安倍の「働き方改革」うち砕こう 全労働者を非正規職化し、命まで奪う

週刊『前進』04頁(2911号02面01)(2018/01/29)


安倍の「働き方改革」うち砕こう
 全労働者を非正規職化し、命まで奪う


 安倍政権は1月22日に始まった通常国会を「働き方改革国会」と位置づけ、「働き方改革関連8法案」を押し通そうとしている。安倍は同日の施政方針演説で、改憲の早期実現を強調するとともに、「誰もが能力を発揮できる、柔軟な労働制度へ抜本的に改革する。70年ぶりの大改革だ」と言い放った。「70年ぶりの大改革」とは労働法制における「戦後レジームからの脱却」であり、「工場法以前に戻せ」ということだ。

個人請負化で雇用を破壊

 安倍が唱える「働き方改革」は、長時間労働を是正するものでも、低賃金にあえぐ非正規職労働者の状態を改善するものでも断じてない。安倍政権と資本の狙いは、労働者全体を非正規職化することにある。
 国会に提出されようとしている「働き方改革関連8法案」は、①労働基準法、②雇用対策法、③労働者派遣法、④パートタイム労働法、⑤労働安全衛生法、⑥労働時間等設定改善特別措置法、⑦じん肺法、⑧労働契約法の8法を、一括して改悪するというものだ。
 その狙いを端的に示しているのが、雇用対策法の改悪だ。雇用対策法の名称を「労働施策総合推進法」に変え、労働政策の基本理念を「労働生産性の向上」「多様な就業形態の普及」「評価に基づく処遇」に置くとする。雇用対策法は「労働者の職業の安定」や「完全雇用の達成」を目的に掲げてきたが、それは全面的に変えられる。「労働生産性の向上」とは、死ぬまで働けということだ。
 その基本には、「雇用」そのものをなくすという政策がある。
 昨年3月に安倍政権が策定した「働き方改革実行計画」は、「雇用契約によらない働き方による仕事の機会が増加している」ことを強調した。同時期に出された経済産業省の「『雇⽤関係によらない働き⽅』に関する研究会」の報告書は、さらに露骨に「『雇用関係によらない働き方』が企業・働き手双方にとって有用な選択肢となる」とし、「兼業・副業」「テレワーク」「雇⽤関係によらない働き⽅」が「『⽇本型雇⽤システム』の⾒直しにつながっていく」としている。
 労働者をいわゆる「フリーランス」、個人請負の事業主に変えてしまえというのだ。日本で「フリーランス」として就業している人は1122万人と推計されている。アメリカでは労働力人口の35%にあたる5500万人が「フリーランス」になっている。
 個人請負の事業主にされたら、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法などは一切適用されなくなる。長時間労働で過労死させられても、労働災害で命を奪われても、誰も責任をとらない。賃金も請負契約による報酬とされ、仕事を発注する大企業の言うがままにされる。
 何よりも、団結権・団体交渉権・争議権の労働基本権が奪われる。「雇用」をなくすとは、究極の労働組合破壊だ。労働者の団結を根本から解体することで、朝鮮侵略戦争と改憲に突き進むことが安倍の目的だ。
 だが、労働者は形の上で「個人事業主」にされようとも、団結を武器に必ず立ち上がる。労働の現実に照らし、資本に労働者性を認めさせた闘いの例も少なくない。韓国では、民主労総がこうした攻撃に粘り強く立ち向かっている。個人事業主化の攻撃は、生きるための労働者の総反乱を生み出すのだ。

評価制度の導入で格差はさらに拡大

 電通の新入女性労働者の過労自殺をきっかけに、過労死するまで働かせる資本への怒りが広く社会に噴出した。安倍もこの問題に飛びつき、「働き方改革」で長時間労働が是正されるかのようなペテンを振りまいてきた。だが、労基法改悪案は、まさに「過労死促進法案」と言うべき内容だ。
 「残業代のゼロ化」は、「高度専門業務」に就き、年収1075万円以上の労働者の労働時間規制を撤廃する。これがいったん成立すれば、年収条件はいくらでも引き下げられる。また「時間外労働に上限を課す」という口実で、逆に月100時間もの残業が合法化される。あらかじめ定められた時間を労働した時間とみなす裁量労働制も、適用対象が拡大される。すでに形骸化されている8時間労働制を、跡形もなく一掃しようとしているのだ。
 安倍の言う「同一労働同一賃金」とは、結局は労働者全体を非正規職にするということだ。
 同時に、評価制度と成果主義賃金の導入が徹底的に進む。厚生労働省の労働政策審議会が策定した「同一労働同一賃金に関する法整備について」と題する報告は、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の是正を進める」ために、「職務や能力等の内容の明確化、それに基づく公正な評価の推進とそれらに則った賃金制度の構築」を速やかに行えと言っている。「格差是正」を口実に、評価制度と成果給による労働者の分断が行われようとしているのだ。

長時間残業は連合の提案

 連合中央は「働き方改革」のお先棒を担いでいる。過労死ラインを超える月100時間残業の合法化を提案したのも連合だ。
 昨年7月、連合事務局長だった逢見直人(現・会長代行)は、月100時間の残業時間上限を労基法改悪案に明記すれば残業代ゼロにも賛成するという密約を安倍と交わした。この策動は直ちに発覚し、連合内外から激しい怒りが噴き上がって、連合は大分裂と崩壊の過程に入った。
 安倍は、労働法制改悪だけでなく改憲をめぐっても連合を自分の懐に取り込もうとして、UAゼンセン出身の逢見をその手先に使ったのだ。だが、安倍の思惑は大破産した。
 総選挙を前にした昨年9月には、神津里季生連合会長と小池百合子東京都知事、前原誠司民進党代表が極秘に会談し、民進党の解散と希望の党への合流を決めた。これもたちまち破綻した。今年に入り、連合幹部の意向に沿って画策された残存民進党と希望の党との統一会派結成の企ても、直ちについえた。
 改憲勢力=産業報国会としての連合の完成を阻んできたのは、改憲を最大の目標にして強行された国鉄分割・民営化に立ち向かい続けた動労千葉・動労水戸―動労総連合を中心とする国鉄闘争の存在だ。
 そして今、労働改悪阻止の闘いや賃金闘争の領域でも、階級的労働運動が連合を打ち倒して主流派として躍り出る時が来た。
 安倍を打倒し「働き方改革」を粉砕しよう。生きることのできる賃金を実力でもぎり取る18春闘に立とう。18年3月末を前にした非正規職の大量解雇を絶対に阻もう。2・11国鉄集会に集まり、階級的労働運動の復権をかちとろう。それこそが戦争と改憲を阻む最大の力だ。

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「働き方改革関連8法案」の主な内容
①労働基準法の改悪
 月100時間残業の合法化、「残業代ゼロ」制度の導入、裁量労働制の拡大
②雇用対策法の改悪
 名称を労働施策総合推進法に変更、労働政策の目的を「労働生産性の向上」「多様な就業形態の普及」「評価に基づく処遇」などに置く
③労働者派遣法の改悪
④パートタイム労働法の改悪
 「均等待遇」を口実に成果主義と評価制度を徹底化
⑤労働安全衛生法の改悪
⑥労働時間等設定改善特別措置法の改悪
⑦じん肺法の改悪
 労働時間規制撤廃に伴う形だけの「健康確保措置」
⑧労働契約法の改悪
 有期雇用に関する規定をパートタイム労働法に移行

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