全員解雇・別会社化で労組解体狙う大阪市営地下鉄・バス丸ごと民営化 小池都政が参考にする「大阪方式」の正体

週刊『前進』02頁(2818号01面03)(2017/02/09)


全員解雇・別会社化で労組解体狙う大阪市営地下鉄・バス丸ごと民営化
 小池都政が参考にする「大阪方式」の正体


 大阪市営地下鉄・バスの丸ごと民営化・株式会社化攻撃が本格化している。交通局職員全員の解雇と試験による選別採用で労働組合を根こそぎ解体する歴史的攻撃である。小池百合子都知事はこの大阪方式を参考に、都営交通の民営化を画策している。奈良市従の下水道民営化阻止の闘いに続き、東交(東京交通労組)・都労連の労働者を先頭に、民営化絶対反対・小池打倒へ闘おう。

市が100%出資する株式会社を設立し

 大阪維新の会・吉村博文大阪市長は昨年12月、市議会で市営地下鉄民営化基本方針を採択した。攻撃は3分の2の賛成が必要な地下鉄・バスの廃止・民営化条例の制定へ一気に動き出している。
 大阪市営地下鉄は2014年度の旅客運輸収益が約1426億円、職員数5217人であり、全国では東京メトロに次ぎ都営地下鉄を上回る事業規模である。(図参照)
 従来の自治体の事業民営化は売却や譲渡が多かった。今回は役所の巨大な一部門を切り出し、市が100%出資する株式会社をつくって丸ごと民営化する初のケースだ。大阪地下鉄株式会社を軸に大阪シティバス、大阪メトロサービス、大阪地下街の各株式会社に分社化・グループ化して全職員を非公務員化する。人件費削減とエキナカ事業で年間280億円以上の経常利益を上げ、将来は株式上場をめざすという。
 東京都の小池知事は1月27日の会見で「大阪を参考に都政改革を進めていく」と述べた。知事は都営地下鉄・バスの丸ごと民営化に手を付けようとしている。

国鉄闘争化を恐れ労組活動家の排除狙う

 来年4月からの大阪市営地下鉄・バスの丸ごと民営化・分社化をもくろむ攻撃は、今年4月からの下水道事業の丸ごと民営化に続くものである。職員全員に転籍か配置転換、自主退職、分限免職を迫る。転籍や配転を希望しても、新会社の採用試験や配転先の試験で選別して首を切り、労働組合を根こそぎ解体する大攻撃である。
 大阪府・市特別顧問を務め、東京都政改革本部を統括する特別顧問となった上山信一慶応大学教授は、共著『検証/大阪維新改革』(15年11月)で「地下鉄、バス、水道などの民営化は、国鉄と郵政の民営化に続く戦後最大の行政改革」とうそぶいた。1980年代、加藤寛慶大教授(当時)は「行革ができなかったら革命しかない」と叫び、中曽根政権は国鉄分割・民営化を進めていった。今や安倍政権は朝鮮戦争と改憲、民営化と労働法制大改悪、労組破壊に突進している。その先兵として第2の分割・民営化攻撃をしかけるJRとともに、橋下徹・維新の会は大交(大阪交通労組)・大阪市労連の破壊を狙い、小池知事は東交・都労連破壊に踏み出そうとしている。
 今回の大阪市営地下鉄・バス、下水道民営化は、国鉄分割・民営化以上の最悪の攻撃である。国鉄分割・民営化は、いったん全員解雇・選別再雇用という形を取って労働組合の壊滅を狙った。しかし動労千葉をはじめ闘う労働組合は団結を守りぬき、外注化阻止・非正規職撤廃の闘いを発展させてきた。30年にわたって1047名解雇撤回が闘われ、国と資本による不当労働行為を暴いて最高裁決定を引き出し、JRを追いつめている。そしてついに闘いは、JR資本とJR総連カクマルが結託した労働者支配を崩壊に追い込むところまで前進している。
 国鉄闘争の前進に恐怖した大阪市当局は、国鉄分割・民営化時と違い、職員全員に退職金を払うことで労使間の協約、労働条件、慣行のすべてを断ち切り、新会社には試験に合格した者のみを採用するとした。民営化プランにある「必要な職員を引き継ぐ」とは、それ以外は採用しないということであり、労組活動家排除の意図を露骨に示している。しかし労働者の怒りと闘いを押しとどめることなどできない。

労働組合幹部が手先になり現場売り渡す

 大阪市営地下鉄・バスの民営化をめぐる経過は本当におぞましい。
 2011年11月の大阪府知事・市長ダブル選挙(維新の会が勝利)後の12年6月、府市統合本部は公営を攻撃する提言を発表した。「何もしないでいると持続可能性が危うくなる。民営化で収入増とコスト減を達成できる」「運転士の1日の業務は私鉄などより短く、延長できる。運転士、駅員の削減が可能」「バス運転手の年収は民間より40%高い。保守は外注化すべき」「黒字化できる系統と赤字路線に分けバス以外への転換も」と廃止まで主張した。
 13年1月、大交本部は当局と民営化に向けて協議を進めることで合意。翌2月、条例案が上程された。大交本部は当局とボス交を続け、16年5月には「労使協議」と退職金の保証を再確認し、7月には形ばかりの「解雇回避努力」を求めた。民営化を前提に組合員の首を差し出したのだ。絶対に許せない。現場労働者が組合を取り戻す時だ。

絶対反対貫く奈良市従の闘いに続こう

 大阪市「地下鉄事業株式会社化(民営化)プラン」が示すのは「去るも地獄、残るも地獄」と言うべき未来である。JRのように職員を削りに削り、成果給に変えて人件費を減らし、公共交通の使命を捨てて赤字路線を廃し、エキナカで金もうけをたくらむ。その時、商店街は廃業続出で「シャッター通り」と化す。安全崩壊と住民の生活破壊は必至である。
 怒りと闘いの爆発は不可避である。奈良市従の下水道民営化阻止の闘いのように、現場業務を担う労働者が誇りと団結を固め絶対反対で闘うなら攻撃をはね返すことができる。国鉄決戦・都労連決戦を闘い民営化を粉砕しよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加