改憲先取りする大軍拡 戦争体制づくりに走る安倍 米朝会談に焦り自衛隊再編を加速

週刊『前進』02頁(2950号02面01)(2018/06/21)


改憲先取りする大軍拡
 戦争体制づくりに走る安倍
 米朝会談に焦り自衛隊再編を加速


 「憲法9条に自衛隊を明記する」という安倍・自民党の改憲を先取りする形で、自衛隊の大規模な再編と軍備増強が急ピッチで進められている。日米安保体制下での米軍の後方支援を主任務とした従来のあり方から、日帝独自の軍事戦略を展開できる本格的な侵略戦争遂行部隊へと自衛隊を変貌(へんぼう)させようとするものだ。6月12日の米朝首脳会談を受けて、安倍はその動きをますます加速させようとしている。

敵地殴り込み部隊を創設

 6月8、9日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で「米国第一」の態度をあらわにし、貿易問題などでカナダや欧州帝との対立を表面化させたトランプは、続く12日の米朝首脳会談でキムジョンウンと「歴史的な会談」を演出し、北朝鮮との「大胆な取引」へかじを切った。一連のプロセスから完全にはじき飛ばされ、かやの外に置かれた日帝・安倍政権は、トランプが米韓軍事演習の中止を打ち出したことに慌てて「懸念」を表明するなど、焦りを深めている。
 本紙前号1面のアピールでも述べたように、この情勢は日帝に対して、従来の安保政策の見直しを余儀なくさせている。今や安倍は戦後の日米安保の枠組みを踏み越えることも含め、日帝独自の軍事大国化と改憲への衝動を今まで以上に強めているのだ。
 米朝会談の翌13日、防衛相・小野寺五典は記者会見で、陸上自衛隊新屋演習場(秋田県秋田市)と同むつみ演習場(山口県萩市)に配備予定の新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、予定通り導入を進めるとし、近く住民説明会などを行うと発表した。地元住民からは激しい抗議の声があがっている。導入には2千億円以上の巨額の費用がかかることもあり、「方針を見直すべきではないか」といった声が与党内からも出ている。
 これは安倍政権が現に進めている自衛隊の創設以来の大規模な組織再編と一体だ。3月末、防衛省は陸上自衛隊の五つの方面隊(北部、東北、東部、中部、西部)を一元的に指揮する「陸上総隊」を新設し、その直轄部隊として「水陸機動団」(=日本版海兵隊)約2100人を発足させた。モデルとされる米海兵隊と実際に共同訓練を重ねてきた隊員で構成される。戦争になれば海上から敵地への強襲上陸や敵勢力の掃討、抵抗する住民の虐殺などを最前線で担うことになる「殴り込み部隊」だ。当面は相浦(あいのうら)駐屯地(長崎県佐世保市)の所属となるが、すでに政府は2020年代前半までに沖縄の米海兵隊基地にも配備し、グアムに移転する海兵隊の「穴埋め」を陸自水陸機動団に担わせる計画を発表している。
 同じく3月に防衛省は、地元住民の反対で計画が難航していた佐賀空港に代わり、陸自木更津駐屯地(千葉県木更津市)に輸送機オスプレイを暫定配備する方向で最終調整に入った。佐賀空港への配備計画も維持しながら、21年までに計17機を水陸機動団の移動手段として導入する計画だ。
 4月27日には、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を、ステルス戦闘機F35Bを搭載可能な空母へと改造する計画について、一定の改修によって可能だとする調査報告書を防衛省が発表した。米海兵隊はF35を空母や強襲揚陸艦に搭載して運用しており、自衛隊も同様の運用形態を目指していることは明白だ。

防衛費倍増し核武装狙う

 安倍政権は、5年ぶりとなる防衛大綱および中期防衛力整備計画(中期防)の見直しを18年末に予定している。それに向けて自民党は5月25日、防衛費の大幅拡充を提言し、「国内総生産(GDP)比1%」を目安としてきた従来の水準から、NATO(北大西洋条約機構)が加盟国に求める「GDP比2%」まで引き上げることを政府に求めた。この「提言」で出された大軍拡構想は、自衛隊の装備や兵力の単なる量的拡大にとどまらず、従来の自衛隊の任務や日米安保のあり方をも大きく変える質的転換を含んでいる。
 敵基地攻撃能力に相当する巡航ミサイルの保有を求めたことに加え、陸海空3自衛隊の部隊運用を一元化する「統合司令部」(=現代版大本営)の常設構想も明記された。また、すでに三沢基地に7機が配備されたF35Bのさらなる増強や「多用途運用母艦」の導入も盛り込まれた。これらは明らかに米軍との共同作戦だけでなく、場合によっては自衛隊単独で作戦を実行することをも想定したものである。もはや単なる「米軍の補完部隊」ではなく、日帝独自の軍事戦略を実行できる本格的な帝国主義軍隊へと自衛隊をつくり変えようとしているのだ。
 また重要なのは、2030年代に退役を迎える航空自衛隊の主力戦闘機F2の後継機開発について、現行の米軍機をベースとした米国主導の開発ではなく「日本がイニシアチブを持った開発を推進する」ことを提言したことだ。これを受けて防衛省は5月27日、「日本主導」による後継機開発案を今秋にもとりまとめると発表した。だがこれは巨額の開発費がかかる上、米国主導の日米共同開発を要求するトランプ政権の意向と真っ向対立する。
 安倍の軍拡戦略は日米間の矛盾と対立をますます激化させる。安倍は明らかに日帝の核武装化をも狙っており、この動きに対して米帝は激甚に反応し、北朝鮮への「非核化」の要求と一体で日帝に対してもプルトニウム保有量の削減を突きつけた。加えて、このような野放図な軍拡戦略は日帝の財政破綻の危機を突きつけ、支配階級の分裂をも促進する。だが安倍は帝国主義間・大国間争闘戦の激化の中で生き残るために、どんなに破滅的だろうとこの道を突き進むしかない。
 改憲阻止闘争は、こうした安倍の戦争政治と正面から対決する中で切り開かれる。「改憲・戦争阻止!大行進」運動を全国で拡大し、安倍打倒のうねりを大きくつくりだそう。
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