都心を超低空で飛行する羽田新ルートを撤回せよ 戦争・改憲の安倍と小池都知事を打倒しよう

週刊『前進』02頁(2784号01面03)(2016/09/29)


都心を超低空で飛行する羽田新ルートを撤回せよ
 戦争・改憲の安倍と小池都知事を打倒しよう




 国土交通省は2020年東京オリンピック開催までに羽田空港(東京都大田区)の国際線発着枠の拡大を狙い、都心を超低空で飛行する新ルートを設定しようとしている。膨大な人びとが暮らす密集市街地、石油コンビナート上空を航空機が超低空で飛ぶことは安全破壊以外の何ものでもない。航空労働者の命は常に危険にさらされる。ルート下の人びとは日常的にすさまじい騒音、排気ガス、落下物の危険と隣り合わせとなり、生活が破壊される。これほどの重大ででたらめな計画をほとんどの人びとに正確に知らせないままに強行しようとしている。

国際線発着数が1・7倍に

 特別区長会(東京都23区長で構成)が7月末に了承を伝えたことも受けて、国交省は20年の羽田新ルート実現へ突き進もうとしている。国際線の発着数を現在の年6万回から9万9千回、1・7倍に増やすため、以下の飛行ルートを新規につくるというものだ。
 ①南風が吹いた場合の着陸機(午後3〜7時)。着陸機は埼玉県を通り東京23区を北西から南東方向に縦断する。練馬、中野、新宿区上空を次第に降下し渋谷、港、目黒、品川、大田区では東京スカイツリー(634㍍)より低く飛び、爆音地域となる。
 滑走路から約6㌔離れたJR大井町駅(品川区)では上空305㍍となり屋外で約76〜80デシベルの騒音が発生する。パチンコ店内や、走行中に窓を開けた地下鉄車内の騒音が約80デシベルとされる。午後3時から午後7時の間、1時間に90便が飛ぶ。
 ②南風が吹いた場合の離陸機(午後3〜7時)。滑走路を南西方向に飛び立った離陸機は、これまで危険地帯として飛行が制限されていた神奈川県川崎市の石油コンビナート上空を飛ぶ。
 川崎市川崎区は騒音が約71〜80デシベルとなる。
 ③北風が吹いた場合の離陸機(午前6〜10時半、午後3〜7時)。滑走路を北東方向に離陸し、江東、江戸川区から荒川を北上し、葛飾、墨田区上空を通過する。
 このように新ルートは着陸、離陸ともに「陸から入り、陸へ出る」ものだ。現在は「海から入り、海に出る」という大田区との取り決めにのっとった運用がされている。空港周辺での事故や騒音への住民の怒りと闘いを背景に、1973年に大田区議会が行った空港撤去要求決議が契機となって滑走路の沖合移転が行われた経緯があるからだ。江戸川区も71年に爆音をもたらす飛行ルートの撤回をかちとった。それも新ルートでほごにされ、大転換される。

事故の危険と騒音や落下物

 最大の問題は安全破壊である。航空機の離陸後3分と着陸前8分は「魔の11分間」と呼ばれ、最も事故が起きやすい。11年から14年に死亡者の発生した重大な事故が31件起きたが、そのうち23件、約75%が「魔の11分間」に集中している。密集市街地上空を低空飛行中に事故が起きた場合の危険は計り知れない。
 また航空機からは部品の脱落や機体に付着した氷塊の落下が起こる。その大半は着陸直前に航空機が着陸装置を出す(脚下げ)時に発生する。成田では洋上で脚下げをするなどの対策をしているが、それでも過去10年で21件の落下物が確認されている。新ルートでは洋上脚下げができない。市街地を避けて遠くから車輪を下ろした場合、空気抵抗が大きくなるためエンジン出力を上げなければならず、騒音が拡大する。排ガスによる大気汚染も重大な問題だ。
 国交省が7月29日に発表した「環境影響等に配慮した方策」では「点検・整備の徹底を指導」「国の職員による駐機中の航空機のチェック」と言っているが、とんでもない。機体稼働率を上げるため整備時間を短縮し、外注化・合理化で労働者の団結と誇りを奪い、安全を破壊しているのは国交省ではないか。

騒音対策での国の大ペテン

 さらに、とてつもない騒音がもたらされる。驚くべきことに国交省は、新たに防音対策工事が必要となる地域は存在しないとし、例外的に学校・病院は防音工事を行うとしている。これも大ぺてんだ。国が使っているのは騒音の平均をとる特殊な数値で、午後3〜7時の4時間の騒音が非常に大きくなったとしても平均の量に補正され、防音対策は不要とされる。
 こうした国の姿勢は、軍事空港建設に反対して闘う三里塚の市東孝雄さんや、米軍厚木基地(神奈川県)、横田基地(東京都)の周辺、沖縄の人びとにすさまじい爆音、事故の危険を日常的に強いていることと同じである。また、首都圏の西の空には米軍管制下の広大な横田空域が広がり、民間機の航空混雑をもたらしている。沖縄の空の大部分は米軍優先とされている。沖縄、三里塚と心をひとつに、こんな国のあり方をぶっ飛ばそう。

豊洲新市場と一体の大暴挙

 羽田の国際線増便は成田の年間発着枠30万回化と合わせ、国交省が「成長戦略」で打ち出した柱である。成田、羽田を合わせた首都圏空港がアジアの都市間競争で劣勢に陥っていることに焦り、空港容量拡大で巻き返そうというものである。
 さらに安倍政権は、3月に訪日外国人数を「20年に4千万人、30年に6千万人」とする新目標を打ち出した。製造業をはじめ国際争闘戦で敗勢を深める日本帝国主義が生き残る道は外国人旅行客を呼び込み、買い物や宿泊で金を使わせる以外にないというのである。
 羽田増便―都心低空飛行は帝国主義の延命のために労働者人民に犠牲を強いて生活も安全もぶち壊す、豊洲新市場と一体のとんでもない所業だ。安倍や小池都知事が狙う資本家のための首都圏大改造、改憲・労働法改悪で、黙っていたら労働者人民は貧困に突き落とされ、最後は戦争に駆り出される。こんな新自由主義は打ち倒す以外ない。
 すでに新ルートに対して、大田区や港区をはじめ住民の反対運動が始まっている。あらゆる人びとと手をつなぎ、都心低空飛行ルート阻止の闘いを巻き起こそう。
 阻止する道は、あらゆる職場・地域で絶対反対の声を上げ、闘う労働組合を再生しゼネストで力関係を変えることにある。10・9三里塚闘争に立ち、11・6労働者集会への巨万の結集をかちとろう。

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