「働き方」法案先取りする6・1最高裁判決許すな 非正規労働者の低賃金容認

週刊『前進』04頁(2947号03面03)(2018/06/11)


「働き方」法案先取りする6・1最高裁判決許すな
 非正規労働者の低賃金容認

「同一賃金」のうそ居直り訴え退ける

 最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は6月1日、正規職労働者と非正規職労働者の待遇格差が労働契約法20条の禁じる「不合理な格差」にあたるかが争われた2件の訴訟で反動判決を出した。安倍の「働き方」法案を先取りした最高裁判決を徹底弾劾し、労働者の怒りで「働き方」法案を絶対に廃案に追い込もう。
 「長沢運輸」の定年後嘱託職員の起こした訴訟の判決で、最高裁は「正社員との待遇差の大半」を容認した。原告は判決後の会見で「60歳になったら賃下げするという訳のわからないことを裁判所が認めた」と怒りを込めた。「賃金が入社1年目の人より低くなりました。同じ仕事でも生活を切り詰めろというのでしょうか」という原告らの訴えを最高裁は踏みにじった。
 「ハマキョウレックス」の契約社員の訴訟では、最高裁は、就業規則を理由に契約社員に一時金や退職金が支給されないことを認めた。その上で、正社員に支給される諸手当を契約社員に支給しないことについて個別の賃金項目の「判断」を行い、住宅手当を支給しないことは「不合理ではない」、皆勤手当、無事故手当などを支給しないことは「不合理」とした。
 判決に関して、マスコミが正規と非正規の「不合理な格差を認定した」「賃金格差の判断が分かれた」というのはとんでもないペテンだ。両判決は同一であり、「働き方」関連法、とりわけ同一労働同一賃金の指針案を先取りするものである。
 労契法は20条で、正社員のような無期雇用労働者と非正規の契約社員のような有期雇用労働者の労働条件の差異について、「不合理と認められるものであってはならない」としている。しかし、20条は正規・非正規という最大の分断を前提にした上で、評価制度でいかようにも労働者を分断することができる。同一労働同一賃金の核心は、資本が得手勝手に決める「評価」「職務の内容」などで労働の質を細分化し、それに応じて雇用形態、賃金体系も徹底的に分断する攻撃だ。

就業規則万能化し労働組合解体狙う

 判決で重大なのは、正規と非正規の賃金や労働時間などの労働条件の差異が不合理か否かは、「労使間の交渉や使用者の経営判断」に照らした個別の労使関係によって決められると述べていることだ。「格差是正」「待遇改善」などは資本の「就業規則」でいかようにもできる、としている。こうした就業規則の万能化はすでにJRを先頭に現場で行われている。最高裁判決と「働き方」法案には労働組合という「集団的」な労使関係の完全な無視と個々の労働者への徹底的な分断が貫かれている。
 マスコミが言及する「企業が待遇改善を迫られている」などというのもうそである。長沢運輸判決で、再雇用の嘱託職員について「相当程度賃金を引き下げることは広く行われており」とあるように、JRのエルダー再雇用制度や全産業で行われている定年後の再雇用の不当な賃金格差を追認し、判例として強制しようとするものだ。
 ハマキョウレックス判決では住宅手当を契約社員に支給しないことは「不合理ではない」とはねつけ、それ以外の諸手当の差異について「不合理」とした。就業規則でなぜ待遇が異なるか明確に規定すれば、合法であると導くものだ。判決はまた、現在、日本郵政グループの新一般職の住居などの諸手当の廃止やJR東日本の乗務員制度改悪・手当廃止をはじめとした、正規を非正規化し全労働者を低賃金にたたき落とす攻撃とも重なる。だがそれは、労働組合が闘わず屈服することを前提としている。
 第3の分割・民営化を打ち砕く国鉄闘争を先頭に「働き方改革」攻撃を現場からつぶすことはまったく可能だ。「働き方」法案阻止へ職場から決起しよう。

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6・1最高裁判決(要旨)

〈ハマキョウレックスの契約社員訴訟〉
・正社員の就業規則と契約社員の就業規則は別個独立で作成。契約社員が正社員と同一の権利を有する地位確認を求める訴え及び差額賃金の請求は認められない。
・住宅手当の差は不合理ではない。
・皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当を契約社員に支給しないのは不合理。

〈長沢運輸の定年後嘱託職員訴訟〉
・定年後嘱託職員と正社員は職務内容と配置の変更範囲が同じだが、賃金に関する労働条件はそれだけでは定まらない。
・長期雇用を前提とした正社員と定年後嘱託職員で賃金体系が異なることは20条の挙げる「その他の事情」と考慮される。
・正社員と再雇用者の労働条件の相違、再雇用者に住宅手当、家族手当、役付手当及び賞与を支給しないのは不合理ではない。・精勤手当と超勤手当での差は不合理。

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