つぶそう改憲と戦争 憲法と人権の日弁連をめざす会代表 武内更一さんに聞く

週刊『前進』04頁(2939号03面01)(2018/05/14)


つぶそう改憲と戦争
 憲法と人権の日弁連をめざす会代表 武内更一さんに聞く

(写真 武内更一さん 憲法と人権の日弁連をめざす会代表。東京弁護士会所属。)

安倍政権に立ちはだかる

 5月18日に弁護士会館講堂クレオで開催される「こうやってつぶそう改憲と戦争 5・18集会」に向けて、集会を主催する「憲法と人権の日弁連をめざす会」代表の武内更一弁護士にお話をうかがった。武内さんは2月の日弁連会長選挙で、安倍政権の改憲と戦争に真っ向から「NO!」を突きつけ、2847票を獲得した。武内さんの呼びかけに応え、5・18集会に集まろう。(編集局)

「自衛隊」明記は戦争のため

 ----安倍政権は今年中にも改憲を発議し、来年春までに国民投票を強行しようと狙っています。安倍が進める改憲・戦争についてどうお考えでしょうか。
 まずもって言わなければならないのは、これは戦争をするための改憲だということです。安倍は9条の1項と2項を残すから今までと変わらないかのように言いますが、それはウソです。「自衛のための実力組織」の保持を憲法で認めれば、「自衛」という口実で軍備も戦争もできるようになる。今までできなかったことができるようになるのです。しかも「自衛」というのは相手との関係で決まるので、「相手の戦力に対抗するための自衛」と言えば軍備も戦争も無制限に拡大できるのです。
 したがって問題は「自衛」というウソ、その軍備や戦争が実際には何を「守る」のかです。それは人民大衆の命を守るのではない。たくさんの人びとを死なせながら、時の支配層や経済界、戦争でもうかる勢力の利益を守るということでしかない。
 今、「立憲主義」ということがよく言われます。立憲主義とは憲法に従って政治を行うことだと。しかし、これは安倍政権との対抗軸になりません。2014年に集団的自衛権行使を閣議決定した時は「安倍政権が立憲主義を無視した」という批判もまだありえたけど、今、安倍は憲法を変え、9条そのものを変えると言っているのだから、立憲主義を守れと言っても対抗軸にならない。
 だから安倍の改憲に対しては絶対反対・阻止しかありません。どんな改憲案ならいいか、どういう条文なら歯止めになるかといった議論は全部まやかしです。
 今の憲法の前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」とありますが、戦争を起こすのは政府だとはっきり書いているのは重要です。あの一文は第2次大戦の深刻な被害を踏まえたものです。そして国民が二度と政府に戦争をさせないことを決意したと書いている。戦争を止めるのは人民だということです。

