繰り返すな戦争 その実相に迫る 第2回 米軍の焦土作戦が全土を破壊 今も終わっていない朝鮮戦争

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週刊『前進』02頁(2944号02面02)(2018/05/31)


繰り返すな戦争
 その実相に迫る 第2回
 米軍の焦土作戦が全土を破壊
 今も終わっていない朝鮮戦争

(写真 艦砲射撃で破壊し尽くされた港湾都市・元山【ウォンサン】。休戦協定締結まで861日にわたり攻撃された)

 朝鮮戦争は1950年6月25日未明、北緯38度線直下の甕津(オンジン)半島での北朝鮮と韓国の軍事衝突をもって始まった。直後に米軍などが「国連軍」と称して韓国側に参戦、10月には中国が北朝鮮側に参戦し、53年7月27日の休戦協定締結に至るまで3年にわたり戦闘が続いた。その後も講和は成立せず、今日まで戦争が終結しないまま南北分断体制が固定化された。アメリカ帝国主義は、この戦争を通じて朝鮮の戦後革命を圧殺することを狙い、朝鮮全土が焦土と化すほどの爆撃と人民虐殺を強行した。

南北問わず空爆で大虐殺

 米国の著名な朝鮮史研究者であるブルース・カミングス氏は、『朝鮮戦争の起源』(邦訳・明石書店)、『朝鮮戦争―内戦と干渉』(邦訳・岩波書店)などの著書で朝鮮戦争の全容と背景を明らかにしている。
 「開戦当時、朝鮮の全人口は約3千万人だった。戦争で失われた人命は全体で300万を超えたことは間違いない。いやそれ以上、400万人に達したかもしれない。ほとんど現実とは思えないような猛烈な爆撃、医療設備の不足、酷寒、退避壕などの不足……そして〔米軍の〕焦土作戦と備蓄品の計画的な破壊という戦争の実態を考慮に入れれば、この死者数はけっして誇大とは言えないだろう」(『朝鮮戦争―内戦と干渉』)
 米軍の戦争目的は、北朝鮮軍を38度線以北に押し返すだけでなく、北朝鮮を完全に破壊して朝鮮全土を軍事制圧することにあった。だからこそ開戦直後に制空権を握った米軍は「民間人の犠牲をまったく考慮することなくじゅうたん爆撃を加えた」(カミングス『朝鮮戦争論』)のである。
 米空軍の推計では、朝鮮戦争で投下された爆弾の総量は63万5千㌧で、第2次大戦中に日本に投下された爆弾16万2千㌧の4倍近くに達する。またベトナム戦争時に残虐兵器として世界中から弾劾され、米軍も表向きには使用中止とした「ナパーム焼夷(しょうい)弾」が、初めて大量使用された(総計3万㌧以上)のも朝鮮戦争だった。さらに米軍はダムを破壊して町や村を水没させ、飢饉(ききん)に追い込んだ。
 空爆を指揮した米空軍司令官カーティス・ルメイは、後に「3年ほどの間にわが軍は北だけでなく南も含め朝鮮のすべての町を焼き尽くした」と語った。また現地で空爆を目撃した英国人の記者レジナルド・トンプソンは次のように書いている——「村のすべて、町のすべてが徹底的に破壊され、姿を消した。この種の戦争では、虐殺者側はただ空中でボタンを押しさえすればよかった。遠い彼方の見知らぬ人間たちが無差別に殺された。……村、町という人間の共同体は地獄図に塗り替えられた」(『朝鮮の悲劇』)。
 さらに米大統領トルーマンは「原爆の使用を前向きに考えている」と公言(50年11月30日)し、沖縄では実際に原爆の組み立てが行われた。当時の国連軍司令官だったマッカーサーは後年、「30発から50発の原爆を投下し、日本海から黄海に放射性コバルトの帯を繰り広げる計画だった」などと臆面もなく語っている。

日本が出撃・補給基地に

 米軍がこの戦争を遂行できたのは、日本を出撃・補給基地として利用したからであった。元駐日米大使ロバート・マーフィーは「日本人は驚くべきスピードで彼らの四つの島を、一つの巨大な補給倉庫に変えてしまった。このことがなかったら(アメリカは)朝鮮戦争を戦うことができなかった」(『軍人のなかの外交官』)と証言する。実際、在日・在沖米軍基地からの米空軍の出撃回数は72万回を超え、先に挙げた朝鮮戦争での投下爆弾総量63万㌧のうち、実に50万㌧が日本からの出撃で投下された。
 また日本政府は特別調達庁のもとで全産業を戦争協力に動員した。武器弾薬などの軍需品の調達、破損した戦車・航空機などの修理、負傷兵の救護・治療、さらには上陸や掃海作戦に多数の日本人が動員された。国鉄は全国733カ所の米軍施設を結ぶ交通・輸送手段として徴用された。
 米軍の上陸作戦には、日本の海上保安庁の「特別掃海隊」が極秘で参加し、艦船25隻と隊員約1200人(全員が旧海軍軍人)が米軍の指揮下で機雷掃海任務に出動した。そのうち掃海艇1隻が触雷事故を起こし沈没、19人が死傷した。戦時の機雷掃海は国際法上も戦争行為とされる任務であり、憲法9条違反の参戦そのものだった。
 朝鮮戦争は、50年6月25日の衝突を直接の発端としているが、それ以前から朝鮮半島では革命と反革命の激しい内戦が戦われてきた。とりわけ南朝鮮では、米軍政および李承晩(イスンマン)政権の過酷な弾圧のもと、ゼネストや人民蜂起、ゲリラ戦が不屈に展開された。朝鮮戦争勃発までの5年間で殺害された労働者人民は約10万人にものぼる。だがイスンマンは朝鮮人民の革命的決起を圧殺できず、50年5月の選挙で大敗した。朝鮮戦争への米日帝の参戦は、このような朝鮮人民の決起を戦争によって圧殺することを狙った反革命的軍事介入だった。
 今、トランプと安倍がやろうとしている新たな戦争は、朝鮮戦争をはるかに上回る人民大虐殺の核戦争だ。民主労総に続く日本の労働者の決起で絶対に阻止しよう。
(水樹豊)
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