●全学連新年座談会 戦争を止める全国大学ストを 韓国で始まった革命に続こう 300万学生のリーダーになろう

週刊『前進』08頁(2809号01面01)(2017/01/01)


●全学連新年座談会
 戦争を止める全国大学ストを
 韓国で始まった革命に続こう
 300万学生のリーダーになろう

(写真 昨年10月3日、京大当局の看板破壊に怒りを燃やし「山極・安倍打倒! 処分撤回!」と学内デモ)
(写真 昨年8月6日、広島市内で改憲阻止・安倍打倒のデモを闘った)

(写真 昨年11月、全学連は動労千葉とともに訪韓しソウルでの民主労総の労働者大会と民衆総決起に合流した)


■出席者(敬称略)
斎藤郁真 委員長/法政大学
作部羊平 書記長/京都大学同学会委員長
赤嶺知晃 副委員長/沖縄大学学生自治会委員長
森田寛隆 副委員長/広島大学学生自治会委員長
武田雄飛丸 副委員長/法政大学文化連盟委員長
洞口朋子 救対部/法政大学
黒川結希 京都大学
▽司会 坂野陽平/前書記長/上智大学

 全学連(全日本学生自治会総連合)は2016年、第2波ストライキをめざす京都大学での闘いを先頭に、朝鮮侵略戦争阻止・資本主義社会の根底的変革に向けて全国の大学で闘いぬき、団結を拡大してきた。11月の訪韓闘争にも大挙参加して革命のダイナミズムを実感した全国の学生はその息吹をキャンパスに持ち帰り、2017年、日本におけるゼネストを切り開く全国大学反戦ストライキに挑戦する。国際連帯闘争で得た確信を大きな力として、階級的労働運動とともに朝鮮戦争阻止・安倍打倒の闘いの先頭に立つ全国の学生に、昨年闘い取った地平と2017年の抱負を語ってもらった。(編集局)

ソウル100万人デモで実感

若者の怒りが合流

 坂野 1917年ロシア革命から100年という歴史の節目にあたって、まず11月訪韓闘争に参加した仲間から、韓国で始まった革命への感動を語ってください。


 斎藤 11月12日のソウル市中心部での100万人デモは、労働組合のゼネストを中心に民衆が街全体で立ち上がったらこうなるのか、と感慨深かったです。しかも、国会での弾劾決議でパククネを倒すだけでなく、「財閥を解体して社会のあり方を変えよう!」というスローガンで民衆が総決起するというのは歴史上なかなかないことです。
 これからパククネを職務停止に追い込んだ後にどうするのかが問われる中で、大衆的な社会変革運動をさらに盛り上げていくということと、民主労総という闘う労働組合を基礎にした一個の政治勢力を生み出すという、二つの課題に突き当たっていると思います。
 パククネもセヌリ党も求心力を失っている中、「どの政治勢力が権力をとるか」という激突に入っています。そして、日本からそれにどう応えるのか? 僕たちは民主労総の同志たちと具体的につながっているわけで、実践で回答を示していかないといけない。


 今回の訪韓闘争で聞いた韓国学生運動の格闘は、教訓に満ちています。現在闘いの先頭に立っている学生グループは、2013年末の鉄道労組の23日間の民営化反対ストライキ支援の中から生まれてきたそうです。「大学と社会」という視点から労働者との連帯を語っていける活動家を日本でも多くつくり出せるかということですし、そうした活動家の経験の蓄積と不屈の挑戦が問われています。
 赤嶺 一昨年の13万人の11・14民衆総決起闘争もすごかったんですが、昨年はまったく違いました。歩道も車道もデモで全部埋まり、街がひとつだった。「革命のダイナミズム」を学び、人生観が変わった気がします。デモ中、韓国の仲間は全学連の「アベOUT! パククネOUT!」というコールにすごく感動して、握手して日本語で話しかけてきてくれました。
 そして、ほとんどの人がデモ初参加。民主労総のハンサンギュン委員長の逮捕や、機動隊による農民ペクナムギさんの虐殺を知りながらも、「怖いけど初めてデモに来た」という女子大生や家族連れ。びっくりしたのは、膨大な数の「普通の若者」(笑)が決起していることです。見渡すとあたり一面すべて学生、ということがありました。ありのままの若者がデモに参加し、民主労総の訴えが何百万という人民を獲得している。
 民衆総決起大会の壇上で、セウォル号事件の遺族とサード配備反対運動の住民代表、ペクナムギさんの遺族が並んで発言していることにも感動しました。民主労総を軸に、労働問題も戦争問題も農業問題もすべてひとつになっている。怒りは同じで、みんなでパククネを倒す。こうした闘いを日本でも実現したいです。一人ひとりの決断と行動であの膨大な決起が生まれるということを見て勉強になったし、この興奮を余すことなくキャンパスに伝えたい。


