「福島はもう安全」のデマ許すな 御用学者と日本共産党が結託 内部被曝を否定し帰還を要求 『しあわせになるための「福島差別」論』を弾劾する

週刊『前進』04頁(2921号03面01)(2018/03/05)


「福島はもう安全」のデマ許すな
 御用学者と日本共産党が結託
 内部被曝を否定し帰還を要求
 『しあわせになるための「福島差別」論』を弾劾する


 『しあわせになるための「福島差別」論』という本が、かもがわ出版から発行されました。この本は「福島の放射線被曝は健康影響の出ない程度」といった主張で埋め尽くされ、「甲状腺検査の縮小」まで掲げています。安倍政権の「福島安全」「復興」のデマキャンペーンとまったく同じです。絶対に許せません。

避難・保養・医療の必要を全否定

 この本はどのページも、読んでいて怒りが沸々とわいてきます。
 とくに許せないのは、200人以上も発症している小児甲状腺がんが被曝の影響であることを執拗(しつよう)に否定し、「これまで見つかった甲状腺がんは、原発事故が原因でない」(104㌻)とまで言っていることです。
 その結論として、「『検診の縮小か手術症例の大幅な絞り込みが必要だ』という高野の主張には傾聴すべきものがあります」(201㌻)と述べます。「高野」とは、福島県「県民健康調査」検討委員会の委員と甲状腺検査評価部会員を兼ねる高野徹のことです。高野は甲状腺検査の縮小・廃止をたくらむ中心人物です。高野の主張を借りる形で検査の縮小・廃止を要求しているのです。
 この本でとくに許しがたい点の二つ目は、「子どもを『安全な場所』に保養に出すという行動は、福島が『危険な場所』であることを認める行動......。それは農産物の生産者を苦しめ、保養に子どもを出していない親を苦しめ、福島で子育てをしているすべての親を苦しめる」(20㌻)と、保養と保養参加者を激しく非難していることです。
 さらに「見当外れな放射線への恐怖心」(71㌻)「福島原発事故の被害とは、実のところ、放射線被曝によるものではなく、避難生活に起因するもの」(41㌻)と、避難者をも罵倒しています。福島県民を分断し苦しめている原因が、保養や避難であるかのように描き、〝保養をやめろ〟〝福島に帰還しろ〟と強要しているのです。
 この本の許しがたい点の三つ目は、「福島で、内部被曝のリスクは無視しても良いほど低く」(103㌻)などと繰り返し、内部被曝を否定していることです。そのために、昨年3月に亡くなった肥田舜太郎医師を「悪しき経験主義と無知(不勉強)」「有害」(117㌻)と、口汚くののしっているのです。
 肥田医師は、広島で自らも被爆する中、軍医として全力で被爆者の治療にあたりました。そこで直接被爆していない人が次々と亡くなっていくのを目の当たりにし、戦後、一貫して内部被曝の危険性を訴え続けました。それは、各地の原爆症認定裁判での勝利にも大きく貢献しています。
 この本がこれほどまで肥田医師を非難するのは、内部被曝問題を否定し、抹殺するためです。内部被曝はきわめて危険であり、核・原発と人類は共存できないことの根本問題のひとつをなします。動労水戸、動労福島の被曝労働拒否闘争も、ふくしま共同診療所の取り組みも、内部被曝問題に徹底してこだわりぬくことで、帝国主義の核政策との非和解性を貫いています。
 この本はまったく逆に、内部被曝を否定することで今も続く広島・長崎の原爆被害の実像を消し去り、営々と続く被爆者の命がけの告発と闘いの歴史を抹殺しようとしています。そしてなによりも今、そうすることで、福島の放射能汚染は恐れるほどでなく放射能との共存は可能と結論付け、強く帰還を求めているのです。福島県民に被曝を強要するこのような主張は断じて認められません。

