埼玉新採教員解雇撤回裁判 請求棄却の不当判決 〝闘いはこれから〟と控訴

週刊『前進』04頁(2773号02面03)(2016/08/22)


埼玉新採教員解雇撤回裁判
 請求棄却の不当判決
 〝闘いはこれから〟と控訴


 埼玉の中学校の新規採用教員に対する分限免職処分の撤回を求める裁判で、さいたま地方裁判所民事第5部(針塚遵裁判長)は7月29日、原告の請求を棄却する不当判決を言い渡した。絶対に許せない。原告とともに解雇撤回を求めて闘ってきた一般合同労組さいたまユニオンの不当判決に対する弾劾声明を転載します。(編集局)

新採教員解雇撤回裁判不当判決を徹底的に弾劾する!

 7月29日、一般合同労組さいたまユニオンのS組合員が求めた解雇撤回裁判の判決で、さいたま地方裁判所民事第5部(針塚遵裁判長)は請求を棄却する暴挙を強行した。さいたまユニオンは、満腔(まんこう)の怒りでこの棄却を弾劾し、断固闘うことを宣言する。
 2013年4月に埼玉の中学校に新任教員として赴任したS組合員は、夏休み明けから度重なるパワハラ・退職強要を校長、同僚教員、市教育委員会・県教育委員会から受け、悩んだ末、14年2月にさいたまユニオンに加盟し、退職強要との闘いに立ち上がった。県、市教委との団体交渉で不当な退職強要を徹底的に弾劾したが、県教委は3月31日付でS組合員を免職処分にした。県教委はその上、「免職者の教員免許取り上げ」を通告してきたが、組合の激しい抗議で前代未聞の免許取り上げは撤回せざるを得なかった。
 あまりに不当な免職処分に対し、S組合員は、14年8月、解雇撤回を求めてさいたま地方裁判所に提訴した。
 今回の請求棄却の判決は、最初から「免職ありき」の政治的結論を持った上で、その結論を引き出すために物語を作るという裁判ならざる裁判といえるものだ。
 驚くべきことに法廷で、免職処分の根拠となるはずの指導記録は、「そのような記録は破棄して存在しない」と校長や指導教諭は証言せざるを得なかった。県教委が提出したのは、免職を決定した後に、免職処分を正当化するために県教委がまとめた文書である。原証拠となるはずの指導記録がないことが明らかになったにもかかわらず、判決は、この点については一切触れず、免職決定後に県教委がまとめたねつ造文書を丸ごと「正しい」と認定した。ねつ造文書をまるごと事実だと認定したために、判決は、県教委のねつ造文書が「2年4組」という存在しないクラスのことを書いているという歴然たる過ちをそのまま「事実認定する」というズサン極まりないものだ。
 原告側の主張を一切検討すらせず、県教委の結論をそのまま採用するデタラメな判決で不当解雇が正当化されてたまるか! 絶対に許すことはできない。
 新採教員は教育公務員特例法により、条件付採用期間が1年間とされているが、06年の中央教育審議会答申「教員免許更新制」「不適格教員の排除」とともに出された「条件付採用制度の厳格な運用」以来、この1年間の条件付採用期間に、毎年全国で300人以上の新規採用教員が退職に追い込まれている。「教員になりたい」夢を打ち砕かれ、パワハラに追いつめられて自死に追い込まれた新採教員も多数生み出されている。
 退職強要を受けてやむなく退職し、正規教員への道を奪われた後、臨時教員として現場に立つ教員も増加の一途をたどっている。埼玉県は学校現場における非正規教員の割合が沖縄県に次いで全国2位の高水準が続いている。条件付採用制度による退職強要や非正規教員の激増こそ、中曽根以来の新自由主義教育攻撃の核心である。学校現場は正規、非正規の分断によって、教育労働者の団結が徹底的に破壊され、教員の過重労働とダブルワークやトリプルワークの教員が激増している。
 今回の判決は、新自由主義教育の破綻的現実を是認し、安倍政権が進める「解雇自由」の労働法制改悪の先鞭(せんべん)をつける超反動判決である。教育労働者の団結を破壊し、戦争と改憲にひた走る安倍政権の政策に「従順な」教育労働者をつくり上げることを推進する判決だ。
 原告と弁護団、さいたまユニオンは、断固、控訴して闘うことを決定した。解雇撤回闘争は第2ステージに突入する。闘いはこれからだ! さいたまユニオンは断固闘い抜く。全労働者の解放へ向け、ともに闘うことを誓います。勝利目指して、団結!
 2016年7月29日
一般合同労組さいたまユニオン執行委員長
田畑 典保

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条件付採用制度 公務員を採用後、「適格性を見極め」免職できるとする制度。正規雇用の公務員全員に適用。条件付採用期間は6カ月だが、教育公務員は1988年に1年に延長された。

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