 作部 民衆総決起デモの現場に警察がいませんでした。打ち捨てられた機動隊車両に、みんながステッカーを貼り付けていく。この力関係はすごいと思いました。


 11月14日の日韓米独理念交流会にも感動しました。各国の課題は全部同じで、「世界革命をどうやるのか」という本気の討論だと感じました。特にアメリカの運輸労働者の「民衆総決起の熱気をアメリカに持ち帰って『自分たちにもできるんだ』と示す」、「ダラ幹をぶっ飛ばして労働者自身の政党をつくり、共和党のトランプや民主党のサンダースに奪われている票を奪い返す」という発言がすごかったです。
 洞口 民主労総ゼネストがすべての基盤にあると実感しました。指導部を獄に奪われる中で民主労総が命をかけて闘い、資本との大激突を繰り返して全民衆に支持を広げていくというダイナミックさ。若者が立ち上がっていることも圧倒的でした。大学・高校・中学ごとに横断幕を出して路上を占拠して集会をやっている。「このままじゃ生きていけない!」という怒りの爆発。若者の怒りが労働組合の闘いに合流してきている。


 武田 民主労総ゼネストが中心にあることがよく分かりました。日々の労働での怒りが、パククネ打倒というでかいテーマと結びついている。そして、とにかく若者が多かったです。しかもバラバラじゃなく、クラスや学校単位で団結している。「受験戦争」「競争社会」とか言われている中でも、仲間で誘い合って街頭に出てきている。ある学生集会の横断幕に「1960年4・19革命を今こそ完成させる」とあったんですが、「革命」という概念が広く共有され、闘いの歴史が継承されている。「根底的に社会をひっくり返すことが必要だ」と多くの若者が思っている。


 森田 デモの現場で配られていたビラに「民主化闘争をのりこえなければならない」とありました。「過去の民主化闘争は、結局ブルジョア政府をつくっただけだったんだ」と。それを超える革命をやろう、ということですよね。それを受けて、僕も確信をもって広島大学で「革命が始まった!」という訪韓報告ビラをまきました。「革命」ってもう空論じゃない。『ハンギョレ新聞』に、10代の若者千人が「全国青少年革命」という団体をつくり街頭でパククネ支持の保守派の老人と対決しているという記事がありました。スローガンは「いずれにせよ私たちが勝つ!」だそうです。


 黒川 それぞれのデモ参加者の直面するテーマや思いがあると思うんですが、それがどうやって「今の国と政治の問題なんだ」という大きな確信にまで高められるんでしょう?
 赤嶺 僕は、セウォル号事件をめぐる闘いが大きいと思います。民主労総は一貫してセウォル号事件の遺族とつながってきました。高校生を中心に乗員・乗客・消防隊など約300人が亡くなったセウォル号事件も、まさに民営化と金もうけ主義が原因でした。民主労総が資本と政府の責任を追及する運動を自分自身の問題として取り組んで、労働組合と遺族が根底的信頼でひとつに結ばれていた。
 黒川 労働運動の側が、民衆の思いにどこまで応えるかっていうことですか?
 斎藤 さっき武田君が言った「闘いの歴史の継承」はすごく大きいです。学生運動をやって、労働現場に入っていった活動家が民主労総にはたくさんいる。農民のペクナムギさんも学生運動で停学処分をくらい、農民になってもずっと闘い続けていた。労働運動―学生運動―農民運動―市民運動がつながり続けているから、結局は「ひとつの問題だ」と。そうした信頼関係がすごいと思います。
 赤嶺 ソウルの西大門刑務所歴史館には、日帝植民地支配時と並んで、戦後の軍事独裁政権下での活動家への拷問資料の展示もあります。韓国では「1945年」で終わるんじゃなく、1980年代までずっとつながっている。断絶がなく、ずっと闘いが続いている。そこに多くの若者が来ていました。世代にかかわらず闘いの歴史をみんな認識している。
 武田 韓国では「新自由主義反対」が大前提になっていますよね。13年の鉄道労組ストで「財閥支配と民営化の問題だ」と訴えたことが、大きな社会的支持を集めた。14年のセウォル号事件後は全教組を先頭に労働組合と遺族が一緒に闘ってきた。「新自由主義を倒せ!」という闘いにすべてのテーマをまとめ上げることが核心じゃないのかな、と。
 坂野 1997〜98年のアジア通貨危機とIMF構造調整で、世界で韓国ほど激しく新自由主義攻撃がかけられた国はないですよね。ある意味で韓国支配階級の攻撃が、いろいろな闘いをひとつに結びつけている。12月9日に大統領弾劾案が国会で可決されましたが、民主労総を先頭に不屈の民衆デモが継続されています。これから韓国の闘いはどう進んでいくのでしょうか?

