釜山少女像 大使引き揚げは戦争行為 韓国労働者人民と連帯し少女像守り戦争とめよう

週刊『前進』02頁(2812号02面01)(2017/01/19)


釜山少女像
 大使引き揚げは戦争行為
 韓国労働者人民と連帯し少女像守り戦争とめよう

(写真 パククネ退陣で集まった5万5千人が少女像までデモ行進し盛大に序幕式。未来世代が立てる平和の少女像推進委員会のユヨンヒョン委員長が「12・28合意を廃棄し、韓日の歴史を正しく立て直すまで闘おう」と呼びかけた【12月31日 釜山・日本総領事館前】)

韓国の革命に恐怖する安倍

 日本軍慰安婦問題をめぐる「日韓合意」が突如発表されたのは2015年12月28日。1年後の昨年12月28〜30日、釜山市東区にある日本総領事館前に新たな「平和の少女像」が設置された。
 今や12・28日韓合意の破棄を求める声は韓国の世論調査では6割を超え、日韓合意や高高度迎撃ミサイル(THAAD)配備などパククネ政権が進めた全政策の廃棄が、財閥解体の声とともに、パククネ打倒に立ち上がった1千万労働者民衆の要求となっている。
 安倍政権は30日、「日韓合意の精神に反する」と少女像撤去を要求。1月6日には駐韓大使と釜山総領事の引き揚げや日韓通貨スワップ(交換)協議の中断など4項目の対抗措置を取ることを発表し、長嶺安政大使らは9日に帰国した。
 大使や総領事の引き揚げという戦争的行動をもって韓国人民を脅し、屈服を迫る安倍政権を許してはならない。
 韓国で始まった労働者革命に恐怖する日帝は、その圧殺のためにも、米日韓軍事同盟による朝鮮半島での戦争発動へと必死に動いている。安倍の真珠湾訪問が新たな戦争に踏み出すための戦争外交であったのと同様に、日本軍軍隊慰安婦問題を葬ることなしには自衛隊を朝鮮戦争に動員することはできないのだ。問題の核心はここにある。

「最終的解決」と問題を封印

 12・28日韓合意の骨子は、①日本政府は、安倍首相の「おわびと反省」を表明し、②韓国政府が設立する慰安婦被害者支援の財団に10億円を拠出する、③この合意で軍隊慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」とし、「今後、国連など国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」、④韓国政府は、在韓日本大使館前の少女像の撤去という日本政府の要求について「適切に解決されるよう努力する」----というものだった。核心は「最終的かつ不可逆的に」軍隊慰安婦問題を封印することにある。
 この「合意」には署名した合意文書もなく、安倍の「おわびと反省」に至っては、直後にパククネとの電話会談で口にしたのみだ。
 しかも今回、謝罪すべき加害者である日帝・安倍が、あたかも「被害者」であるかのように振る舞い、韓国政府を恫喝し、屈服を迫っている。1910年日韓併合に至る過程を思い起こさせる傲慢(ごうまん)さだ。
 12・28日韓合意直後、革共同は、「『日韓合意』で戦争体制構築を狙う安倍を倒せ」(本紙16年1月11日付第2713号)と宣言し、日韓合意は、日帝が国策として推進した極悪の戦争犯罪=軍隊慰安婦政策の謝罪・賠償を拒否したものであり、今日切迫する朝鮮半島情勢に対し、米韓政府と結託して北朝鮮転覆の侵略戦争を狙って仕組んだ戦争政治=新たな戦争行為だと弾劾した。
 それから1年、韓国は今、民主労総のゼネストを軸に1千万人がパククネ打倒に立ち上がる革命情勢にある。
 パククネは弾劾訴追され大統領職務を停止されたが、弾劾裁判への出廷を拒否する一方、鉄道労組代議員であり「労働者の本」代表のイジニョンさんを国家保安法違反容疑で拘束する(1月5日)など、最後のあがきに出ている。少女像をめぐる駐韓大使の一時帰国も、この国家保安法弾圧と同調するものだ。
 民主労総は「変わったものはなく、抗争はまだ終わっていない」と大統領職務代行のファンギョアン首相退陣とパククネの全政策の廃棄、財閥の解体まで闘うことを宣言している。革命に恐怖する日韓両政府の反動を打ち破り、国際連帯の力を発揮することが求められている。

