焦点 米国務長官が日韓と緊急協議 対北朝鮮の「戦争辞さず」

週刊『前進』02頁(2830号02面04)(2017/03/23)


焦点
 米国務長官が日韓と緊急協議
 対北朝鮮の「戦争辞さず」


 史上最大規模の米韓合同軍事演習が展開される中、米トランプ政権の国務長官ティラーソンが15日、初めて来日した。
 「北朝鮮を非核化しようとする米国の20年間の努力は失敗に終わった。今や新しい方策が必要だ」──。ティラーソンは16日、安倍との会談に先立ち、岸田文雄外相との共同記者会見でそう明言した。さらに安倍との会談において「(対北朝鮮政策は)すべての選択肢がテーブルに載っている」と述べた。
 現職の米政府高官が、過去の歴代政権が行ってきた外交政策を「失敗」と表現するのはきわめて異例のことである。それほど強い言葉をあえて用いて、トランプ政権の対北朝鮮政策の根本的な転換、すなわち米軍の先制攻撃による北朝鮮転覆の全面戦争を辞さない考えを明確に打ち出したのだ。事実上の「朝鮮戦争突入宣言」を日帝に対して突きつけたということだ。
 安倍・岸田は会談の詳細を明かしていないが、トランプの対北朝鮮政策に基本線で合意したことは疑いない。
●94年朝鮮危機で戦争寸前に
 ティラーソンの言う「20年間の努力」とは、1994年の「朝鮮危機」以来の対北朝鮮政策のことを指している。93年に北朝鮮・キムイルソン(金日成)政権がNPT(核不拡散条約)からの脱退を表明したことに対し、米クリントン政権は94年、北朝鮮の核施設を先制攻撃によって破壊することを柱とする全面戦争計画の発動を画策した。米国防総省は実際に米軍兵力50万人、航空機1600機、艦船200隻の出動を計画、そしてこれを実行すれば米軍5万2千人、韓国軍49万人、民間人含めて100万人以上の死傷者が出ると予測した。
 だが、この恐るべき大戦争はすんでのところで回避された。韓国では鉄道ストを中心に戦争反対の激しい闘争が展開され、キムヨンサム(金泳三)政権(当時)は米軍への協力拒否を声明せざるを得なかった。さらに、在日米軍司令部は日本に対し、米軍による成田をはじめ民間空港の使用や自衛隊の後方支援など1059項目を要求したが、当時の日本政府は憲法9条との関係で「不可能」と回答。米政府は戦争遂行は困難と判断し、北朝鮮に核開発の凍結とひきかえに軽水炉を提供するという「米朝合意」へと転じたのだ。
 以後、米日帝は北朝鮮に対する軍事的・経済的圧力を強めながら、次なる朝鮮侵略戦争の機をうかがいつつ、戦争を発動できなかった94年当時の制約を突破することを一貫して狙ってきた。96年以来の沖縄・辺野古新基地建設も、ブッシュ政権下での「米軍再編」も、オバマ政権下での「アジア・太平洋リバランス」戦略も、すべて朝鮮戦争(さらには対中戦争)の準備の一環であった。そして今やトランプ政権は、今度こそ朝鮮戦争を実行すると決断したのだ。
 他方、日帝政府もまた94年当時の制約の突破を狙い、自衛隊の朝鮮戦争参戦を一貫して追求してきた。2014〜15年の安倍政権による集団的自衛権行使容認と安保戦争法の強行は、この戦争政治の継続としての朝鮮戦争参戦立法にほかならない。
●日米韓連帯で戦争とめよう
 では、果たして米日帝は二十数年前に比べて「強大」になり、やすやすと戦争ができるようになったのか? 断じてそうではない。むしろ米帝は、イラク・アフガン戦争での敗北を決定的な要因として没落・衰退を深め、国内矛盾の深刻化は階級闘争の激化となってトランプを激しく追い詰めている。
 他方、戦争と改憲に突き進む日帝・安倍政権に対し、戦後一貫して戦争絶対反対を貫いてきた日本労働者階級の怒りと闘いは、今や国鉄闘争の不屈の継続と動労総連合の決起を先頭に新たな高揚局面を迎えている。安倍=日本会議による森友学園事件の発覚がこれに火をつけた。そして全基地撤去の全島ゼネストへ進む沖縄闘争、成田空港第3滑走路建設を阻止する三里塚闘争が、安倍の戦争政治の前に立ちはだかっている。さらには自衛隊内の矛盾も深刻だ。
 何より、韓国における民主労総を中心とした民衆総決起の闘いがついにパククネを打倒し、朝鮮半島の南北分断を打破する革命の展望を切り開いている。この民主労総の決起を阻止できなかったことを、米トランプ政権は過去20年の最大の「失敗」とみなしているのだ。これに対する巻き返しは、核をも含む先制攻撃をもって朝鮮戦争をやる以外にないと、激しい戦争衝動を強めているのである。
 米韓の労働者民衆と固く連帯し、朝鮮戦争絶対阻止・安倍政権打倒へ闘おう。追い詰められた米日帝に最後の断を下そう!

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