日本から展望示す

 斎藤 規模も状況も違いますが、日本でも「2011年3・11原発事故」への怒りの中で、12年にすさまじいレベルの反原発デモが巻き起こりました。国会前や首相官邸前を実力で解放していった。でも結局、週末にみんなでデモをやっても、次の日からは「日常に帰りましょう」「選挙やりましょう」と。日常の職場や学園は今までと同じ、何も変わらない。みんな生活もあるから、ずっとデモだけやっているわけにもいかない。社会を変えるのはそんな簡単じゃない、となっていく。自分の現場からの組織化を、もっともっと目的意識的に進めていかないといけない。
 日常の怒りも体現して堂々と登場する政治勢力を、日本からつくり上げる。あえて言えば、労働者階級の政党です。これは韓国でも同じだと思います。
 赤嶺 日本でゼネストをやることが、韓国での革命勝利につながると思います。今回の訪韓に、沖縄から元基地労働者の方が参加しました。彼は1971年の沖縄で、全軍労牧港支部青年部として全島ゼネストを経験している。訪韓の感想を聞いたら、「『俺がやったゼネストよりはすごくねえだろ』ってなめてたんだけど、やっぱりすげぇなぁ」と(笑)。それで、「俺たちはゼネストでベトナム戦争も基地も止めた。でもその後の大量解雇に対して解雇撤回闘争をやりきれなかった。それをのりこえるかどうかだ」と。
 国鉄分割・民営化による大量解雇に対して30年間、動労千葉を先頭に必死で闘ってきた僕たちが、その運動を豊かにして日本でゼネストをやる。韓国の労働者人民と思いをひとつにして、日本の地からも展望を示したい。
 作部 民主労総の仲間が、「(11月12日の闘いは)世界革命の始まりであり中心です」と言っていましたが、そういう世界的な展望や団結をつくり出していくことが重要だとあらためて思いました。
 坂野 労働者大会で、JR総連や国労などの大きな労組がいる中で、動労千葉の田中委員長が「日本の労働者の代表」として登壇したことが、日本の僕たちの運動の位置を示していますね。

