常磐線の富岡延伸許すな 福島現地を行く(上) 浜通り

週刊『前進』04頁(2881号03面04)(2017/10/02)


常磐線の富岡延伸許すな
 福島現地を行く(上) 浜通り


 JR東日本は10月21日、常磐線竜田―富岡間の運行を再開し、2019年度末までの全線開通をたくらむ。安倍政権とその手先・JR東日本を徹底断罪する。今号から福島の現状を報告します。

「復興」強調のJヴィレッジ



 「2018年夏Jヴィレッジ再始動 スポーツの力を復興につなげます」
 「復興」を強調するポスター(写真上)がいやでも目に入る。ここは、福島第一原発から南に約20㌔メートル地点にあるJヴィレッジ。巨大なサッカー施設だ。この地で今、「復興の象徴」でもあるかのように、施設の整備が急ピッチで進行している。労働者のプレハブ宿舎が立ち並び、最新のホテルや悪天候でもプレー可能な「全天候型練習場」も建設中だ。
 そもそもJヴィレッジは、福島第一原発の7、8号機の増設計画を進めていた東京電力がその見返りとして1997年に完成させ、福島県に寄贈したものだ。総工費130億円、12面のサッカー場や屋根つき練習場、ホテルなどを備えた施設で、その広大さにただただ圧倒される。
 全国各地の原発建設は、警察権力を動員し卑劣な手段を駆使して、反対運動を圧殺し強行された。さらには、「見返り」などで住民の頰を札束でたたくように進められた。Jヴィレッジは、原発建設のどす黒い歴史を「証言」する施設だ。
 また3・11福島原発事故後しばらくは、復旧にあたる作業員の除染や食事・宿泊の場所として事故対策の拠点となった。作業にあたった労働者の苦闘や恐怖感、〝古里を救いたい〟という思い、そして労働者の誇りの叫びが今にも聞こえてきそうだ。
 その地を今、核武装目的の原発推進、朝鮮侵略戦争と改憲のために再整備しオープンさせようと狙う。2020年東京オリンピックで選手団の合宿を招致し、その後はJリーグや高校・大学チームの練習に活用させるつもりだ。いったいどれだけの若い選手や観客を被曝させようというのだ。

富岡駅のすぐ隣は仮置き場

 JR東日本は常磐線富岡駅の建設工事を急ピッチで進めている。(写真下



 富岡駅は3・11東日本大震災で大津波に襲われ、旧駅舎は流され、周辺も大きな被害をこうむった。ここは海から約300㍍ほどの距離しかなく、海辺から平らな地形が続く。その同じ危険な場所に駅を再建しているのだ。政府やJRは、労働者や乗客が再び津波に襲われ命を落としてもいいというのか。
 駅の海側に隣接した土地は、除染で出た膨大な量の土壌や枝葉などの仮置き場となっており、黒いフレコンバッグが山のように積み上げられている。「フレコンバッグ積み込み・運搬作業」の看板のそばには作業用の重機が並ぶ。さらにそこから南側一帯には、「破砕選別」「選別物保管」「焼却」「灰保管」の四つのヤードで構成される巨大な「仮設焼却施設(減容化処理)」が広がっている。放射能で汚染された可燃物の焼却施設だ。焼却の煙で放射能を放出し、汚染を拡散させているのだ。こんな場所に列車を走らせ、住民を帰還させるなど絶対にあってはならない。
 「『復興』の名をつければ何をやってもかまわない」----これが政府やゼネコンのやり方だ。「自主避難者」への住宅提供を無慈悲に打ち切る一方で、こういうところには際限なく金を注ぎ込む。ゼネコンやそれと結託した政治家だけがボロもうけしているのだ。

(写真 「全天候型サッカー練習場」の建設現場。ゼネコン準大手・前田建設の旗が掲げられている)

(写真 フレコンバッグが、ところ狭しと積み上げられている。後方に見えるのが富岡駅)

線量が急上昇する国道6号

 福島県の浜通りを南北に走る国道6号線は、2014年9月15日に帰還困難区域の富岡町~双葉町区間の通行禁止が解除され、自動車の通行が全線で可能となった。廃炉作業中の危険な状況が続く福島第一原発から最短距離で1・5㌔もないところを走る。
 この6号線を車で北上する。道の両側は、地震と津波で破壊されたままの住宅や店舗。帰還が禁止されているため、国道からそれる道路の入り口には「立ち入り禁止」の看板が立ち、バリケードで封鎖されている(写真上)。さらに、あちこちにフレコンバッグの山、また山だ。
 線量計の数値がどんどん上がり、アラームが鳴り続ける。緊張が走る。最高値は毎時2・316㍃シーベルト。値が低くなるように仕組んでいる政府の計算方法でさえ、年間で10㍉シーベルトにもなる高放射線量だ。除染されたアスファルト上の、さらに車の中でこの数値だ。国道から離れた場所はいったいどれほどの放射線量なのか。およそ人が暮らせる場所でないことは明らかだ。
 ところが、政府は2019年度末までに双葉駅周辺などの避難指示を解除し、順次、区域を拡大しようとしている。政府とJR東が一体となった帰還強制を絶対に許してはならない。
(本紙・北沢隆広)

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