ファン首相退陣へ 韓国で闘い続く 100万民衆決起、年を越す 国家保安法弾圧と全面対決

週刊『前進』04頁(2811号02面01)(2017/01/16)


ファン首相退陣へ 韓国で闘い続く
 100万民衆決起、年を越す
 国家保安法弾圧と全面対決

(写真 「パククネ拘束!」「ファンギョアンも退陣しろ」と叫ぶ90万人のキャンドルの波。先頭にセウォル号遺族が立った【12月31日 ソウル】)

(写真 記者会見で国家保安法弾圧を弾劾するイジニョンさん【前列左から2人目】【1月5日 ソウル】)


 韓国では、パククネ政権打倒の闘いの真っただ中で年が明けた。パククネは弾劾訴追され、大統領職務を停止されたが、民衆が要求したことはまだ何も解決していない。パククネの代行として登場したファンギョアン首相のもとで、政権の延命を狙う必死のあがきが強まっているからだ。これとの一層激しい闘いが始まった。

「反国家文書」の流布で逮捕

 1月5日、「労働者の本」代表であり、鉄道労組の組合員であるイジニョンさんが、国家保安法違反の容疑で逮捕・拘束された。イジニョンさんは、昨年11月国際共同行動でほかの民主労総組合員とともに来日し、11・6労働者集会に参加して一緒に闘った仲間だ。また鉄道労組ソウル本部の一員として、74日間のストライキをその先頭で闘った活動家でもある。この弾圧は、民主労総の闘いと日韓労働者の国際連帯の発展に恐怖したパククネ―ファンギョアン政権が、民主労総の中心に立つ鉄道労組つぶし、国際連帯つぶしを狙って仕掛けたものだ。断じて許すことはできない。
 逮捕の理由も本当に許しがたい。イジニョンさんはネット上に電子図書館を開設して、マルクス主義の文献や社会科学の本を労働者が無料で読めるようにしていた。それが国家保安法7条の「利敵表現物の配布」に当たるというのだ。国家保安法は「反国家活動」を取り締まる法だが、「利敵表現物」とはそうした活動を宣伝・扇動する文書や絵などを指している。
 公安警察はマルクスやレーニンの文献はもとより、『資本論』の解説本や、イギリスの歴史学者E・H・カー著の『ロシア革命』まで押収した。どれも今まで書店で普通に売られてきた本だ。カーの本の押収理由について検察は、韓国の学生たちに「ロシア革命と同じやり方が必要だ」と思わせる余地があり、「左翼的な革命方法を学ぶ目的で悪用される本」だと説明したという。
 ここに明らかなようにファンギョアンは、パククネ打倒の闘いを韓国における労働者革命の始まりと感じ、その圧殺のために必死で動き出している。だがこんな歴史の歯車を50年前、100年前に巻き戻すような弾圧は、人民の怒りの火に油を注いでいる。
 イジニョンさんは5日に記者会見を開いて逮捕令状発布を真っ向から弾劾し、徹底的に闘う決意を表明した後、拘束された。記者会見には鉄道労組ソウル本部のパクチョンソン本部長も同席し、「国家保安法は悪法中の悪法だ」「労働運動をしばり、政治活動と思想・表現の自由を抑圧する策動を絶対に許すな」と訴えた。
 民主労総本部と公共運輸労組はそれぞれ6日に声明を出して不当逮捕を弾劾した。公共運輸労組は「公安勢力は生き残るために国民との戦争を宣言した」とし、権力の抑圧機構の解体こそが必要だと提起。民主労総の声明は、「キャンドル革命で一掃すべき積年の弊害が山積している」と、イジニョンさんの即時釈放とともに国家保安法の廃止へ向けて、今こそ全力で立ち上がろうと呼びかけた。

必死の延命に走るパククネ

 1・5弾圧の背景には極限まで追いつめられたパククネとファンギョアンの姿がある。パククネ弾劾のキャンドル集会とデモは国会での弾劾訴追決定後も続き、怒りはますます高まっている。
 ソウルの光化門前に集まった人の波は、12月3日の170万人(全国232万人)を頂点に、弾劾決議可決後の12月10日80万(全国104万)、17日65万(同77万)、24日60万(同70万)と途切れることなく続いた。大みそかの12月31日には再びソウル90万(全国100万)に拡大し、昨年10月末以来10回に上るキャンドル集会の参加者はのべ1千万人を超えた。
 新年のカウントダウンは広場を圧倒する「パククネを拘束しろ!」の声で迎えられた。ファンギョアン首相にも「パククネの共犯者」として即時退陣を求める声が続々と上がった。その先頭には労働者とともに、10代、20代の青年・学生が立っている。
 財閥と国家が一体となって99%の労働者人民を搾取し抑圧し支配してきたその実像が、今や次々と暴かれているのだ。パククネと韓国支配階級はもはや、むきだしの国家暴力の発動以外に、民衆の怒りを抑え込むのは不可能なところに立たされている。
 1月3日から始まった弾劾裁判でパククネは憲法裁判所への出廷を拒否し、ついに公然と開き直りを開始した。5日の法廷で、パククネの弁護人はキャンドルデモを「親北朝鮮系の労働組合が主導しており、民意ではない」と主張した。民主労総の闘いへの恐怖の吐露であり、語るに落ちるとはこのことだ。
 労働者人民による政権批判や反政府運動を「北朝鮮の手先」と言いなして、極右勢力をも動員して弾圧する。これが南北分断後の韓国における支配階級の伝統的手口だった。しかしこんなインチキで卑劣なやり方はもう通用しない。時代は完全に変わったのだ。

財閥のトップも拘束しろ!

 民主労総は1月2日、今日の韓国労働運動の原点を築いたチョンテイル青年とその母イソソンさんが眠るソウル郊外の墓地で新年の旗開きを行った。チェジョンジン委員長代行を先頭に「再びハチマキを締め直し、パククネ政権とその共犯者全員を退陣させ、『ヘル(地獄)朝鮮』を根底から変革する社会革命へと思い切って踏み出そう」「キャンドルの灯をさらに大きくし、民主労総がその先頭に立とう」と誓い合った。
 民主労総と民衆総決起闘争本部は、パククネの職務停止後も「変わったものは何もなく、抗争はまだ終わっていない」とあらためて宣言した。次の目標は「パククネなきパククネ体制」であるファンギョアン内閣の退陣と、パククネ政権が推進してきた全政策の廃棄、そして最大の核心問題である財閥の解体だ。「財閥の総帥を拘束しろ!」はすでに全人民の叫びとなっている。
 労働者革命の道に踏み出した韓国労働者人民に学び、連帯し、日本でのゼネスト実現と安倍政権打倒へ向けて、2017年の闘いを始めよう。

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国家保安法
 1948年に日本の戦前の治安維持法を原型として制定された。「国家の安全を危うくする反国家活動」とその団体を、死刑を含む厳罰で取り締まる。団体の結成や加入だけでなく、それを支持する活動もすべて処罰される。軍事独裁政権時代には労働者人民の抵抗を圧殺する手段として猛威を振るった。87年の「民主化」後も廃止されずに残り、パククネ政権登場後、治安弾圧の重要手段として再び浮上した。

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