JR九州で重大事故続発 株式上場と外注化が原因だ

週刊『前進』04頁(2807号02面04)(2016/12/19)


JR九州で重大事故続発
 株式上場と外注化が原因だ

場後に連続した架線事故 

 10月25日、JR九州は国鉄分割・民営化の破綻を塗り隠すために株式を東証一部に上場した。
 そのわずか2週間後の11月11日、福岡県筑紫野市のJR鹿児島線で老朽化した架線が破断し、そこを通過した列車のパンタグラフが損傷した。損傷した状態の列車の一部は長崎線にも乗り入れ、長崎線の架線を損傷させる連鎖的事故となり、合計568本が運休した。
 さらに10日後の22日、鹿児島線・折尾駅(福岡県北九州市)周辺の高架化工事で架線が損傷する事故が連続して発生した。仮設の架線を設置する際、必要な部品の取り替えを行わなかったことが原因だ。二つの事故で計23万5千人が影響を受けた。
 JR九州では、15年5月22日に長崎線で特急同士があわや正面衝突かという重大事故が起き、16年4月14日の熊本震災に際しては九州新幹線の全車軸が脱線した。
 今こそJR九州の全労働者は、怒りを込めて鉄道の安全破壊を弾劾し、動労総連合の旗のもとに結集して外注化・非正規職化を阻止しよう!

株主最優先で安全切り捨て

 動労総連合・九州は「株上場は事故続発をもたらす」と度々指摘してきたが、今回の事故はその正しさを裏書きした。
 JR九州の青柳俊彦社長は『財界九州』15年11月号で、「(株上場で)鉄道事業をJR九州グループ全体の2割にする」と公言した。そして、10月25日の株上場=完全民営化を機に、鉄道の安全にかかわる部門の外注化・非正規職化、人員削減、省力化、ローカル線切り捨てなど、不採算部門の縮減を極限的に進め始めた。
 そもそもJR九州は株上場=完全民営化などできる状態ではなかった。これまでは国から与えられた3877億円の経営安定基金の運用益でかろうじて経営を成り立たせてきた。15年度も売上高は3574億円、経常利益は255億円で、鉄道事業の赤字を経営安定基金の運用益で埋めることで、なんとか黒字にしている状態だ。経常利益の約5割は基金の運用益だ。鉄道事業そのものは、分割・民営化から30年、一度として黒字化したことがない。
 収益を支えているのは非鉄道事業、特にオフィスビル、分譲マンション販売などの不動産業だ。JR九州は不動産業では九州最大だ。87年の発足時から赤字路線が大半だったJR九州は、これまでも収入源を確保するため自動車販売やリース、キノコ栽培、スーパー銭湯、釣り堀などに次々と投資し、新規参入と撤退を繰り返してきた。そのたびに数えきれないほどの労働者の首が飛ばされた。非鉄道事業の黒字も、膨大な労働者の犠牲の上に成り立っているに過ぎない。
 国土交通省は今回の株式上場を前に、経営安定基金3877億円は九州新幹線の施設使用料の一括前払いと、鉄道・運輸機構からの長期借入金の償還に充てるとして、JR九州に対し返済を免除した。だが、経営安定基金自体は来年からなくなる。完全民営化を維持するためには、経営の多角化と同時に、際限なく削られてきた鉄道事業の検査・修繕など安全維持費を極限的に削り取るしかなくなっている。それが何をもたらすかを、今回の事故は鋭く示した。
 11月11日の架線損傷・断裂事故は、老朽化した架線カバーに雨水が入り込んで漏電したことによる損傷が原因と言われている。破損・断裂した架線は設置以来、一度も検査されていなかった。JR九州は「想定されていない事態」と弁明した。だが、あらゆるものはいつかは壊れる。それに備える検査や修繕もしないで「想定外」とは、完全な開き直りだ。

新幹線ホームも次々無人化

 鉄道事業体とは言い難いこの安全無視の感覚は驚くべきものだ。こうした姿勢は、株上場でさらに露骨になっていく。
 安全破壊と一体で地方切り捨ても一気に進む。16年3月のダイヤ改定で、JR九州は在来線の9駅を無人化し、全567駅のうち半数以上の291駅が無人となった。15年のダイ改では32駅が無人化された。また、全国に先駆けて強行した九州新幹線の新玉名駅ホームの無人化に続き、新幹線の筑後船小屋駅、新大牟田駅のホーム無人化も青柳社長は公言した。
 熊本市と大分市を結ぶ豊肥線は、熊本震災で運行が停止し、今も不通のままだ。熊本震災で脱線した九州新幹線は、「今年度中に対策を実施する」という約束ひとつでまともな安全対策もなしに2週間後に運転を再開した。これと比べ、豊肥線の扱いには雲泥の差がある。今後、株主優先の経営方針により、最大の不採算部門であるローカル線が切り捨てられていくことは避けられない。
 九州の中心都市・福岡は「人口増加率全国1位」「青年の人口比率全国1位」ともてはやされてきた。だがその実態は、JRが推し進める新自由主義的な地方切り捨ての中で、青年が地元で職を得られず、低賃金の非正規職として都市圏に駆り出されているということだ。その都市圏ではJRの事故が続発し、地下鉄・七隈線の延伸工事がもたらしたJR博多駅前の大規模な地盤陥没事故などが相次いで引き起こされている。
 そうした新自由主義の破綻を体現しているのがJR九州資本だ。だからこそ、JR体制を打ち破る闘いの旗が立てられた時、全労働者の怒りは根底から爆発する。
 動労総連合・九州は今年2月の結成以来、国鉄1047名解雇撤回闘争と一体で、外注化・非正規職化絶対反対を貫いて闘ってきた。今こそJRおよび関連企業のすべての労働者の怒りと結合し、動労総連合の拡大、JR体制打倒へ前進しよう。17年国鉄決戦を大前進させ、日本におけるゼネストを戦取しよう。
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