暴かれた避難計画の空論性 8・27高浜原発避難訓練の実態

週刊『前進』04頁(2781号03面03)(2016/09/19)


暴かれた避難計画の空論性
 8・27高浜原発避難訓練の実態


 8月27日に強行された高浜原発の3府県(京都、福井、滋賀)合同避難訓練に先立ち、NAZEN京都、NAZEN関西は地元の労組・学生とともに京都府庁へ中止の申し入れ行動を行いました(本紙第2777号参照)。避難訓練中止・原発即時廃炉の立場から、今回の避難訓練の問題性を明らかにします。
 避難訓練を強引に推し進めようとする背景には安倍政権の焦りがあります。安倍は朝鮮戦争切迫情勢と世界大恐慌の中で階級的労働運動の拠点を根絶やしにできないまま、原発再稼働を強行し、核兵器保持の宿願に向けて突進しようとしています。
 さらに、原発再稼働と避難計画は、自治体労働組合の解体と民営化を推進する攻撃としてかけられています。地元の労働組合が避難訓練に反対しているにもかかわらず組合員を業務に充てる当局のやり方は、組合の団結破壊です。また京都府は、避難訓練の会場設営と運営、一部の業務を民間委託しました。避難訓練を通して「住民の安全を確保する」と言いながら、その実態は民間会社への丸投げなのです。
 原発事故を前提とする避難計画と訓練自体が絶対に受け入れられないものです。地域と労働者の分断をはかり、自治体労働者に被曝労働を強制することなど、断じて許されません。
 3府県合同避難訓練は原発30㌔圏内(図)に入る住民が県外に避難する初めての政府直轄の広域避難訓練でした。住民約7千人と国や京都府等の関係機関の1500人が参加しましたが、その大半が自治体労働者です。

訓練はアリバイづくり

 今回の避難訓練の批判点は三つあります。
 第一に、住民の命の軽視です。福井県の内浦半島の根元に高浜原発が設置されているため、その先の住民(約140人)の避難など空論であることがあらためて突き出されました。行政自らが「避難道路となる(舞鶴市側の)府道は災害時に崩れる」と明言しており、住民の安全は最初から計画にはないということです。
 訓練当日も悪天候で住民をヘリや船で避難させる訓練は中止となり(そもそも震度6弱以上の地震と津波を想定した訓練であるのに)、当日の小雨と毎秒5㍍の風ですら海上避難訓練を〝断念〟しました。新聞等でも酷評されたとおり「訓練をした」という既成事実、アリバイをつくるためだけの訓練であり、避難計画がペテンであることが暴き出されました。

被曝労働強制の「計画」

 第二に、自治体職員の動員の前提となる災害対策等の規定がなんら整備されておらず、動員体制もまったく不明瞭であり、任意で一部の職員が動員されるという分断を持ち込んだことです。
 最大の攻撃は、自治体労働者をはじめ防災業務従事者への被曝労働強制の「訓練」を強行したことです。今回、放射性物質放出エリアで活動するモニタリング要員の被曝管理線量の1日累計値を10㍉シーベルトに設定しようとしていました。現在の上限である年間1㍉シーベルトの基準をはるかに超える線量です。現在は労働組合が先頭に立った被曝労働拒否の闘いの中で、「年間1㍉シーベルト」基準とせざるを得ない状況を強制していますが、被曝労働をめぐる攻防は依然として続いています。
 また、スクリーニング(放射能汚染検査)の場所に移動するバス等の除染作業が1台につき平均8分かかり、多くの車両が集まった場合スムーズにできないことが証明されたのです。
 先日の台風10号により岩手県の高齢者施設で9人が死亡した事故を見れば明らかなように、「避難弱者」と言われる高齢者や障害者は、原発事故が起こっても実際には避難など不可能だということです。岩手や福島第一原発事故では、施設や病院の民営化で人員が極限的に減らされる中、「助けたくても助けられない」状況を強制されており、避難できなかったのです。

自衛隊投入し戦争訓練

 第三に、避難訓練での自衛隊の投入を徹底的に弾劾します。4月の熊本大震災で安倍政権はオスプレイや艦艇など自衛隊の大規模な投入を行い、治安訓練=戦争訓練として位置付けました。今回の訓練では、化学兵器の対テロ専門部隊である陸上自衛隊第3特殊武器防護隊と第7普通科連隊(福知山)が避難住民や車両に対するスクリーニングと除染作業を行っています。これは戦時における自衛隊主導の活動をスムーズに進めるための訓練であり、自衛隊のもとに自治体労働者も協力させ組み敷くものです。さらに自衛隊や警察のもとに地域住民を屈服させ協力させていく治安訓練です。
 避難訓練は原発再稼働と原発政策を進めるためのものであり、労働者住民とは非和解です。日本共産党のいう「完璧な」避難計画と訓練は、自治体労働者に対して、被曝を前提に「住民のために働け」と叫ぶものにほかなりません。労働組合の団結を基に被曝労働拒否のストライキを闘い、労働組合の闘いが自身と住民の命を守る立場を鮮明にしよう。
 11月国際共同行動に向けた闘いと原発再稼働阻止の闘いは一体です。ゼネストと被曝労働拒否を国際的なスローガンと闘いに押し上げていこう!
(京都 朝霧広巳)
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