繰り返すな戦争-労働者の戦争動員-第3回 「スト絶滅」叫び自ら労組解体 産業報国会が示す歴史の教訓

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週刊『前進』02頁(2990号02面02)(2018/11/15)


繰り返すな戦争
-労働者の戦争動員-第3回
 「スト絶滅」叫び自ら労組解体
 産業報国会が示す歴史の教訓



(写真 1930年の東京でのメーデーに集まった東京交通労働組合の市バス車掌の女性労働者たち)


 「鉄道事業の健全な経営が定着するまでは、争議権の行使を自粛する」。これは国鉄分割・民営化の前年の1986年8月27日、動労本部を中心とする国鉄改革労組協議会(現JR総連)が国鉄当局と結んだ労使共同宣言の一節だ。戦前、すべての労働組合が解体され、産業報国会に吸収される過程でも、同じようなことが起きた。戦前の右派労働運動の中心に位置した日本労働組合総同盟は、1937年10月の大会で「全産業に亘(わた)り同盟罷業(ひぎょう)の絶滅を期す」というスト絶滅宣言を出した。その3年後の40年7月、総同盟は自ら解散し、同年11月に大日本産業報国会が発足した。この歴史を総括することによって、安倍政権が改憲と戦争に突き進もうとしている今、労働組合がなすべき課題も見えてくる。

JR総連崩壊と同じ軌跡

 国鉄分割・民営化に率先協力したJR総連・東労組は今や大崩壊している。東労組の解体は、首相官邸の指示で行われた。改憲と戦争をたくらむ安倍政権は、スト絶滅を叫んで国鉄分割・民営化の手先になった御用労組の存在も許容できなくなった。御用労組でも、それが労働者を組織する団体である限り、ストライキという武器を手に権力や資本に立ち向かってくる可能性は絶無ではない。労働組合を残したまま戦争はできないのだ。
 戦前も同じだった。日本帝国主義は1931年、中国東北部への侵略戦争を開始し、「満州国」をでっち上げた。37年7月の盧溝橋事件を機に、日帝の侵略戦争は中国全域に拡大した。その直後の10月、労働総同盟は「今次事変中の労使紛争を挙げて平和と道義の手段に訴えて解決(する)」として、大会でスト絶滅宣言を出した。
 総同盟幹部は、労働者の実情を軍部や国家官僚に伝達する機関として労働組合を国家総力戦体制に積極的に組み込めば、組織は延命できると夢想した。だが、軍部や国家官僚は、戦争遂行のためには右派といえど労働組合を全面解体するしかないと決断していた。その圧力のもと、総同盟は40年7月に自ら解散し、同年11月23日に大日本産業報国会が発足した。産業報国会の総裁は厚生大臣が兼任し、その各府県連合会の長には地方に配属された内務官僚が充てられた。その統制下に各事業所ごとの組織が置かれ、職場は資本の全一的な支配のもとに組み敷かれた。

闘い圧殺した幹部の転向

 戦前の労働総同盟幹部は右派だったが、それを今日の連合ダラ幹のイメージと重ねることはできない。
 1927年の山一林組製糸の女工ストや27~28年の野田醤油、30年の鐘紡や東洋モスリンから全国の繊維産業に拡大したストライキなど、労働運動史に残る大争議は、総同盟の指導のもとに闘われた。
 当時の労働組合は、職場における怒りが限界に達し、ストライキで反撃するしかないと決意した労働者が、実力闘争を貫くための組織として結成することが通例だった。労働組合活動の権利が法的に保障されていない中、争議は直ちに警察権力との激突になった。総同盟幹部もそうした場に身を置いていたのであり、ストライキを通してこそ労働組合は組織された。だから総同盟の「同盟罷業絶滅宣言」は、まさに自己否定そのものだったのだ。
 他方、25年に総同盟を割って出た日本共産党指導下の日本労働組合評議会のもとに、26年の共同印刷や同年の日本楽器の大争議が闘われた。
 日本共産党にかけられた28年3・15弾圧後、労働組合評議会は結社禁止の命令を受けるが、活動は非合法に結成された日本労働組合全国協議会に受け継がれた。だが、33年、共産党幹部の佐野学と鍋山貞親が獄中から出した転向声明は、共産党指導下の労働運動にも大打撃を与え、全協は崩壊に追い込まれた。
 とはいえ、労働者の闘いがその後、全面的に鎮圧されたわけではけっしてなかった。

戦時下で貫徹されたスト

 34年9月、当時、独立系の左派労組として知られていた東京交通労組は、40日間、市電をストップさせる大ストライキに立った。戦前の交通ストとしては最大規模といわれるこの闘いは、東京市当局が打ち出した「全員いったん解雇・初任給で再雇用」という大合理化案に反撃するものだった。最終的には労働者は2割の減給をのまされたが、いったん全員解雇の方針は撤回された。
 戦時体制下でも労働者にはストライキを闘う力があった。だが、そうした労働者の戦闘性は、スト絶滅を叫ぶ労組幹部の手によって絞め殺された。この歴史を繰り返してはならない。
 戦前の労働運動は総じて、右派も左派も階級的団結を持続的に形成することに成功していない。大争議を闘っても、活動家は解雇され、組織は壊滅したという例がほとんどだ。にもかかわず労働者は全国で繰り返し不屈に立ち上がった。
 現代の労働者階級は今年の11・4集会で、三十数年に及ぶ国鉄解雇撤回闘争を軸に階級的労働運動をよみがえらせ、安倍の改憲・戦争攻撃に立ち向かう戦闘宣言を発した。関西生コン支部への凶暴な弾圧は、完全黙秘・非転向の闘いで打ち破られつつある。11・4は、戦前の歴史を乗り越える道を端緒ではあるが確実に切り開いた。この闘いを貫いてこそ、戦争を阻むことはできるのだ。

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