長崎の被爆者 城臺美彌子さん 安倍総理よ、憲法を私物化するな

週刊『前進』02頁(2844号01面03)(2017/05/18)


長崎の被爆者 城臺美彌子さん
 安倍総理よ、憲法を私物化するな


 6歳の時、長崎の爆心地から2・4㌔メートル離れた自宅で被爆。教育労働者となり労働組合運動を担う。2012年2月、仲間とともにNAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議)ナガサキを立ち上げ、福島の子どもたちの保養も行っている。14年8月9日、長崎市の平和祈念式典で被爆者代表として発言し、集団的自衛権行使を容認した閣議決定を「憲法を踏みにじる暴挙」と弾劾した。

 長崎の被爆者である、NAZENナガサキの城臺美彌子(じょうだいみやこ)さんから寄稿していただきました。(編集局)

安倍の暴走発言に怒りを覚える

 70年目の憲法記念日、改憲をもくろむ安倍首相の暴走発言に怒りを禁じえなかったのは私一人ではなかったと思う。「憲法を、『不磨の大典』と考える人は少なくなってきた」と述べ、自民党の改憲草案を「そのまま審査会に提案することは考えていない」と言った。私は、信用することはできんと思った。安倍政権が使う数の暴力とお得意の権力の乱用をもってすれば、すぐに「改憲草案2」ができてしまう。
 その上、「五輪が開催される2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と言い、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」と語った。さらに驚かされたのは、安倍の特技である最も姑息(こそく)な手段を持ち出したことだ。安倍の言う「高等教育の無償化」は経済的困窮者、苦学生にとってはばら色の話だ。憲法を変えるのにお金をチラつかせ、正しい判断のセンサーを誤らせないだろうか。しかも為政者が改憲を推し進めるなんて明らかに憲法99条違反である。
 また躍起になって決めようとしている共謀罪もとんでもない暴挙だ。可決・施行されると再び戦争への道だ。

共謀罪・改憲阻む行動を起こす時

 72年前、ヒロシマ・ナガサキが一瞬にして一面の瓦礫(がれき)の街になったことを忘れてはならない。私は当時6歳で危うく難を逃れたが、浦上の丘では人間が人間でなくなった、地獄のモノクロの世界であったと、昨日のように語り継がれている。「その時、ともに防空壕を掘っていた親友が、すぐそばで『目が見えん!』と叫ぶんです。開けている目は真っ白で目玉がないんです。目玉はあの閃光(せんこう)で焼け、その夜は、死んだ親友のそばで夜を明かしました」
 1947年5月3日に新憲法が施行された。子どもたちが被爆校舎で学び始めた時、教師たちはそのことを伝えた。「みんな喜べ。新しい憲法ができたぞ」「日本の国は戦争を永久にしてはいけないって書いてあるんだよ」。先生が言ったことがうれしかった。爆弾が落ちてこない、空襲警報がもう鳴らないことがうれしかった。生き残った人びとは、この日本国憲法を生きる支えにしてきた。
 しかし、60年が過ぎ、65年たった頃から、こんな声が議員たちから発せられるようになった。「古うなった。時代に合わん」「アメリカがつくった押し付け」などと。今、安倍政権が何がなんでも強行採決したいのは共謀罪だ。これさえ成立させてしまえば改憲への最短距離であることは明白だ。それは、戦前の治安維持法の復活となるだろう。戦争に反対すること、政府に批判的であることにはすべて網をかけるに違いない。
 共謀罪をとにかく採決させないように市民、労働者レベルで行動しなければならない。安倍総理よ、日本国憲法を私物化することなかれ。憲法は日本国民の宝だ。私たちは憲法で闘う。憲法改悪を狙う安倍政権を早期に退陣に追い込む行動を起こそう。
2017年5月12日

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