焦点 支配の危機を示した仏大統領選 戦争・労働法改悪に怒り噴出

週刊『前進』02頁(2844号02面04)(2017/05/18)


焦点
 支配の危機を示した仏大統領選
 戦争・労働法改悪に怒り噴出

(写真 マルセイユでの5・1メーデー。「祖国でも資本家でもなく。ルペンでもマクロンでもなく」というプラカードが掲げられた)


 5月7日のフランス大統領選の決選投票は、イギリスのEU離脱決定とアメリカのトランプ登場を受け、世界の注目の的となった。「EU離脱かEU残留か」「極右か良識派か」と報じられた。そして、マクロンが有効投票の66・1%で極右ルペンに「圧勝」したことで「安心し、株価も上昇した」と言われている。
 だが、こうした問題の設定自体が、危機の深さを押し隠すものだ。
●保守党対社会党の戦後政治が崩壊
 メディアの大宣伝にもかかわらず投票率は低かった。特に決選投票の棄権者は25・44%で、60年代末の大統領選挙以来初めて初回投票より棄権が増えた。白票・無効票も11・47%で歴史的な高さだ。棄権と白票と無効票で3割以上になる。
 ロイター通信によればマクロンへの投票者のうち2割しか彼の政策に賛成していない。ファシスト・ルペンを落とすために彼に入れただけだ。
 与党社会党のアモンは初回投票で6・36%しかとれていない。前政権与党だった保守(共和)のフィヨンは20・01%で左翼党のメランションの19・58%と比べて少差だ。
 戦後フランス政治を牛耳ってきた「保守党対社会党」の政権交代の構造は崩壊した。しかし、新たな勢力という触れ込みで登場したマクロンも薄氷の上にある。
●労組絶滅を狙う金融資本の代表・マクロン
 フランス社会党は労働組合のナショナルセンターのひとつ、CFDT(民主労働組合連盟)などを基盤にしてきた。しかし12年に登場した社会党オランド政権は直ちに税、年金、家族手当などで企業優遇措置をとった。かつての社会党の裏切りと比べてもオランドのやり方は激しい。
 15年末のISによるパリ同時襲撃事件を受けてオランドは非常事態宣言を発し、令状なしの強制捜査・拘束などの弾圧でデモ・集会を禁止。そして16年2月、労働法を根本からくつがえす新法を国会に提出した。労働組合との協約を資本が一方的に変えられるものだ。
 同時にフランス軍はシリアへの爆撃をエスカレートさせた。仏領ギニアでは採鉱を規制緩和し、熱帯林と住民生活を破壊する大攻撃に出た。
 フランス労働者階級は非常事態宣言を打ち破って大規模な集会・デモ・ストに決起した。鉄道労働者は、新労働法と「競争導入」(民営化攻撃)に対し、16年2月〜5月の3カ月で4回も広範囲に列車を止めるストを打った。8月、オランドは国会をも無視して政府権限で新労働法を通した。
 マクロンは、オランド政権の経済相として、この労働者攻撃を担ってきたが、オランドのやり方さえ「不徹底だ」と批判し、閣僚を辞任した。
 マクロンは議員でもないのに、ロートシルド投資銀行の幹部、つまり金融資本の代表として入閣していた。より徹底的に労働組合そのものをなくすことがマクロンの政策だ。彼の選挙陣営には金融業界とともに軍産複合体が最初から入っている。マクロンは、アフリカ、中東、中南米、太平洋のフランス植民地・勢力圏を支配するための戦争をエスカレートさせようとしている。凶暴性は極右と変わらない。
 フランス労働者は世界の労働者と連帯してマクロン打倒----プロレタリア革命まで闘うだろう。

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