書評 「ロシア革命 現代世界の起点」 革命の全過程を鮮明に解き明かし、スターリン主義発生の原点に迫る

発行日:

週刊『前進』04頁(2987号03面03)(2018/11/05)


書評
 「ロシア革命 現代世界の起点」
 革命の全過程を鮮明に解き明かし、スターリン主義発生の原点に迫る


 ロシア革命100年で本が出るというので、期待に胸を膨らませて待った。ようやく発行され、飛びつくように読んだ。
 1991年にソ連が崩壊したことをもってロシア革命が全否定されてきた。共産主義は必ずソ連のような共産党の特権階級が独裁する人民抑圧体制になるという俗説が支配してきた。だがそれは、まさにスターリン主義による一国社会主義論を論拠とする国際共産主義運動の反革命的変質の故にもたらされたものだったのだ。この途方もない裏切りを徹底的に明らかにし、ロシア革命本来の労働者階級自己解放の闘いをよみがえらせることは、今現在の、命よりも金もうけの新自由主義、戦争によってしか生き延びられない帝国主義の体制を打倒する闘いにとって不可欠の課題だ。
 ロシア革命の全過程をこれほど鮮明に描き切った本はないと思う。昨年来、出版界でロシア革命を取り上げた本はたくさん出たが、大半がロシア革命をゆがめ、おとしめるものだ。何よりも、今日の階級闘争に継承するという意識性に貫かれたものはなかった。こうした現実に真っ向から挑戦するのが本書だと思う。「労働者が天下を取る」というのはどういうことか、具体的事実に即して分かりやすく説き明かしている。
 そして、権力を取った後の、未経験の領域に踏み込んでのロシア労働者階級の苦闘が描かれる。特にロシア革命を世界革命の観点からとらえ直し、ドイツ革命やコミンテルンの闘いをかなりの力を注いで解明している点が重要だと思った。
 そして、スターリン打倒がレーニンの最後の闘いだったことは決定的なことだと痛感した。スターリンは、レーニン主義の継承者のように振る舞い「レーニン主義」を掲げて権力を簒奪(さんだつ)した。その結果、ソ連を防衛するために国内と世界各国の労働者階級の闘いを破壊し、帝国主義との共存を図った。行き着く先は帝国主義戦争への加担と参戦であった。このスターリン主義の発生の原点にさかのぼって確認することは、今日的な避けて通れない課題である。
 私は、序章と第4章の後に付された「補論」は後回しにし、全体の流れをつかもうと先に進んで読んだ。その上で、補論自身がきわめて重要だと思った。
 現代革命ライブラリー第1巻「ヨーロッパ・アメリカ 労働者の反乱」に続き、「現代世界の起点」としてのロシア革命を徹底的に学ぶために、再読三読したい。
(上山恒二)

このエントリーをはてなブックマークに追加