司法改革と貧困化うち破り

 ----2月の日弁連会長選に出馬した際に訴えたことは何ですか。またどんな手ごたえを感じましたか。 
 私たちが訴えたのは、何よりも今、憲法9条の改悪が迫っている中で、日弁連としてこれに「NO!」と言って安倍政権に立ち向かおうということでした。
 現在の執行部は、「弁護士会内にはいろんな意見がある」と言って、日弁連を改憲に関する単なる情報提供機関にしています。しかし、憲法の基本原理が変えられ、たくさんの人を死なせる戦争を国家権力がやろうとすることに対し、弁護士は「NO!」と言わなければいけないはずです。
 また、ここ20年にわたる「司法改革」と対決し、弁護士貧困化攻撃を打ち破ろうと訴えました。新自由主義のもとでの司法改革とは、弁護士急増政策を通じて弁護士を貧困に追い込み、権力と闘えなくさせるものでした。弁護士がなぜ権力と闘えるのかと言えば、誰にも従属せずに弁護士として存分な活動ができるからです。企業や国家に従属し、お金をもらって依存しているような弁護士は、権力や企業に逆らうことはできず、むしろあちら側の利益を代弁する者でしかなくなります。
 日弁連会長選には、2年前の時から、どう考えても安倍政権がらみと見られる会長候補者が出始めました。執行部の憲法に対する姿勢が後退したのはそのためです。今年3月まで会長だった中本和洋氏は、自民党の稲田朋美議員と大阪の弁護士会で同じ派閥に所属し、彼女のパーティー券を毎年3万円分買っていたという報告書が出ています。今回の会長選に出た菊地裕太郎氏も、すでに2年前の会長選の時に、中本氏が「次は菊地さんを」という話をしていたと言われています。つまり弁護士会の人事に安倍政権が手を入れてきている。そのように私たちは見ています。
 私たちはこれと対決して会長選を闘い、2847票を獲得しました。安倍政権の改憲に真っ向から「NO!」と言って対決する弁護士がこれだけいるということは心強いことです。安倍政権にとっても無視できないことです。
 私たちが「9条改憲反対・戦争阻止、共謀罪廃止」のスローガンを掲げたことはマスコミでも注目されました。ある新聞は「武内候補は9条改憲反対」、相手候補の方は「慎重に検討する」と言っている、と報道しました。また会長選が終わるまでは私の主張を載せなかった別の新聞は、選挙後に「武内氏は『日弁連が9条改憲反対、安倍政権の前に立ちはだかる』などと訴えた」と報じました。それを見た学生時代の私の同級生からも「その通りだ!」と声をかけられました。

5月18日の集会に集まろう

 ----5月18日の弁護士会館クレオでの集会はどのような集会になりますか。
 集会では、元NHKプロデューサーで武蔵大学社会学部教授の永田浩三さんに「改憲とメディア」というテーマで講演していただきます。メディアが安倍改憲案にどのようにかかわっているのかといったことを話していただこうと思います。
 もう一人の発言者は高千穂大学経営学部教授の五野井郁夫さん。『「デモ」とは何か 変貌する直接民主主義』といった著書があり、この間の国会前デモには必ず参加している人です。「現代の治安維持法と闘う会」の呼びかけ人でもあります。
 また集会では、司法修習生への貸与金問題も取り上げます。戦後の司法修習制度では、司法試験合格者は2年間の司法修習の間、兼業や副職を禁止され、国から給費を受けて修習に専念する仕組みになっていました。それが2011年に廃止され、代わりにお金を貸す制度にされた。法科大学院を出るだけでもものすごいお金がかかるのに、司法修習も借金を負って自己責任、自己負担でやれというのですから、まさに新自由主義です。
 そうした中で法科大学院に行く人も司法試験を受ける人も激減し、これは失敗だったということで、17年に給費制に戻しました。しかし貸与制の6年間に司法修習を受けた世代は、借金を負わされたまま置き去りにされてしまいました。最高裁は今年の7月から1人平均約300万円の貸与金の回収を始めようとしています。
 これも弁護士を貧困化し、借金漬けにして、人権を守ることよりも企業の代弁者となるように追いやる攻撃です。これに対して若手弁護士を中心に、貸与金の返還請求を撤回しろということを日弁連の総意として最高裁に突きつけるべきだという運動が始まっています。
 18日のクレオ集会はこうした内容で、改憲攻撃との真正面からの対決を訴え、これをうち破る団結の力をつくる場にしたいと思います。ぜひ多くのみなさんに参加を呼びかけたいと思います。

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こうやってつぶそう
改憲と戦争 5・18集会
 5月18日(金)午後6時30分開会
 弁護士会館・2階講堂クレオ(東京都千代田区霞が関1-3)
・講演 永田浩三氏(武蔵大学社会学部教授)
 改憲とメディア~何が変えられようとしているのか~
・発言 五野井郁夫氏(高千穂大学経営学部教授)
 共謀罪廃止へ
 主催/憲法と人権の日弁連をめざす会、裁判員制度はいらない!大運動
・入場無料
 東京メトロ丸ノ内線「霞ケ関」B1出口すぐ

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