常磐線の富岡延伸許すな福島現地を行く(下)「希望の牧場」吉沢正巳さんに聞く

週刊『前進』04頁(2885号03面02)(2017/10/16)


常磐線の富岡延伸許すな
福島現地を行く(下)
「希望の牧場」吉沢正巳さんに聞く

 9月初旬、福島第一原発から北西約14㌔メートルにある「希望の牧場」を訪問し、代表の吉沢正巳さんにお話を伺った。吉沢さんは3・11福島第一原発事故以前から牧場で牛を飼い続けている。原発事故後、国は非情にも被曝した牛の「殺処分」を決定した。吉沢さんは牛飼いとして国の指示を拒否。今も約300頭の牛を守り、「原発の時代を終わらそう!」と全国を駆けめぐっている。

浪江の町には未来がない!

(写真 群がって干し草をはむ牛)

 牧場のある浪江町は今年3月31日、被曝強制の「20㍉シーベルト基準」に基づき、面積で19%、3・11前には人口の83%が住んでいた地域の避難指示が解除された。
 吉沢さんは浪江町の現状から語り始めた。
 「浪江町は2万1千人の町だったんですが、ほとんど人が戻りません。浪江町の住宅取り壊し申請が2500件です。更地になった家が多く、街は虫食い状態。学校も病院も商店街もない。私は町が崩れると思っています」「フレコンバッグは仮置き場にずっと置かれることになります。『セシウム古墳地帯』です。農業の未来はない、子どもたちが戻っても将来はない、とはっきり言ったほうがいいんです」
 吉沢さんの言葉には「チェルノブイリ化」しつつある現状への無念の思いと悔しさ、原発事故への憤怒がほとばしる。話はJR常磐線の開通攻撃にも及んだ。
 「JRは列車を通すと言っています。双葉町は駅周辺に復興拠点を造ると言っている。列車を通すから人がいないとまずいんです。政府は、オリンピックまでに『復興』の映像や写真が欲しいんです。オリンピック後は住民を捨てる。避難解除したからと賠償も打ち切る」
 吉沢さんの政府やJRへの怒りは深い。今年4月1日の常磐線浪江開通に対し、吉沢さんは動労水戸とともに浪江駅前で抗議行動に立った。駅構内から出てきた政府の原子力災害現地対策本部長・高木陽介にも激しく詰め寄った。

人生かけ原発と戦争なくす

(写真 「原発一揆」の旗を掲げた車の前に立つ吉沢さん。この車で全国をまわっている)

 話は切迫する朝鮮侵略戦争情勢に進んだ。
 「今は戦争前夜だと思います。北朝鮮への攻撃の前夜です。原発の時代への逆戻りは戦争の時代への逆戻りと深くからみ合っています」「もう一方で、小池百合子が関東大震災での朝鮮人大虐殺の歴史を塗り変えようとしている」と、危機感と憤激を語った。
 続けて「沖縄は米軍基地問題で苦しんでいます。沖縄は長く闘っている。福島は沖縄の闘いに学び、沖縄と福島は深く連帯し合い、協力し合って頑張るべきです」「再び戦争に向かおうとしている。戦争で金もうけするやつがいるんです。三菱や日立などの企業は新幹線や原発、ミサイル、潜水艦まで海外に売り込もうとしている。安倍が先頭でセールスをやっているんです。本当に腐り切っている」と弾劾し、「団塊の世代である60代の人が頑張るべきです。出番が来ている。原発、戦争をなくすため、残りの人生を闘いましょう」と熱く呼びかけた。
 なによりも吉沢さんが期待するのはこれからの世代だ。吉沢さんは全国の小中学校、高校、大学をまわり、3・11東日本大震災・福島第一原発事故の真実を伝えるために体育館などで話している。そこでつかんだ確信を教えてくれた。「希望の牧場の話を聞いて、ある中学校では生徒が独自に地震の被害地への街頭募金を始めたそうです。それまで立候補がいなかった生徒会長選に4人も立候補するとか。しっかり伝えれば彼らの心に入ります」
 生徒たちから送られた、A4の大きさの厚い感想文集を吉沢さんが何冊か取り出した。どの感想もびっしり文字が並ぶ。子どもたちが吉沢さんの話を真剣に受け止め、考え、歩む養分にしている。それが読む者の心に伝わる。

広く深い連帯つくり出そう

 「原発の時代をやめなければならない。ではどう闘うか」。吉沢さんは語気を強め、話を続けた。
 「原発の時代を乗り越えるために、新しい実力闘争が必要です。それは広く深い連帯をつくり出すことです。そのために、宣伝を相当工夫することが必要」と、吉沢さん自身が渋谷・ハチ公前で百数十回もマイク宣伝をしてきた経験と、そこで得た信念を語った。
 「マイクで人の心をしびれさせる、心をわしづかみにするような宣伝、話をすることが必要です。〝釣り針の返し〟のように、相手の心に刺さって抜けない、言葉はそういう威力を持つべきです。新聞を作るんだったらプロの新聞屋を目指す。ビラだったら、読んだ人が魂や心を吸い寄せられるものを作るべきです」
 吉沢さんの力のこもった話にぐいぐい引き寄せられた。吉沢さんが強調することは、プロレタリア革命の実現へ1千万人と結びつく闘いを始めた私たちにも差し迫った課題だ。全党の同志、読者の皆さんとともに『前進』の一層の改革・飛躍を成し遂げる。吉沢さんの言葉を深く胸に刻み、希望の牧場を後にした。
 戦争か革命かの階級決戦に突入した。斎藤いくま候補を押し立て、衆院選決戦に大勝利しよう。10・21JR常磐線富岡延伸阻止闘争を打ちぬき、11・5全国労働者総決起集会―改憲阻止1万人大行進を成功させよう。7年目の3・11に向け、福島の怒りの総決起を実現していこう。
(本紙・北沢隆広)

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