新幹線台車が破断寸前 異常知りつつ3時間走行 反合・運転保安確立の18春闘へ

週刊『前進』04頁(2907号02面01)(2018/01/15)


新幹線台車が破断寸前
 異常知りつつ3時間走行
 反合・運転保安確立の18春闘へ

(写真 台車の側面に入った14㌢の亀裂)


 昨年12月11日、東海道・山陽新幹線の「のぞみ34号」で台車に亀裂が入り、破断寸前となる大事故が起きた。亀裂があと3㌢進んでいれば台車は破断し、重さ何百㌔もある車軸は固定されずに飛び出して、列車は脱線・転覆、尼崎事故をこえる大惨事になっていた。「新幹線安全神話」は根底から崩壊した。

軽量化設計で台車ももろく

 事故を起こしたN700系の車両は、2002年からJR東海とJR西日本が共同開発したものだ。それは、スピードアップのためギリギリの軽量化を図るという設計で造られている。
 台車に入った亀裂は底面が16㌢、両側面が14㌢で、側面の亀裂があと3㌢進んでいたら、台車は完全に破断していた。
 のぞみ34号は博多駅を午後1時33分に出発し東京に向かった。午後1時50分、小倉駅を出た時に乗務員が「こげた臭い」を感じた。福山駅を過ぎたところで乗客が「車内にもやがかかっている」と通報した。台車に入った亀裂で台車枠がゆがみ、台車に固定されているモーターの力を伝える継ぎ手などに異常な力が加わり、ギアボックスから油が漏れて焼け焦げ、異臭・白煙が放たれたのだ。
 岡山駅から乗り込んだ車両保守担当者が「うなるような音」を確認し、新大阪駅で床下点検を行うよう提案したが、東京の指令が「聞き逃した」とされている。それならば、指令とのやり取りの全経過を公開すべきだ。新大阪駅では「異常なし」で運行がJR東海に引き継がれ、京都駅を過ぎたところで異臭が確認され、名古屋駅での床下点検で油漏れが発見されて当該列車は運行停止になった。
 異常は小倉駅を出た頃に察知されていたが、その報告は3時間以上も握りつぶされた。もし東京まで走らせていたら、史上空前の大惨事になっていた。
 この全過程に貫かれているのは「安全より定時運行優先」の金もうけ主義であり、「新幹線は事故を起こさない」という神話を過信した安全の無視だ。

過去の事故の教訓は踏みにじられた

 同様の事故は2010年3月3日にも起きている。新幹線の車内で焦げ臭いにおいがし、白煙が充満して、新神戸駅で運転打ち切りになった事故だ。この事故では、ギアカバーが破損し、油漏れが起きていた。台車の亀裂は発見されなかったが、見落とされた可能性もある。使用された車両も、今回と同じN700系だった。この時の事故の教訓は、まったく生かされなかったのだ。

民営化こそ安全破壊の元凶

 今回の事故を運輸安全委員会が「重大インシデント」に指定し、国土交通省は「緊急会議」を開いた。だがそれは、事故の本質を隠すためのものだ。
 在来線車両の台車検査は1986年に廃止された。以降、台車の亀裂の有無やギアボックスの油漏れ・変色は検査項目にも入っていない。国鉄分割・民営化で「安全は輸送業務の最大の使命である」とした国鉄の安全綱領は破棄され、「予防保守」の原則は捨てられて、「壊れたら直す」というやり方に転換された。
 鉄道事業法の改悪で2002年からは新造・改造された鉄道施設や車両に対する国の確認や検査が廃止され、JRが自ら確認すればいいことになった。この制度のもとで検査周期の延伸や検査・修繕部門の要員削減、外注化・非正規職化が進められてきた。安全破壊の責任はJRだけでなく運輸安全委員会を含む国土交通省にもある。
 そして、JR総連・東労組を始めとした体制内労組がこの施策を率先推進してきた。この構図の原点は国鉄1047名の解雇にある。JR体制を打倒して労働者が職場を支配しない限り、安全は保てないのだ。

今こそ動労総連合の本格的な建設を

 JRの在来線は私鉄大手15社平均の約10倍の事故を起こしている。特に電力関係では、JR東日本で12月16日に起きた京浜東北線のパンタグラフ破壊事故など、目を覆うばかりの惨状だ。新幹線での車両故障などの事故も増えている。
 今回の事故についてJR西日本社長の来島達夫は「おわび」と称して頭を下げたが、「社員一人ひとりの安全最優先の意識とそれに基づく考動を緊張感をもって進めていく」という言い分は、現場に責任を押し付けるものでしかない。
 107人の命を一瞬に奪った05年4月25日の尼崎事故の遺族たちは、「あの時と全然、変わっていない」「安全のための人手を減らして、運行を止めない」と怒りをぶつけている。
 資本に安全を強制できるのは闘う労働組合だけだ。「闘いなくして安全なし」が万国の鉄道労働者の共通のスローガンだ。動労総連合を全国の職場に建設し、反合理化・運転保安確立へ18春闘を闘おう。

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