紹介 『野の花、――工団に咲く 世の中を変える闘争、旭非正規職支会の話』 旭非正規職支会 編 団結し困難に立ち向かう労働者の姿

週刊『前進』04頁(2927号04面03)(2018/03/26)


紹介
 『野の花、――工団に咲く 世の中を変える闘争、旭非正規職支会の話』 旭非正規職支会 編
 団結し困難に立ち向かう労働者の姿

翻訳・編集 動労千葉国際連帯委員会/発行所 労働者学習センター/頒価 1000円

 ガラス業界世界トップの旭硝子(ガラス)が韓国に進出、その社内下請け業者で働く非正規の労働者たちが2015年5月、低賃金・強労働と雇用不安に対して生まれて初めて労働組合を結成した。しかし、旭硝子は1カ月後に請負契約を解除し、170人を集団解雇。そこから解雇撤回闘争が始まった。
 日本遠征闘争に際し、韓国で出版された旭非正規職支会の闘争記録の日本語版が、動労千葉国際連帯委員会により刊行された。私は労働組合の闘いについて悩んでいた時にこの本と巡り合った。本書を読んで悩みが解決したというのでもない。ただあふれる涙を抑えることができなかった。
 「こうすればうまくいく」ということが書かれているのではない。タイトルは「野の花、----工団に咲く」。「野の花は飾らないその姿だけでも美しいけれど、名前があってもその名前で呼ばれません」(巻頭言)----派遣、下請け、契約社員など多様な名で呼ばれるが、自身の名前で呼ばれない非正規労働者を「野の花」と重ね合わせているのだ。
 その彼らが、自分はどういう家庭で育ったか、どういう職に就き、どういう思いで働いてきたのかを率直に淡々と書いている。労働組合に入る前には、労働組合が何であるか関心もなかったり、金を稼ぐために、解雇されないために一生懸命働いていた労働者たちが、悩みながらも労働組合に団結して闘う姿が記されている。一人ひとりの文章が、私に、「労働組合とは何か」の答えは一人ひとりの労働者の中にあるということを力強く訴えかけている。
 「野の花」は、「熱い太陽と激しい雨や風を受けながら自らの力で咲く」。日本の労働運動も今、大変な状況にある。しかし、現実の困難から逃げずに立ち向かう中から労働者は美しく大きな花を咲かせる力を身につけることができると、彼らは教えてくれている。
 ある組合員が「非正規職がなくなり、労働者たちが幸福に暮らし、正義に満ち、常識が通用する世の中になることを願う」と書いている。解雇を撤回させ、非正規職を撤廃し、労働者が人間らしく暮らせるその日を共に闘いとるために、私たちは恒常的な支援組織と運動の立ち上げを決断した。何よりそれは日本の労働運動をよみがえらせるために必要だ。そのためにも本書を読み、まわりへ広げていただきたい。
(全国労組交流センター事務局長・飯田英貴)

このエントリーをはてなブックマークに追加