福島の避難者への帰還・被曝の強制を許すな 労働組合を軸に反対署名を

週刊『前進』02頁(2802号01面02)(2016/12/01)


福島の避難者への帰還・被曝の強制を許すな
 労働組合を軸に反対署名を


 11月22日、福島沖を震源とした「3・11」以来の大地震が起きた。福島第一原発の再爆発、全原発での大事故の再来がありうることが衝撃的に示された。あらためて、「3・11」とその後のあらゆる被害を二度と繰り返さないと誓い直そう。
 ところが政府・福島県がやっているのは、まったく逆だ。甲状腺検査を縮小し打ち切り、放射能汚染地に住民を帰還させて被曝させ、そのためにJR常磐線を延伸し、被曝労働で労働者を迫害する。どれ一つとっても絶対に許せない。事故から丸6年を前に怒りを一層爆発させ、新しい運動を巻き起こそう。12・10闘争に決起し、「被曝と帰還の強制反対署名」に福島と全国で取り組もう。

被曝を隠して甲状腺がんも避難者も抹殺

 政府・福島県が何を狙っているのか、その全体像を見すえよう。
 安倍政権は15年6月に、「帰還困難区域」以外の避難指示を17年3月までに解除することを閣議決定した。東京電力による住民への月10万円の「慰謝料」も18年3月で一律に打ち切るとした。この直後に福島県は、「自主避難者」の無償住宅を17年3月で打ち切ることを正式決定した。
 さらに安倍政権は16年3月、「20年春までの常磐線全線開通」を決定した。8月には「帰還困難区域」について、21年度末をめどに避難指示の解除を目指す方針を決めた。除染のあてなど皆無の地域なのに「避難解除」と言い始めたのだ。
 一方、小児甲状腺がんは疑いを含めて175人にも上っている(6月末現在)。にもかかわらず福島の県民健康調査検討委員会は「事故の影響ではない」「過剰診断」と言い、16年春からは甲状腺検査の縮小を公言しはじめた。9月の検討委員会では県内外からの反対で強行できなかったが、狙いは明白に検査打ち切りにある。
 要するに、被曝による健康被害の事実を隠し去るとともに、被曝を避けるための避難の現実、避難者の存在を抹殺しようというのだ。これこそ、86年チェルノブイリ原発事故後の国際帝国主義の方針にほかならない。
 チェルノブイリ原発事故では、避難の権利を認めさせ、甲状腺がんを事故の影響と認定させた。それがソ連スターリン主義崩壊の重大契機となった。国際帝国主義はそれを繰り返さないため、避難の権利を圧殺し、事故による健康被害を否定し、すべてを「ストレスのせい」としてきた。96年のIAEA(国際原子力機関)会議では、「次回の事故にあってはストレスを避ける、そのためには避難させず、情報を統制する」(緑風出版『チェルノブイリ人民法廷』)と合意してきた。

法定基準の20倍の高汚染地には戻れない

 日本政府・福島県が今やっているのは、資本主義を維持するためなら「福島復興」の名のもとに避難の権利も健康被害の事実も圧殺する、という人類史上の大罪だ。
 何よりも帰還の強制は被曝の強制である。法定の一般被曝限度が年1㍉シーベルトなのに、20㍉シーベルトで帰還しろというのは殺人的行為だ。地面に落ちた放射性物質は、土の中に入り込むので、空間線量はいったん低くなる。しかし、土中の放射性物質が微粒子に付着して舞い上がるため、空間線量は再上昇する。それを吸い込めば内部被曝してしまう。そんな所に帰れというのか。
 現に、避難指示が解除されても帰還する人は限られている。15年9月に解除された楢葉町では、帰還したのは641人、率にして8・7%である(8月4日現在)。
 先日、福島から横浜に「自主避難」していた子どもが、いじめを受けていたことが発覚した。最大の元凶は、政府・福島県による避難者への迫害だ。子どもは手記に、「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」と記している。避難者の子どもを死に追いやるような社会は、革命によって根底から変えるしかない。

団結とり戻し住宅補助うち切り止めよう

 政府・福島県は帰還を強制するため、約1万2千世帯の「自主避難者」への住宅補助を打ち切ろうとしている。特に東京都が約7千世帯、約1万8千人と最も多い。しかし小池都政は、都営住宅に自主避難者の専用枠をわずか300戸設けたにすぎない。それ以外は「出て行け」というのだ。帰還か移住かを迫り、避難者という存在を抹殺しようとしている。
 都の自治体労働者が、住宅追い出しに加担させられている。同じ仲間である労働者を汚染地域に追い出していいのか。動労水戸は「帰還強制反対、被曝労働拒否」で闘ってきた。それと同じ闘いが東京・首都圏の全労働者に問われている。
 避難解除に伴い福島で帰還強制を担わされるのは、自治体労働者や教育労働者だ。自ら被曝労働を強いられながら、同じ労働者の仲間とその家族を被曝に追いやるのか。福島ではすべての労働者が被曝労働を拒否することが問われている。動労水戸に続いて、生きるために立ち上がろう。
 「被曝と帰還の強制反対署名」運動は、福島と全国で労働組合をよみがえらせる闘いである。労働者の団結を取り戻し、職場拠点をつくり出し、ゼネストから革命への道を切り開く展望で、署名運動に取り組もう。
(島崎光晴)

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 署名用紙と署名チラシはふくしま共同診療所のホームページからダウンロードできます。

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被曝と帰還の強制反対署名
原発避難区域への帰還強制、避難者への住宅追い出しに反対します。
甲状腺検査を含めた検診と医療のさらなる充実を求めます。

福島県知事殿
 東京電力福島第一原子力発電所爆発事故から5年半、福島県民は平穏な生活を奪われ、いまだに放射能汚染に苦しんでいます。政府は子どもを含めた福島県民にのみ年間20㍉シーベルトの被曝を許容し、次々と避難指示の解除を進めています。また福島県は、2017年3月末で「自主避難者」への住宅補助を打ち切ると表明しました。そうしたなか、福島県県民健康調査において、175人の子どもたちが甲状腺がんないし疑いと診断されています。福島県小児科医会が「甲状腺エコー検査の縮小」を県に要望するなど、現状に逆行するあり方に、甲状腺がん患者をはじめ多くの県民の怒りが沸騰し、県議会では「甲状腺検査継続」の請願が全会一致で採択されています。被曝による健康被害を否定することなど、絶対にできません。福島県は、県民の安全と健康を守るため、国と東京電力の責任を追及し、県民はじめ、すべての被災者の避難と保養、医療の全面的な補償をさせてください。私たちは以下の通り要求します。
<要求項目>
1 被曝の影響を認め、甲状腺検査の全年齢への拡充および、検診・ 医療の充実をはかることを求めます。
2 法令で定める一般住民の年間1㍉シーベルトの被曝限度以下になるまで、賠償や支援を続け、帰還を強制しないことを求めます。
3 「自主避難者」への住宅補助などの保障の継続と拡大を求めます。
4 すべての原発事故被災者に、行政の責任において避難および保養を保障することを求めます。

■連絡先・署名送り先 ふくしま共同診療所
Tel 024-573-9335
mail :fukukyocli(アットマーク)ark.ocn.ne.jp
〒960-8068 福島市太田町20-7佐周ビル1F

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