豊洲市場は耐震偽装 築地仲卸 使用禁止求め提訴

週刊『前進』02頁(2954号01面04)(2018/07/05)


豊洲市場は耐震偽装
 築地仲卸 使用禁止求め提訴

(写真 提訴後、原告の築地の仲卸5人が武内更一弁護士、藤田城治弁護士と共に会見。多くの記者が注目した【6月29日午後 東京地裁】)


 6月29日、東京都・築地中央卸売市場で仲卸業を営む5人が、豊洲新市場内の水産仲卸売場棟に重大な耐震偽装・建築基準法令違反があると指摘し、東京都知事・小池百合子を被告として、建物の除却・使用禁止命令の義務付け請求の行政訴訟を提訴した。土壌汚染、地下水がコントロールできない問題など、新市場の数々の問題点が何ひとつ解決されない中で、小池都知事は既成事実を積み重ねて今年10月6日での築地市場営業終了と豊洲移転強行を狙っている。これに真っ向から立ち向かい、豊洲市場の建物の違法性を暴き、移転を実際に阻止する闘いが、ついに仲卸の仲間の中から開始された。
 原告団は東京地裁に訴状を提出後、代理人の武内更一弁護士、藤田城治弁護士と地裁内で会見に臨んだ。武内弁護士は豊洲市場水産仲卸売場棟は1階柱脚部分の鉄量が必要量の56%しかないことや、日建設計の行った構造計算に耐震偽装があることなど、重大な建築基準法令違反があると指摘した(解説参照)。

震度6強で倒壊も

 豊洲新市場の建物は最も強くあるべき1階が、最も弱い構造になっている。建築基準法上の耐震基準は「震度6強〜7程度の大規模地震で倒壊や崩壊しないこと」というものだが、豊洲の建物が震度6強の地震に見舞われた場合、1階部分から倒壊し、膨大な就業者が下敷きになるということだ。6月18日の大阪府北部の地震では、建築基準法令違反のブロック塀が放置され続けた結果、小学4年生の女の子が下敷きになり命が奪われる事件が起きた。このような建築物に市場を移転することはとうてい許されない。
 原告から、訴訟に立ち上がった思いが語られた。「私は魚河岸の4代目で、大体120〜130年営業している」「(大地震が来れば)われわれだけでなく、お客さんの命も危険になる。このままでは豊洲には行けない」(宮原洋志さん)。「国や都が自ら定めた法律に違反していて、これがまかり通ったら社会はどうなるんでしょうか」「われわれは緊張感とプライドをもって江戸の台所を守ってきた。今がんばっておかないと、間違った選択で移転するとなれば都民の食生活に影響が出る」(村木智義さん)。彼らの声は多くの仲卸の危機感、築地を守り豊洲を止めたいという思いを代表している。
 豊洲新市場の耐震偽装については、構造一級建築士の仲盛昭二さんが昨年11月に東京都を被告に訴訟を起こした。しかし、東京地裁は今年3月28日に「却下」の判決を出し、門前払いにした。裁判所という権力機関が、都および日建設計とグルになり、違法建築をもみ消す犯罪に手を染めたに等しい。仲卸の仲間たちは、この極悪で腐敗した構造に対して、食を守ってきた築地の伝統と労働の誇り、命の問題にかけて立ち上がったのだ。

営業権組合が発足

 これに先立つ6月21日には築地市場の仲卸有志と築地・女将さん会が発起人となり、「築地市場営業権組合」が発足した。同組合は、「仲卸業者の移転を決められるのは営業権を持つ各仲卸業者にあり、権利者ではない東京魚市場卸協同組合(東卸)が決められることではない」「東卸総代会での移転賛成決議は権利のない者が勝手に声を上げた行為に過ぎず、無効である」と明らかにした。今回の提訴は築地市場営業権組合の闘いと一体だ。
 立ち上がった仲卸の仲間と共に、今こそ都労連を先頭に労働者階級の総決起をつくり出そう。豊洲移転阻止、市場の民営化を許すな。安倍の改憲・戦争と民営化の先兵である小池を打倒する労働者階級の闘いを東京から切り開こう。

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〈解説〉
建築基準法令に違反

 豊洲新市場の水産仲卸売場棟の主な違法事由。
●柱脚の鉄量が44%も不足
 第一に、1階柱脚(柱の足元で、土台もしくは梁〔はり〕に接合する部分)が土台または梁に埋め込まれていない「非埋込型柱脚」であるため、1階柱脚の鉄量は1階柱頭(柱の上部で梁に接合する部分)の鉄量と等量またはそれ以上必要とされているが、実際の柱脚部の鉄量は柱頭部の鉄量の56%しかない。必要な鉄量に44%も足りない。
●構造計算で耐震偽装
 第二に、日建設計が1階柱脚部分について行った構造耐力の計算で、鉄筋コンクリート造り(RC造)の構造物として計算しなければならないところ、それよりも0・05低い鉄骨鉄筋コンクリート造り(SRC造)の構造特性係数を使っている。建築基準法で最低限必要とされる、震度6強の地震で倒壊しないという強度が保障されていない。

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