人間の共同性取り戻そう

朝鮮戦争許さない

 坂野 昨年の訪韓闘争は、日比谷野音での11・6労働者集会と一体の11月国際共同行動として闘われ、切迫する朝鮮半島での戦争を阻止するということが大きなスローガンとなりました。
 黒川 いつ新たな戦争が始まってもおかしくない情勢だと思います。そうした中で、11・6集会ではアメリカからの発言がすごく良かったです。「トランプが大統領に当選」とだけ聞くと、「アメリカどうなってんの? 大丈夫かよ?!」って思うし(笑)。だからこそ、アメリカの労働者の発言は重要でした。未来は、悪い方向にも良い方向にも転びうるんだ、と。
 赤嶺 12月13日、米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイが名護市の海岸で墜落事故を起こしました。12月7日には、山口県の米軍岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機が高知沖で墜落しました。沖縄だけでなく、日本全土が朝鮮戦争に向かって軍事基地化されています。今こそ、本土―沖縄の分断の歴史をのりこえ、一体で反戦運動をつくっていくときです。
 坂野 昨年は、米韓合同軍事演習に横須賀港の原子力空母ロナルド・レーガンが参加するなど、朝鮮戦争危機、日本の参戦国化=出撃基地化のリアリティがどんどん増してきました。
 作部 朝鮮戦争には、韓国で始まった革命を絶対につぶすという目的があると思います。労働者民衆の不満が国家に対して内乱的に爆発する中で、韓国だけでなく米日政府も戦争を急いでいる。戦争と排外主義によって革命をやらせない。敵はそれだけ必死です。
 斎藤 この3年間くらいで、国際連帯発言が「自分の国でも闘っています」から、「一緒に世界革命やろう」に急速に変わってきている気がします。一昨年の11月労働者集会で、民主労総ソウル地域本部事務処長のソンホジュンさんが「万国の労働者団結せよ。資本主義の抑圧の鎖を断ち切ろう!」と言っていて、「ちょっとやばい、この人たち」って思ったんだけど(笑)、今年は全発言者がそうだったっていう。
 洞口 11・6集会での黒川さん発言の時の全体の集中度がすごかった。私は昨年3月の京大弾圧粉砕闘争で一緒に闘った時のことを思い出して、「自分も闘ってきてよかったな」って思いました。
 黒川 「若い学生が次の社会を担ってほしい」という期待を感じがんばろうと思いました。学生自治や寮自治を守りたいという思いの上で、軍産学連携に反対する運動が今の大学で最大の課題です。寮やキャンパスに留学生はいっぱいいるし、ふわっと「外国の人を攻撃したくない」「戦争したくない」というのではなく、一緒に生活し、しゃべったり遊んだりする友人に絶対に銃を向けたくないとあらためて思います。11・6に多くの国の人が来て、「目の前のこの人に絶対銃は向けたくない」っていう一人ひとりの決意が重要だと思うんですよね。具体的に「仲間がいるんだ」と感じました。

京大生の総反乱を

 坂野 秋の全学連大会以降の京大での闘いはどうでしたか?
 作部 9月は、京大特集の『前進』1万5千部を京都市内に配る宣伝をやりぬきました。ここで膨大な数の労働者市民と結びついたことが決定的でした。8月のシールズ解散に失望した市民が10・21京大集会に来てくれて、同学会がキャンパスで自治会として戦争反対を断固掲げ、処分に負けずに闘っていることにめちゃくちゃ感動したと。「この処分は学生だけの問題ではない」と運動が広がり、処分撤回署名も百筆単位で送られてくるようになりました。
 10月開講から一気に当局との攻防に入ります。「学外者の入構禁止」「許可なき集会禁止」「法的措置」を掲げた「告示」が事前に出されます。10月3日の開講日の緊張感はすごかったです。
 10月3日の早朝は、学生有志団体がつくったクスノキ前の大看板を当局職員が破壊し、それに数十人で抗議して奪い返す攻防もありました。しかし、学生との討論を積み重ねながら被処分者が毎日元気にキャンパスに登場し、当局は実力排除できない力関係をつくっていった。
 10月末からは、再びクスノキ前に大看板が登場している。看板には(当局による)「情報公開連絡会廃止」「団交拒否」「確約破棄」「看板破壊」「4学生処分」とバンと書かれています。
 当局は11月18日に「告示第8号」を出して、この看板にも法的措置をとると言い始めました。同学会のみならず、すべての京大生の主体的運動を1ミリも認めないと敵対してきた。そこまで当局を追い詰めた。京大生の総反乱をつくり出すことが問われています。
 黒川 遠からず大弾圧が来る、という緊張感は今もあります。それまでに学生の中でどれだけ弾圧に耐えうる信頼関係をつくっておけるか。「告示第8号」で、同学会への対応を他の学生団体に広げたのは大きな転換です。でも、すぐに法的措置をとれない力関係が、今の京大内にはあります。同学会が弾圧されているだけじゃなくて、学生の自主的活動全体に大学が動いているということが、学生にはけっこう伝わっています。
 作部 集会許可制の「学内ルール」は、朝鮮戦争下の1951年に反戦運動をつぶすためにつくられて、今まで死文化していたものです。それを引っぱり出してきた。さらに京大当局は11月28日、大学ホームページで「ソウルに行く学生は、デモを見たらすぐにその場を離れるように」と警告しました。学内だけでなく、学外でも集会・デモへの参加を禁止しています。
 赤嶺 「告示第8号」で「全京大生VS京大当局」という構図がつくられてきていると思います。
 作部 集会禁止、看板禁止、反戦ストへの処分や寮自治破壊、管理教育はすべてがひとつの問題で、全体をひっくり返したいということと、取り戻したいものの大きさをどれだけわかりやすくクラス討論で語っていけるかが、最大の課題です。
 坂野 法政大学で2006年に「3・14弾圧」がありました。朝鮮戦争切迫の中で、「3・14前夜」的なものが京大で始まっている。今はそれに勝ち抜いているということと、僕らももっと転換していかないといけない。
 斎藤 全学連の法大闘争10年の総括を踏まえて、京大で決戦を構えているのはすごいと思います。敵の攻撃に運動の側がどう対応し、運動を呼びかける主体がどう変わらなくちゃいけないのか。全学生の決起に向かっての歴史を変えるような挑戦です。
 10・3開講日集会に向かって、徹底して学外でも訴えて労働者や市民が結集した。こちらから処分撤回を大学の枠をこえた社会問題にしちゃった。それで京大当局も簡単には踏み込めない。今の京大攻防が、全国大学でストライキができる学生運動を切り開いていくモデルケースになっています。
 黒川 10月3日に看板を破壊した職員は誰もその行為を正当化できていません。「俺は個人的にはもうやりたくない」って(笑)。正しいと思って胸張ってやっていないことはわかります。
 当局は「これが正しい京大のあり方だ」と全然示せていない。だからこそ学生の方から、「社会において大学はこうなんだ」「こういう大学にしたいんだ」「学生ってこういう存在なんだ」「自治は大事なんだ」ということをもっと豊かに話せるようになりたい。「自治」や「学生運動」は、日本では60〜70年代に終わったもので、「何も変わらなかった」みたいな言説が流布されています。でも、「昔あったものを取り戻したい」という話ではなく、アクチュアル(現実的)でいま通用するものとしてやりたい。
 私は、当たり前の人間関係が社会的な差別構造や搾取で分断されている中で、共同性を取り戻したい、失いたくないという気持ちで自治活動に参加し始めました。

