることになった。
 だが、そもそも事前に発射時刻や飛行コースを知らされていたとしても、弾道ミサイルをPAC3で撃ち落とすことなど物理的に不可能なのであり、それは常時発令状態にしても同じことである。安倍・稲田の真の狙いは、「ミサイル迎撃」を口実に日本全土を365日臨戦態勢下に置くとともに、イージス艦や迎撃ミサイルなどの軍備増強を進めることにある。
 米中、日中の対立と軍事的緊張も激化している。8月5日から9日にかけて、中国の公船・漁船が計28回にわたり釣魚島(尖閣諸島)沖の接続水域に入ったとして、外務省が駐日中国大使を呼んで抗議した。だがそもそも釣魚島は、日帝が日清戦争(1894〜95年)を通じて強奪したものであり、それを「固有の領土」などと主張すること自体が本来許されないことだ。
 他方で中国・習近平政権は、中国空域をレーダーの範囲内にとらえるTHAADが在韓米軍に配備されることに猛反発し、今月1日に東中国海で艦艇100隻以上と多数の軍用機を動員した大規模な実弾演習を実施するなど海洋軍事戦略をエスカレートさせている。

米ランド研が米中戦争叫ぶ

 こうした中、米国防総省の委託を受けたアメリカの有力シンクタンク・ランド研究所が、『中国との戦争―考えられないことを通して考える』と題する重大な報告書を公表した。アメリカ大使館ホームページに掲載されており、事実上の政府公式見解ともいえる。
 報告書は、米中戦争を「ありえないことではない」とし、「多くの地域紛争で米中は対立しており……衝突時にはやられる前にやる——先制攻撃になる」と論じた上で、「日本の軍事活動の拡大は作戦に大きな影響を及ぼしうる」と日帝・自衛隊の同盟軍としての役割に期待を示している。まさに米日帝の新たな戦争宣言というべきものだ。
 南中国海・南沙諸島をめぐる中国と米帝などの軍事対立も一触即発の情勢となっている。
 日本とアジア、そして世界の労働者人民の団結した闘いで新たな戦争―世界戦争を絶対に阻止しよう。そのために11月全世界共同行動の歴史的成功をかちとろう。
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