共謀罪は「現代の治安維持法」 戦前の「特高警察」の復活狙う目的遂行罪で弾圧対象を拡大 鈴木達夫弁護士に聞く

週刊『前進』04頁(2983号04面01)(2018/10/22)


共謀罪は「現代の治安維持法」
 戦前の「特高警察」の復活狙う目的遂行罪で弾圧対象を拡大
 鈴木達夫弁護士に聞く


 全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への弾圧に見られるように、国家権力中枢は共謀罪型の治安弾圧によって闘う労働組合や革命党を破壊しようと必死になっている。これといかに闘うか。鈴木達夫弁護士にお話を伺った。(編集局)

関生弾圧の背景に法務省・警察庁通達

 ——関生支部への弾圧は、昨年7月に施行された共謀罪とどのように関連しているでしょうか。
 今回の弾圧では、関生支部の労働組合として当然の活動を恐喝未遂、強要未遂、威力業務妨害とみなして武建一委員長をはじめ組合員を逮捕・起訴した。本来は刑事免責の対象になるものですが、そうした労働組合法や刑法適用実態を踏み越えた弾圧です。
 また重要なのは、公安警察だけでなく組織犯罪対策課が動いていること、そして関生支部の人たちが言うように、「本庁(警察庁)の指示」で弾圧が行われていることです。その背景には、共謀罪が公布された2日後の昨年6月23日に警察庁と法務省が出した通達があります。
 警察庁が出したのは刑事局長名の通達ですが、共謀罪の捜査について「都道府県警察の指揮のもとに行うこと」「捜査開始前に警察庁に報告すること」を各都道府県警に通達しました。これは戦前の特別高等警察の復活をもくろんでいることの現れです。戦前、全国の都道府県警察の特高部や特高課は、内務省警保局保安課が一元的に掌握し統括しました。6・23通達や今回の関生支部弾圧を見れば、国家権力の側が全国一元的な弾圧機関の復活を狙っていることは明白です。
 もう一つは法務省が刑事局長名で検察庁に出した通達です。共謀罪の「組織的犯罪集団」について、「ある団体が、崇高な政治上の主義主張の実現を掲げているものの、暴力的破壊活動等の犯罪活動によってその実現をめざしているなど、構成員が共通して、特定の手段によって実現をめざしている場合には、その手段のみを分離することはできず、一体として共同の目的になる」とあります。
 これは革命党や労働組合を指しています。労働者の自己解放とか人間的な労働条件の実現といった「崇高な主義主張」を掲げ、ストライキや実力闘争でその実現をめざしている場合は「組織的犯罪集団」とみなすということです。
 ——共謀罪は「現代の治安維持法」と言われますが、どのような点が治安維持法と類似しますか。
 まず、あらためて共謀罪とは何かということを押さえておくと、2000年2月に施行された組織犯罪対策3法(組対法)の一つである組織犯罪処罰法、その6条に「6条の2」を、また7条に「7条の2」を加え、新しい犯罪類型として規定されたのがいわゆる共謀罪です(表参照)。
 6条の2第1項は、「組織的犯罪集団」の「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者」とありますが、この「当該行為」には277の罪種があります。またここで言う「計画」は共謀と同義で、会話やメールなどあらゆるやりとりが含まれる。そして実行行為の着手もない「準備行為」の段階で処罰の対象とされる。これが共謀罪の基本形です。

団体構成員以外も処罰の対象になる

 重大なのが、6条の2第2項、「組織的犯罪集団に不正権益を得させ、維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者」も処罰対象とする。つまり共謀罪の対象者は、「組織的犯罪集団」の構成員である必要はないのです。これが現代版の「目的遂行罪」と言われる内容です。また、「不正権益」とは「団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力」とされる。これを「暴力団の縄張り争い」とだけと考えるとすれば、想像力の欠如というほかありません。
 昨年6月8日の参議院法務委員会での答弁で、法務省の林真琴刑事局長は「組織的犯罪集団の構成員以外でも密接に関連して行動を共にする者」は共謀罪の対象になると明言しました。まさに、この6条の2第2項こそ現代版の目的遂行罪にほかなりません。
 目的遂行罪とは、戦前1925年制定の治安維持法が28年に緊急勅令によって改定され、死刑の導入とともに設けられた規定です。「国体を変革し又は私有財産制度を否認することを目的として結社を組織したる者」や「結社に加入したる者」だけでなく、出版物配布の援助など「結社の目的遂行のためにする行為をなしたる者」までも処罰の対象とした。
 歴史学者の荻野富士夫さんによると、対米戦争が始まった1941年に治安維持法で起訴された人のうち、「結社に加入した者」とされたのは全体の1%ですが、目的遂行罪で起訴された人は実に87%にも上ります。治安維持法で最も猛威をふるったのがこの目的遂行罪でした。
 また7条の2は「証人等買収罪」。証言拒否や黙秘を勧め、その際に「金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者」が処罰される。治安維持法と同じく、公判対策の弁護団会議さえ弾圧できる規定が公然と設けられています。これも非常に重大です。

完全黙秘こそ最も強力な闘いの武器

 ——共謀罪弾圧に対し、私たち労働者階級人民の側にはいかなる闘いが求められているでしょうか。
 共謀罪は人の内心を把握し、内心の発露である会話や通信を「計画」(共謀)とみなして処罰するので、警察の捜査手法を直視する必要があります。
 まず、メールやSNSなどのインターネットを通じてのやりとりは捜査機関、国家権力によってすべて掌握可能になっています。電話も通信事業者の立ち会いなしで警察が盗聴できる。
 また動労千葉の家宅捜索に対する国家賠償請求裁判で明らかになったことですが、権力は組合間のメールでのやりとりを入手していることを公然と開き直っています。この場合、メールの発信者・受信者への通知は不要とされています。
 共謀罪とは、このような捜査手法が決定的となる。私たちの側もそれを見据え、権力との対抗関係を構え直して鋭く対峙していかなければなりません。
 そして、共謀罪の廃止の政治闘争を執拗(しつよう)に続け、警察のやり方にしっかり反撃する。
 最後に、人の内心や実行行為以前のやりとりを処罰対象とする共謀罪の本質から、最も強力な武器となり防御手段となるのは完全黙秘です。労働組合や市民団体などあらゆる組織が完全黙秘を闘いの原則としなければならないと考えます。

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組織犯罪処罰法の共謀罪を規定する条文(抜粋)

 6条の2 テロリズム集団その他の組織的犯罪集団……の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を軽減し、又は免除する。
 2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も……同項と同様とする。
 7条の2 (証人等買収)
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