怒りと結ぶ闘いを

 坂野 沖縄大学や法政大学での状況はどうでしょうか?
 赤嶺 昨年の秋に、東大卒の電通の女性労働者の過労自殺が問題になった時、沖縄大でこのことを論議しようと思いました。ずっと討論してきた沖大生は、週6日のバイトをしており、家族の携帯電話代も払って、靴に穴が開いても買いに行く時間がない。自分を人間として維持する時間がない。目の前の沖大生が、自殺した24歳の女性労働者そのものだった。まったく同じものを背負わされている。
 大学が未来を語れていないし、学生が矛盾の中ですり減らされている。僕らが時代に立ち向かい、本気で社会を変えていくことが、目の前の学生と結びつく力になるんじゃないかな?  「大学とは何か」「社会とは何か」と必死に語ることが本当に重要です。
 洞口 一昨年の安保国会闘争の時から、女子学生と話す機会が増えました。全学連運動が大きくなっていくためには、もっと私たち自身が変わっていくこと、女性が置かれている現実に肉薄していくことが必要です。みんな「絶対に戦争を止めたい」と思っているけど、バイト漬けだし、月曜になったら授業も始まる。資格も取らなくちゃいけない。「じゃあ自分の大学に帰って何ができるのか?」という話になります。だからこそ、今の京大での闘いにはすべてを獲得するものすごい可能性があると思います。
 私が討論している法大1年の女子学生は、昨年の4月から授業に15回くらいしか出られていない。母子家庭で育ててくれたお母さんに恩返ししたいと、就職のために法大に入っても、資格だ競争だとあおられて、授業料のために奨学金を借りて、それを返すためのバイトの掛け持ちで授業に出られない。彼女と話す中で私自身が問われます。私は彼女を「救う」立場ではない。彼女が人生かけて立ち上がるのは、簡単なことじゃない。でも、彼女は韓国の闘いにめちゃくちゃ空気が入っています。相手が「闘う仲間だ」と確信することが重要なのかなと思います。
 赤嶺 さっき僕が話した沖大生は、昨年5月のキャンパス集会に登場して発言しました。きっかけは「誇り」です。「人間として絶対にこんなものは認められないんだ」という気持ちを大事にする運動は、一番学生と結びつけると思います。その学生が一番怒っているのは、「大学はこんな場所じゃないはずだ」ということです。僕らはつい救済的なことを言いたくなる。でも、こんな社会や大学には反対なんだ、全基地撤去だ、戦争絶対反対だと言ってこそ、すべてを取り戻したい学生の怒りと結びつくことができる。「労働者・学生はゼニカネ以外では立ち上がらない」という「常識」をぶち破る中で信頼をかちとれる。
 黒川 ある私大では、1年生の時からA〜Eでランク付けされてEランクになると親に連絡がいく。大学が学生をそういう位置付けしかしない。「こんなことするために大学に入ったの」と。
 坂野 「グローバル大学」や「グローバル人材」の中身は、軍事研究や原発の推進。学問のあり方が完全に転倒していて、社会を発展させる上で大学が桎梏(しっこく)になっている。大学の現状を変えるためには社会全体を変えなければいけないし、日常を変えない限り、戦争に行き着かざるをえない。

