テレワークで労働大改悪 労働者の権利奪い「個人請負」化

週刊『前進』04頁(2879号02面01)(2017/09/25)


テレワークで労働大改悪
 労働者の権利奪い「個人請負」化


 働き方改革一括法案は戦後憲法下の労働法制の根幹を破壊する。「過労死」の促進、評価制度の徹底とともに、雇用でない「多様な就業形態」を求める労働施策推進法案が入った。「個人請負」のテレワークなどで労働者であることを認めず権利を全否定する究極の非正規職化法案だ。衆院選決戦で粉砕しつくそう。

「雇用によらない働き方」

 労働施策推進法案は「労働者の職業の安定」「社会的地位の向上」「完全雇用」をうたう現行の雇用対策法と百八十度逆の法律に変えられる。法の目的に初めて「労働生産性の向上」が加えられた。労働によって産み出される利潤を増やすということであり、「労働者保護」ではなく、資本による労働と搾取の強化を法の原理・目的にすることが公然と掲げられた。
 そしてそのために「雇用」以外の「多様な就業形態の普及」を求める。フリーランス(個人事業主)、個人請負のことだ。そこでは労働者は資本との「対等な商取引の相手」とみなされる。その結果、資本の雇用責任、労働時間規制や労働安全衛生配慮義務、労働者の団結権や団体交渉権、スト権、失業手当や労災補償もないとされる。労働組合破壊だ。フリーランスの「会社勤めでなく、時間や場所、仕事も自由」とは資本にとっての「フリー」(制限なし)であり、労働者にとっては権利剝奪(はくだつ)だ。
 経済産業省は2016年11月、クラウドソーシング(インターネット利用の業務委託)仲介業者や学者などで「雇用関係によらない働き方研究会」を立ち上げた。今年3月に報告書をまとめ、「これまでの常識であった1社就業に対する兼業・副業、オフィス勤務に対するテレワーク、雇用関係によらない働き方(フリーランス)の3つが折り重なり、日本型雇用システムの見直しにつながる」と結論づけた(図参照)。「9割非正規職化」をうち出した1995年日経連報告以上の大攻撃だ。社会を激変させる究極の外注化・非正規職化だ。
 国土交通省は12年時点で在宅のテレワーク従事者が全就業者の14・2%(930万人)いると推計した。大手仲介業者ランサーズによれば、兼業・副業を含めたフリーランスは16年に1064万人に達し、前年比で17%も増えたという。
 国が全力を注いで、外注化・業務委託によるコスト削減と団結破壊を狙うフリーランスのテレワークを急速に拡大させている。

時給500円以下

 その労働条件は劣悪を極める。「働き方革命」を掲げる大手仲介業者クラウドワークスに登録する会員79万5千人中、月収20万円以上は111人。0・014%未満だ。低収入で年金や国民健康保険料を払えないフリーランスも多い。
 昨年、でたらめな医療情報や無断転用記事の乱発が明るみに出たネットサービス企業DeNA(ディーエヌエー)のフリーライターの原稿料は1文字0・5円以下であった。2千字の記事を2時間かけて書いて時給は500円以下。手直しが生じればさらに下がる。そんな金額で資料の確認や著作権の許可申請をする余裕があるわけがない。フリーライターの女性は「はかどらなければ無給の時間が積みあがる。土日も定時も関係ない。病気になっても有休もなければボーナスもない」と話す。別のシングルマザーは収入を増やすために「法定労働時間で月の『残業時間』は120時間以上。電通超えです」と語る。まさに「工場法以前」の無法状態である。すさまじい雇用破壊であり改憲攻撃そのものだ。
 安倍とともに攻撃の旗を振るのは連合本部であり、小池百合子都知事である。

攻撃の旗振る連合と小池

 法案の基礎となる「働き方改革実行計画」が3月、「一億総活躍の国創り」として安倍と経団連、連合本部の合意で決定された。実行計画は「柔軟な労働市場や慣行を確立すれば国全体の生産性向上につながる」「政労使が3本の矢となって取り組んでいく」「関係法案を早期に提出する」と明記し、非雇用型テレワークの法整備に言及した。
 連合本部は月100時間残業を合法化する「上限規制」を「大変意義のあることだ」と絶賛している。過労死遺族が痛切に批判しているにもかかわらずだ。安倍が朝鮮戦争と改憲・労働大改悪に突進している今、連合が戦前の産業報国会のように旗を振ることなど絶対に許されない。
 そして小池はテレワークを一気に拡大しようとしている。「ロンドン五輪で企業の8割がテレワークを導入した」「テレワークの定着を東京五輪のレガシー(遺産)に」「東京から変える」と公言してまず都職員に強いようとしている。

団結すれば勝てる

 都労連の総決起で打ち破ろう。動労東京の闘い、都庁レストラン闘争と結合し絶対反対で闘おう。
 国や資本がどう名づけて分断を図ろうと、労働者は労働者だ。怒りを結集し労働組合に団結して闘えば、必ずや攻撃を打ち破ることができる。セメント生コン業界で大企業の分断と収奪を許さず闘いぬいてきた全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の闘いに続き、労働法制大改悪粉砕・非正規職撤廃へ闘おう。
 安倍・小池・連合打倒へ衆院選決戦で1千万人の決起を実現しよう。11・5労働者集会・改憲阻止1万人大行進をかちとろう。
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