トランプ勝利で米社会は大分裂し階級闘争激化へ 「私の大統領じゃない」デモ激発

週刊『前進』02頁(2798号02面02)(2016/11/17)


トランプ勝利で米社会は大分裂し階級闘争激化へ
 「私の大統領じゃない」デモ激発

(写真 「【トランプは】私の大統領じゃない」。投開票の翌日、1万人の怒りのデモがニューヨークのトランプタワーに押し寄せた【11月9日】)

「生きられない」の怒り

 11月8日に投開票された米大統領選で、共和党候補の資本家ドナルド・トランプが民主党候補のヒラリー・クリントンを破り、勝利した。トランプ勝利が示すものは、新自由主義とグローバリズムの大崩壊であり、アメリカ帝国主義の没落・衰退の極まりである。支配階級は大混迷し分裂と危機を深めている。
 起きていることはアメリカ経済・社会のすさまじい分裂と崩壊である。鉄鋼、自動車など米製造業が没落する中で白人労働者を軸とするいわゆる「中間層」が崩壊し、格差が極限的に拡大し、「生きられない」現実が広がっている。この現実をもたらした既成の体制への怒りをトランプがかすめ取った。
 黒人やヒスパニック(中南米)系など移民を先頭に強烈な危機感と怒りが爆発している。9日以降、ニューヨークやシカゴなど全米約50カ所で大規模な「反トランプデモ」が巻き起こり、階級的激突が激化している。
 トランプ勝利をもってアメリカと世界の危機は一層爆発し、保護主義の連鎖と争闘戦激化、世界戦争へ至る過程が始まった。トランプ体制下で階級矛盾と支配階級の分裂・危機もさらに爆発していく。それは同時に労働者階級がゼネスト・革命に立ち上がる情勢の到来でもある。今年6月のイギリスのEU(欧州連合)離脱決定に続き、米帝を基軸とする戦後世界体制は終焉(しゅうえん)した。求められているのは、新自由主義を打倒する階級的労働運動と革命的な労働者政党の力ある登場である。
 大統領選自体が有権者の怒りを帝国主義と二大政党制の枠内に押しとどめるための支配階級の総力をあげた攻撃であるが、今次大統領選はその階級支配の大破綻を示した。ニューヨークタイムズなどの世論調査では82%が「大統領選にうんざりする」と回答した。
 根底にあるのは、「新自由主義のもとでは生きられない」という労働者人民の怒りだ。80年代以来の新自由主義政策と長期の対外戦争によって、労働者の雇用、医療、教育など生きる基盤が破壊され、社会は荒廃・崩壊した。とりわけ民主党オバマは、世界大恐慌を引き起こしたウォール街の金融資本の詐欺を免罪し延命させ、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアへの中東侵略戦争を継続・激化させた。
 貧困と格差が拡大し、米国勢調査局の調査では95年からの20年間で上位10%地点の家計所得は20%増えたのに対し、下位10%地点は1%減った。また、重武装した白人警官により黒人が1日に2~3人のペースで殺される現実があり、内戦状態をもたらしている。
 アメリカ最大のナショナルセンターAFL―CIO(米労働総同盟・産別会議)はこの現実をつくり出した共犯者である。AFL―CIOは今回クリントン支持を表明したが、オバマ政権下で国務長官として新自由主義と戦争を強硬に推進してきたクリントンを多くの組合員が拒絶した。

保護主義の激化と戦争

 政治家・軍人経験のないトランプは自らを「アウトサイダー」として押し出し、クリントンを従来の秩序や不正の象徴として攻撃した。
 トランプは大統領選の過程で、移民やムスリムへの差別・排外主義をあおりたてる一方で、「米国民の職を奪っている日本と中国とメキシコから雇用を取り戻す」と主張し、自由貿易反対を打ち出した。NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉・離脱やTPP(環太平洋経済連携協定)離脱を掲げた。だがここには支配階級内部の深刻な分裂・対立があり、それはトランプ体制発足により本格的に爆発していく。
 また、法人税の15%への大幅引き下げや金融資本への規制緩和・撤廃を掲げた。トランプは2010年につくられた金融規制強化法(ドッド・フランク法)廃止を打ち出しており、財務長官にウォール街関係者を入れようとしている。
 トランプの「アメリカ第一主義」とは、米帝の世界支配力の喪失を居直るものであるが、世界から米帝が手を引くということではない。米帝が自国の利害をむき出しにして争闘戦を激化させ、保護主義の連鎖から世界戦争に至る過程が始まるのである。オバマが進めた米軍事力のアジアシフトの路線はトランプのもとでも継続され、東北アジア・朝鮮半島の戦争危機はますます高まる。
 根底にあるのは米帝の歴史的没落と衰退だ。米帝は大恐慌からまったく抜け出しておらず、恐慌の再激化も迫っている。製造業は衰退し、経済成長率は1・5%(16年1〜9月の前年同期比)と低迷、巨額の貿易・経常赤字が累積している。さらには中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)の急速な拡大でドル体制も崩壊寸前である。国内階級支配も大破綻に直面している。トランプの登場でこれらの危機は極限的に爆発し、米帝を先頭に世界は「戦争か革命か」の情勢にいよいよ突入していく。

破産深める安倍を倒せ

 トランプ勝利で安倍政権は危機と凶暴化を一層深めていく。今月17日に安倍・トランプ会談が予定されているが、日米間の矛盾と対立の激化は不可避である。
 安倍はTPPの承認案と関連法案を11月10日に衆院通過させた。アベノミクスが大破綻する中で唯一TPPにすがりつくしかない安倍は、30日までの会期を延長して今国会での成立を狙っているが、トランプ勝利でTPPの発効は絶望的だ。
 また、トランプは米軍駐留費の全額負担を日本・韓国などの同盟国に求め、「同意しなければ撤退する」と主張している。日帝支配階級内部から自衛隊の侵略軍隊化と朝鮮侵略戦争、核武装の衝動が一層強まるだろう。戦争・改憲、労働法制大改悪の安倍政権を打倒しよう。
 求められるのは新自由主義を打倒する階級的労働運動と労働者の新しい政党の建設であり、労働者の国際連帯である。11月国際共同行動の画期的地平をさらに発展させ、反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命へ突き進もう。12・4三里塚緊急闘争に立ち、常磐線相馬―浜吉田間再開を狙うJR東日本の12・10ダイ改と闘い、青年・学生を先頭に組織建設の12月決戦へ決起しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加