団結と組織をつくり出す

根底からの変革を

 坂野 アメリカの「トランプ情勢」についてどう思いますか?
 武田 12月12日の京都デモに参加したアメリカ人も、「みんなトランプを積極的に支持はしてないよね」と言っていました。誰もが既成政治を打破する変革を求めている。だから、1月20日の大統領就任を待たずに失望は闘いに変わってきていると思います。韓国での革命を貫徹するためにもアメリカ帝国主義の打倒は必要で、あらためてトランプ足下で闘うアメリカの労働者・学生との国際連帯が大事になってきます。
 坂野 超大国アメリカが保護主義・排外主義に走り、全世界が雪崩をうって争闘戦と戦争に向かっています。1929年世界大恐慌を受けての30年代革命情勢よりも、さらに激しく時代は進んでいます。当時はソ連スターリン主義の裏切りで闘いは圧殺されましたが、それをのりこえる運動をつくり出さなければなりません。
 赤嶺 真の労働者政党がない中で、「生きるための1票」をトランプやサンダースがかすめ取っています。労働者の怒りが戦後の「秩序」をぶち壊そうとしている中で、僕らがどういう気概で登場していくか。
 武田 どの留学生と話しても、「労働者の政党が必要だ」という主張はストレートに受け入れられます。
 作部 労働者民衆は、「大統領を選ぶ選挙」じゃなくて「現状を破壊する選挙」として見ている。みんなの意識が革命情勢になっている。その思いを世界革命へまとめ上げる国際連帯を、私たちがつくり出していると思います。
 洞口 昨年7月の参院選でも、鈴木たつおさんは「新しい労働者の政党をつくろう」という新しい選択肢として登場しました。これは、既存の政治を根底的に打破しようということです。この闘いをもっと今年は推し進めましょう。
 作部 「2018年問題」が迫っています。大量の非正規職労働者・派遣労働者がクビを切られようとしています。今年は決戦です。労働者・学生の意識もがらっと変わっていく。動労千葉の闘い、京大の闘い、そして新しい労働者の政党が基軸になりうる時代がやってきます。
 黒川 沖縄についてですが、辺野古に基地をつくらせなかったら問題は解決するわけではなく、今までの基地は残っているし、沖縄への負担押し付けや日本の帝国主義の支配はずっと続いていって、何も変わらない。辺野古新基地建設絶対反対だけでなく、全基地撤去の思いに応えられるようにしたい。実際に、集会で沖縄の人たち自身が「全基地撤去」というプラカードを掲げている。
 赤嶺 沖縄は全基地撤去がずっとテーマになっています。逆に政府は一貫してこの闘いを終息させようとしてきました。沖縄のものすごい怒りが、日米支配階級を追い詰めている。
 11月28日、翁長沖縄県知事が高江ヘリパッド建設を容認しました。ただちに沖縄大学長・仲地博が新聞に「理解してくれ」「『オール沖縄』は保守と革新の安保容認の連合体だ」と恥知らずなコメントを出しました。不満はあるだろうが我慢しろということです。日本政府が沖縄の全基地撤去の怒りに追い詰められている時に、翁長自身がその怒りをつぶしていく。まさに「オール沖縄」自身が民衆の怒りを分断している。これをのりこえる闘いが必要です。
 沖大学生自治会は14年5月に再建されました。再建時の集会への「帰れコール」から始まる2年間の格闘の中から、ついに沖大生が集会発言に決起しました。昨年の自治会選挙初日に元米兵による女性殺害事件が発覚します。すると沖大当局はただちに、「授業前5分間は授業準備時間です。クラス討論禁止です」と言ってきた。全基地撤去を訴える僕が弾圧されている目の前で、学生は信任票を入れていく。
 保守勢力と組んで労働運動・学生運動をつぶすのが、「オール沖縄」の本質です。労働組合・学生自治会の闘いしか、県民の怒りを代表できない時代です。沖大でも僕への不当処分を撤回させ、絶対に反戦ストライキをやりたい。