共産党系学者が旗振り役を担う

 本書の執筆者は福島大学名誉教授の清水修二、日本大学准教授の野口邦和など14人です。福島の高校生に防護服も着用させずに福島第一原発事故収束作業現場を見学させるなど、福島で悪行の限りを尽くしている御用学者の早野龍五、開沼博らも名を連ねます。
 本書の大きな特徴は、日本共産党系の学者たちが彼らと一体となり、「福島安全」「復興」デマキャンペーンの旗振り役を担うに至ったことです。とくに清水修二と野口邦和は本書の主要部分を執筆し、かつ実質的に監修する立場であり、責任はきわめて重大です。
 清水は、3月17日に楢葉町で開催される「県民大集会」の中心的な呼びかけ人にもなっています。本書の出版と楢葉町集会はひとつながりの事態です。
 野口は、日本共産党系の原水爆禁止世界大会実行委員会運営委員会共同代表を務め、共産党の原水禁運動の中心人物です。昨年8月に開催された「原水爆禁止2017年世界大会国際会議」で主催者あいさつし、共産党機関紙「しんぶん赤旗」が写真付きで報道しているほどです。この本が共産党中央の政治的意図で出版されたことは明白です。
 共産党は旧ソ連の核兵器に「きれいな核」と賛成し、「原子力の平和利用」を唱えてきました。3・11後、「原発反対」を語るようになりましたが、この本の内容と「原発反対」は絶対に両立しません。共産党の「原発反対」が偽りであると、この本が明瞭に物語っています。共産党は、労働者民衆の「全原発を廃炉に! 核戦争絶対反対!」の願いと闘いを圧殺しようとする存在に堕しました。

3・11を成功させ命と未来守ろう

 米帝・トランプ政権が、核の先制使用と新型核兵器の開発を打ち出し、朝鮮半島での核戦争・世界戦争に打って出ようとしています。同時に日帝・安倍政権が戦争・改憲と核武装、労働法制の大改悪に踏み出しました。これは資本家階級の利益を守ることが目的です。労働者民衆にとって戦争によって守るものや得るものなど何もありません。
 しかし攻撃がどれほど凶暴に見えようと、労働者民衆の闘いが強固にある限り戦争はできません。かつての歴史も、佐野学や鍋山貞親などの共産党指導部や労働運動指導部が転向し、大政翼賛会結成にまで至り、戦争となったのです。
 今、福島をめぐって起きている事態は労働者民衆の命と未来をかけた闘いの時が到来したということです。原発事故が収束せず、フレコンバッグがいたる所に山積みの中での「復興」などウソです。安倍政権は福島を切り捨て、子どもたちの健康と命、農漁民や中小商工業者の生活など見向きもせず、戦争と改憲、原発再稼働に突き進もうとしています。その手先に転落したのが日本共産党や労働組合の腐敗した幹部です。
 日本の労働者民衆には「二度と戦争は許さない」と、一貫して戦争に反対し改憲を阻止し続けてきた誇りある歴史があります。3・11福島第一原発事故に怒り、「政府は私たちの命を守らない」と燃え広がった原発反対・再稼働反対の巨大なうねりがあります。
 必要なのは、この怒りと力で腐敗幹部を一掃し、労働組合の団結と闘いを復権させることです。イラク戦争にストライキで反対した動労千葉や、被曝労働拒否で闘う動労水戸・動労福島のような闘い、「避難・保養・医療」を掲げ粘り強い活動を展開する、ふくしま共同診療所のような闘いの中にこそ希望があります。
 労働者と民衆のゼネストと巨大なデモ、世界の労働者との国際連帯があれば、戦争は阻止できます。原発もなくせます。私たち労働者民衆が団結して闘う中に生きる道があります。
 3月11日に郡山市で開催される3・11反原発福島行動を、その出発の日としましょう。福島のみなさん、そして全国から多くのみなさんが参加して下さい。

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放射線被曝否定する『しあわせになるための「福島差別」論』

「これまで見つかった甲状腺がんは、原発事故が原因でない」
「子どもを『安全な場所』に保養に出すという行動は......農産物の生産者を苦しめ、保養に子どもを出していない親を苦しめ、福島で子育てをしているすべての親を苦しめる」
「見当外れな放射線への恐怖心」
「福島で、内部被曝のリスクは無視しても良いほど低く」

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