年金機構 民営化で業務崩壊 外注化・非正規職化で大破綻 過少支給・情報流出くり返す

週刊『前進』04頁(2931号02面05)(2018/04/09)


年金機構 民営化で業務崩壊
 外注化・非正規職化で大破綻
 過少支給・情報流出くり返す


 日本年金機構で年金の過少支給や個人情報流出が続いている(表参照)。すべては国鉄分割・民営化型の社会保険庁解体、外注化・非正規職化の結果だ。

年金減らされた!抗議が殺到し発覚

 2月、年金機構が年金受給者139万人に、12月分と1月分を本来の支給額より少ない金額しか払わない重大事態が発生した。総額は37億円。「年金が減っている。暮らしていけない!」----年金事務所に問い合わせや抗議が殺到し、問題発覚の発端となった。
 年金機構は昨年、年金受給者に難解で複雑な新しい手続き書類(扶養親族等申告書)を送りつけた。所得税控除のためには、申告書の手続きが必要となる。今回の申告書は、これまでのはがき形式と違って用紙が大きくなり、記入項目も複雑になった。「マイナンバーの記入が必要」とも書かれていた。提出が必須であることも分かりづらかったため、高齢者をはじめとして未提出や記載ミスが続出し、膨大な規模の過少支給につながった。
 生活の命綱というべき年金を、あらゆる手段で減らし破壊しようとする安倍政権の攻撃の結果だ。

528万件の不正再委託で被害拡大

 加えて年金機構は3月、528万件の個人データ入力を委託した企業が、中国にある関連会社に不正な再委託をしていた事実を認めた。その結果、95万件超の誤入力と、作業すらせず放置していた件数も数限りなく、この企業の関係だけで10万4千人、総額20億円を超える過少支給となっていた。膨大な個人情報流出も判明した。
 委託企業は計画書では800人で業務にあたるとしていたが、実際は百数十人でしかなかった。手入力後に2人で突き合わせて点検するはずが、スキャナーによるデータ読み込みの過程で誤入力や入力漏れが多発し、点検作業も怠った。年金機構も1月には業務の再委託を把握していたが、代わりが見つからなかったことで2月中旬まで委託を続け、被害を拡大した。あきれ果てるばかりだ。

社保庁の国鉄型解体がもたらした

 2010年に発足した年金機構では、15年に125万件の個人情報流出が発生、17年には10万6千人の年金598億円の未払いなど重大事態が続いてきた。こうした業務破綻のすべては、国鉄分割・民営化を手本にした社会保険庁の解体と外注化・非正規職化、労働組合の変質・団結破壊がもたらしたのだ。
 07年、第1次安倍政権は5千万件の「消えた年金記録」問題をめぐる労働者の怒りを逆手にとって、社保庁を解体し年金機構設立に向けた法律を成立させた。安倍は国鉄分割・民営化のように民間手法での業務効率化を主張。09年末、民主党政権は2万人の職員の全員解雇、非公務員としての選別採用で正規職525人の生首を飛ばし、職員6割の非正規職化と外注化を強行した。自治労・社保労組本部は現場組合員の反対を押しつぶして協力した。
 民営化は悪だ。今やその全矛盾が爆発している。
 何よりそれは年金機構で働く労働者の怒りだ。3月末で契約期限に達した有期雇用職員は1356人。無期転換権の発生にもかかわらず正規職員になったのは8人、無期転換試験に合格したのは235人、不合格が268人も出た。それ以外は雇い止めであり有期雇用のままだ。「役割等級制度」のモデルケースとされたのも年金機構だ。年功制の解体、評価制度に基づく成果主義と労働者分断・団結破壊、大幅賃下げへの怒りが職場に渦巻いている。
 国鉄分割・民営化は破産し、第3の分割・民営化と闘う動労総連合の進撃が始まった。国鉄闘争と結合し御用労組幹部をぶっ飛ばしてストで闘う労働組合の団結を再生しよう。年金破壊への怒りの先頭で闘おう。

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年金機構での主な事件・業務破綻
・2010年1月 社会保険庁を解体して525人を分限免職し、6割が非正規職の日本年金機構発足
・2010年10月 国家の失態による受給権の時効を撤廃する特例給付のうち1300件、10億円を放置
・2012年2月 委託業者の誤入力で7万人の年金を過少に支給
・2015年6月 サイバー攻撃で個人情報125万人分が流出
・2017年9月 10万6千人の年金加算598億円の支給漏れが発覚
・2018年3月 139万人への過少支給が発生、委託業者によるデータ入力業務528万件の再委託による誤入力95万件超、個人情報流出、20億円過少支給も発覚

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