国家による極悪の戦争犯罪

 1931年から45年敗戦まで朝鮮・中国からアジア・太平洋全域にまで拡大した日本帝国主義の侵略戦争に伴い、日本軍は占領・駐屯したすべての地域に日本軍専用の慰安所を作り、当時、日本が植民地支配していた朝鮮半島や台湾で集めた女性たちを送り出した。それが間に合わなくなると現地で「調達」した。日本軍により性奴隷を強いられた被害女性は、朝鮮・台湾・日本をはじめ中国・フィリピン・インドネシア・オランダ・ティモール・マレーシア・タイ・グアム・ビルマ・ベトナムなどに及んだ。
 日本軍兵士の「強姦(ごうかん)防止」「性病予防」を口実に設置された「慰安所」「慰安婦」はその徴集・移送、管理・運営まで直営・委託にかかわらず日本軍が発案・実施した国策としての軍隊慰安婦制度だった。その徴集・連行に直接・間接の強制があったかどうかを問わず、自由を奪われたまま繰り返された性暴力、前線での戦病死や戦後の殺害・置き去りなど、「強制連行」の有無だけを問題にする否定論がどれほど許しがたいものであることか。
 海軍主計大尉だった中曽根康弘も戦後、手記(『終わりなき海軍』収録)に「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して、慰安所をつくってやったこともある」と書いている。
 91年8月14日、日本軍慰安婦とされた金学順(キムハクスン)さんがソウルで名乗りを上げて以来、アジア各地で多くの女性たちが勇気ある告発に立ち上がった。
 彼女たちの共通した思いは、もう二度と自分たちのような少女を生み出すことのないように、戦争は絶対にだめだということだった。そのために日本軍慰安婦制度という国家的戦争犯罪の真相究明と責任者処罰、謝罪・賠償と名誉回復、そして再犯防止のための教科書への記載と記念事業を求めた。この要求は、戦争のない世界をつくろうという革命の要求にほかならなかった。
 ここに日帝・安倍政権が少女像を恐れる理由もある。少女像を守り、育てる闘いは、資本主義社会に終わりを告げる闘いそのものだ。その少女像は、12・28合意時点から1年で倍増し、韓国国内に55体、海外にもアメリカ、カナダなど6体、さらに広がろうとしている。日本にはまだない。

12・28日韓合意を破棄せよ

 この時、許しがたいのは日本のマスコミ、既成勢力の総屈服・翼賛状況だ。「ソウル・日本大使館付近の少女像移転が進展しない中での設置劇に、日本側の不満は強まっている」「まるで『振り込め詐欺』(首相側近)」などと報道した朝日新聞(1月1日付)をはじめ、軒並み日韓合意を大前提として韓国の労働者人民の要求を不当なものだと切り捨てている。
 1月12日に都内で開かれた在日本大韓民国民団(民団)の新年会で呉公太(オゴンテ)団長が釜山の少女像について「撤去すべきだというのが、私たち在日同胞の共通した切実な思いだ」「合意が履行されずに再び両国関係が冷え込み、私たち同胞はまたも息を殺して生きなければならないのか」と「切々とのべた」と報道された(産経新聞はじめ各紙)。日韓の国会議員ら約800人がこの場に出席していたが、日本共産党の議員をはじめ誰一人、日韓合意に異を唱え、韓国の民衆とともに闘おうと呼びかける者がいなかったのだ。
 このような「屈服」が「在日同胞の切実な思い」であるわけがない。一昨年秋の戦争法案をめぐり、川崎で在日一世のハルモニたちがデモを行ったように今も戦争に突き進む安倍政権への怒りが在日社会に充満している。日帝の侵略戦争と植民地支配を経験し、またはその経験を世代を超えて歴史的に継承してきた在日朝鮮人民が、韓国でのゼネスト民衆総決起―革命情勢に胸を躍らせないはずがない。少女像撤去を要求する安倍政権に怒らないはずがない。
 すでに1月8日、在日2世を代表とする日本軍「慰安婦」問題解決全国行動が「条件付き謝罪は謝罪ではない。日本政府は日韓合意の破綻を認め、『慰安婦』被害者と韓国の民意に向き合え」と声明を発した。1月14日には婦人民主クラブ全国協議会が安倍政権弾劾の声明を出した。外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会と「朝鮮戦争に反対する在日朝鮮人の会」は、「軍隊慰安婦問題の日韓合意破棄!」を呼びかける戦争反対の賛同署名を呼びかけている。
 労働者の国際連帯で米日韓による朝鮮侵略戦争を始まる前に止める闘いに立ち上がろう!

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