権力を告訴・告発

 坂野 昨年9月には、全学連大会を公安警察が襲撃するという事件がありました。
 黒川 ガサなどで「警察権力は国の暴力装置だ」とわかっていましたが、ここまで直接的な暴行なのかとすごい衝撃でした。国が戦争をするために民衆を抑えつける構図そのものだと思いました。
 洞口 11月29日に、暴行に手を染めた警視庁公安部の警察官15人を、「特別公務員暴行陵虐罪」で31人の大弁護団とともに告訴し、損害賠償請求訴訟も起こしました。公安警察の襲撃の核心は、京大学生運動への恐怖です。とにかく京大生をつぶす、絶対に第2波ストはやらせない、と。本当に追い詰められた姿です。
 昨年は国家権力との闘いに完全勝利してきました。3月に京大スト弾圧の6学生を不起訴で奪還し、4月の東京学芸大ビラまき弾圧での武田君も、5月の立川駅情宣「傷害」デッチあげ弾圧での沖大・A君も、すべて実力で取り戻しました。逮捕してもつぶせないという中で、大会会場前で実力行使せざるをえなくなった。でも大会では、例外なくみんなが団結を固めて、3回の襲撃をすべてはね返して勝利しました。
 国家権力の横暴は絶対に許さないし、これを学生運動を爆発させるチャンスにしたい。今年冒頭からの裁判には、全国からの結集を呼びかけます。

京大第2波ストが勝負!

学生に依拠し闘う

 坂野 この時代に「学生運動のリーダー」はどうあるべきでしょうか?
 黒川 相手の抱えている問題にどこまでも寄り添って、その人の立場から世界を見る。何を思ってそういう発言をしているのか、寮自治をどう見ているのか、どこまでも思いに寄り添える人であるべきだと思います。そういう思いに運動全体が応えられるか、リーダーがそういう思いをどこまで拾えるかがすごく大事だと思います。
 資本主義―新自由主義の問題や反戦活動を訴えるにしても、どこまで具体的な一人ひとりの思いに寄り添えるかで、アジテーションの質や言葉の選び方も変わると思います。そして、スローガンやアジで伝えきれないところをどこまで一緒に話して解決していくか。リーダーとしては大きな方針を打ち出さなきゃいけないけど、大きい話の根底には一人ひとりの思いがあるから、そこにどこまで寄り添えるか。
 坂野 京大には今、どういう運動が必要ですか?
 黒川 「京大のあり方」を学生が提起することが必要です。「○○反対」だけではなく、「俺たちはこれがやりたいんだ」というのを、学生の側から引き出していく。クスノキ前大看板や寮自治にしても、これだけ自由にいろんなことしゃべっていいんだよ、これだけ好きにいろんなことしていいんだよってことを提示、体現していく中で学生に考えてもらう。
 そして、これから闘いがどんどん厳しくなっていく時に、「寮生を信頼することがすべてなんだ」「そこしか依拠できるものはない」と後輩に伝えていきたいですね。

