ふくしま共同診療所杉井医師に聞く 命と健康守ろう!3・11福島へ 被曝労働拒否の闘いを全国に

週刊『前進』02頁(2912号02面01)(2018/02/01)


ふくしま共同診療所杉井医師に聞く
 命と健康守ろう!3・11福島へ
 被曝労働拒否の闘いを全国に

(写真 杉井吉彦さん 2012年12月のふくしま共同診療所設立に尽力。福島県民に寄り添う医療を担っている。)

(写真 ふくしま共同診療所)


 3・11福島原発事故から7年。福島の放射能汚染は深刻な状態が続いています。にもかかわらず避難者に汚染地への帰還を強い、他方で原発再稼働に突き進んでいるのが安倍政権です。3月11日、原発推進と改憲・戦争に立ち向かう、3・11反原発福島行動18が福島県郡山市で開催されます。福島市で診療に当たっている、ふくしま共同診療所の杉井吉彦医師に語っていただきました。(編集局)

帰還強制に不屈の抵抗続く

 まず、全体の状況ですね。3・11福島第一原発事故から7年、ふくしま共同診療所開設から5年が経過しました。今、私たちを取り巻く状況は流れが激しくなってきています。
 福島県内において「安全・安心」「帰郷・復興」キャンペーンが声高に展開されている。JR常磐線の全面開通と住民への帰還強制で、労働者に被曝労働をさせ県民に被曝を強いる攻撃がきわめて激しいスピードで行われています。
 とくに昨年3月末の「自主避難者」への住宅提供打ち切りと、それでも住宅に居住し続ける住民を裁判に訴え追い出しを図る暴挙。避難者が生活できないようにして帰還させ、被曝を強制する攻撃です。絶対に許せません。
 政府が狙っているのは、何もなかったことにすることです。福島第一原発事故と、それに伴う被害は何もないんだということにしたい。安倍首相のオリンピック招致発言の「福島の健康問題については、今までも現在も将来もまったく問題ない」という路線を貫こうということなのです。
 しかし現実には、小児甲状腺がんの患者が増加の一途をたどっています。また、政府の帰還強制にもかかわらず、各自治体を平均すると10数パーセントの住民しか帰っていません。昨年4月の今村雅弘復興大臣(当時)の「『自主避難者』は自己責任」発言は、こういう現実に対する敵の側のあせりです。安倍政権の政策が思い通りいっていない。だから、ああいうとんでもない発言になった。福島県民の抵抗で、帰還政策が進んでいないことへの政府の苦しさが表れている。人民の抵抗が不屈に続いているのです。
 「自主避難者」の間では「三里塚のように闘わなければならない」という発言まで出てきています。それはすごいことです。もともとは本当に普通の人が、そういう闘いを始めている。これに象徴されるように、人民の怒りが政府・国家に向けられ、命と健康をかけた闘いになってきている。

深刻度が増す小児甲状腺がん

 小児甲状腺がんの問題はますます深刻度を増しています。昨年12月に行われた福島県の「県民健康調査」検討委員会での公表では、小児甲状腺がんは194人。検討委員会の報告以外にも何人も患者がいることが分かっている。検討委員会もさすがに多数であることは認めざるをえなくなっています。
 がんの原因について、検討委はさまざまなことを言ってきたがほとんど根拠が失われ、今は「過剰診断」としか言っていません。そうであれば、診断をしている福島医大の鈴木眞一教授は追放しなければならないという理屈になります。ところが、依然としてすべての患者を福島医大に送り、彼らの言い方からすれば「過剰診断」をしながら治療するという矛盾したことをやっている。
 そういう言動で、甲状腺がんの患者と家族に対して二重三重の苦しみを与えている。こういうのは、本当に許せない。
 また、彼らはありとあらゆる手段を使って、データ隠しまでやっている。検査の受診率も、昨年9月30日段階の集計で60%以下に落ちています。彼らは受診率を上げる努力をまったくやらない。意図的に受診者が減っていくようにしている。受診者数が半分になったら統計としての意味がなくなります。それが一番大きな問題なのです。
 そのような状況で、検討委員会は今やぐらぐらです。健康被害は「気持ちの問題だ」などと平気で言うまでになっているひどさ。それぐらい非論理的・非医学的で、ごまかしが利かなくなっている。そこで、甲状腺検査の縮小や廃止を狙い、また組織を改組することで逃げ切ろうとしているのが現状です。
 健康と命を守る医療と闘いが今ほど必要とされていることはない。そういう時期に突入しています。

原発再稼働は被曝もたらす

 原発による被曝―健康被害の問題を反原発闘争のひとつの軸に据えて闘うことが重要だと思います。
 韓国の古里(コリ)原発周辺の住民が、健康被害を訴えて提訴した裁判で勝利を実現しました。このことで証明されたように、原発再稼働とは原発による健康被害を引き起こすものです。共産党などが言っているように「事故が起こったら福島のようになるから原発反対」というのではなく、原発の稼働がそこで働く労働者と周辺の住民を被曝させることに危機感を持つ必要があります。
 そう考えると、再稼働反対の闘いは労働者人民の命と健康を守る、絶対に譲ることのできない死活的な闘いであることがはっきりしてきます。国際的な反原発闘争の一環として、日本の反原発闘争も考えないといけないと思っています。

労働組合の力で反撃しよう

 全国で再稼働がもくろまれていますが、とりわけ、中心は新潟県の柏崎刈羽原発と茨城県の東海第二原発です。柏崎刈羽原発は最大のポイントです。まずは、柏崎刈羽原発で正面突破するという考えだと思います。日本世論調査会が昨年9月に実施した調査でも「再稼働反対」が63%という状況です。
 それを考えると、「再稼働問題は政権の命運をかけた課題」としてあるのだと思います。伊方原発・柏崎刈羽原発などの再稼働を阻止し、また高浜原発など稼働している原発を止める闘いはますます重要になってきています。
 今年の3・11は、動労水戸の被曝労働拒否の闘いを支えともに闘い、そのことで福島県民・日本の労働者人民の被曝を拒否する闘いをさらに進めるという集会でもあります。
 帰還のためのインフラ整備で、自治体労働者、交通労働者、教育労働者などが20㍉シーベルトもの高濃度の放射能汚染地域に帰らされる。これは逆に言えば、被曝労働拒否の闘いの陣営が広がるということです。労働運動の深化・発展をかけた闘いとしてある。
 そのことを確認し、スタートを切る集会としての意味がきわめて大きいと私は思っています。ですから、3・11反原発福島行動は非常に重要です。

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福島から改憲・戦争を止めよう
原発・オリンピックを打ち砕こう
3・11反原発福島行動
 3月11日(日) 午後1時開会
 郡山市民文化センター大ホール
    ※3時から郡山駅前までデモ
 主催/3・11反原発福島行動実行委員会

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