労働組合とともに

 坂野 最後に2017年の抱負をお願いします。
 作部 京大で第2波の全学ストを打ち抜けるかどうかが、学生運動の最大の課題です。人間と人間が魂をぶつけあい、ともに生きる共同性を取り戻す。生きた実践から生み出されるマルクス主義を、今の時代につくり上げたいです。
 坂野 3月の自民党大会では総裁任期が3期9年に延期され、2020年東京五輪まで安倍が居座ろうとしています。この安倍政権の改憲宣言と一体で、三里塚闘争も決戦情勢に入っています。
 斎藤 市東さんの農地を守る闘いは、韓国での革命を守る闘いにつながっています。朝鮮侵略戦争の作戦計画で、成田空港の軍事運用は重要なファクターとなっています。そのために需要もない滑走路を増やし、市東孝雄さんの農地を奪おうとしている。成田軍事空港の完成が狙われています。しかし、三里塚闘争が実際に50年間戦争を止めてきたという事実が、来日した民主労総の同志を勇気づけています。全学連として、農地死守決戦に全力で取り組みたい。
 森田 「戦争と革命の時代」のリアリティを感じます。支配階級は社会の維持に責任をとれなくなり、大学でも、学問をどうしたいのか、学生の人生にどう責任をとるのかってことがまるでない。戦争と労働者の統制しかやれない。だから、社会の主人公である労働者が「責任勢力」として登場し、大学では学生自治会がその役割を担わなくちゃいけない。その力をひとつに集め、分断に対して大きな団結をつくり出すことが新しい労働者の政党建設だと思います。
 坂野 今年1〜3月は、動労千葉・動労水戸を先頭とした動労総連合の闘いがJRで情勢を切り開き、労働者全体が2018年に向かって総決起していくという構造になる。福島では3月11日に反原発の現地行動が呼びかけられています。この1〜3月を激しく闘って、学生は4月新歓に躍り込む。
 赤嶺 沖縄でも現地情勢と切り結びながら、全島ゼネストを実現するような自治会執行部の団結をつくっていきたいです。
 武田 京大闘争が波及する中で、労働者・学生の中で「団結する」ということが身近になり、価値観の転換が起こりつつあると思います。一方で、今の新自由主義大学は最後は「自己責任」論と「能力主義」に帰着する。昨年1月の軽井沢バス事故を受けて、法大の田中優子総長は「学生は見る目を養わなくてはならない」なんて言い出した。見る目がないやつや能力がないやつは死んでも仕方ないんだ、ということです。
 結局は、こういった「リベラル」を語るような体制内左派と徹底的に闘うことと、僕ら自身が「能力主義」を意識的にのりこえ、恥ずかしがらずに真正面から「団結して生きていこう」と訴えていくことでしょうか。あとは、「ロシア革命100年」の今年だからこそマルクス主義を大衆的によみがえらせたい。
 洞口 韓国や全世界の闘いとの関係で、2017年の日本の学生運動は歴史的な位置を持ってきます。米韓で闘いが高揚する中、日本の学生はどのように闘ってゼネストを目指すのか。重要なのはリーダーを拡大することです。今の京大闘争のリーダーたちは、10年間の法大闘争の中から生まれてきました。今度は、この京大での激闘の中から、法大と全国に闘うリーダーを生み出していきたい。
 森田 広大自治会は昨年、オバマ広島訪問絶対反対で登場したことに誇りをもっています。労働者・学生の闘いのみが戦争・核をなくせる、つまり戦争と核を必要とする資本主義を倒す革命をやろうということです。この立場でキャンパスに登場していきたい。
 作部 今のブルジョアジーに、「こうやったら社会は良くなるんだ」みたいな内容は1ミリもない。危機をあおることでのみ労働者民衆を組織しようとしている。だからこそ「僕たち自身が主人公になって社会を動かそう。そうすれば戦争も止められるし、社会を動かす民衆の権力をつくることができる」と訴える時に、労働組合と学生自治会の問題になると思います。大学生自身が悩みに悩んで、討論して団結し、胸を張って社会に堂々と提示できる運動が全学ストライキです。僕は、その展望を最先端で切り開きたい。
 斎藤 2017年の客観情勢は一気に激動します。「階級支配の崩壊」を誰もが認識せざるをえない。しかし新自由主義者の「じゃあ全体が同じ低条件になればいいんだ」っていう方法は、民衆をとんでもない状況に陥れる。安倍政権の「同一労働同一賃金」がそうです。新自由主義者は、新自由主義のさらなる進展でしかものごとを「解決」できなくなる。だから、トランプみたいなやつがやる以外になくなる。「労働者の利益だ」と言って排外主義をあおる。それに対して、労働者は団結するしかない、労働者の競争では何も解決しないという意識がどんどん生まれてきています。
 すべてが「労働者政府の樹立」という回答に絞り上げられてきます。それを実現できる団結と組織をどうつくり出すのか。労働者は動労総連合を軸にゼネストを組織できるナショナルセンターを目指し、僕ら全学連は学生自治会の全国組織として、キャンパスで学生と結びついていく。そこに必死で挑戦する。情勢への挑戦権を持っているのは僕らです。その挑戦を貫徹する最先端に、京大攻防があります。当局はすべての交渉チャンネルを閉ざして、非和解の関係になった。学生の団結をどう組織するかが僕らの課題です。京大でこそ、第2波ストのできる団結をつくり出す。全学連中央執行委員会は、2017年をそうした勝負の年にしようと決意しています。

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